
「取得費加算」とは?相続した実家を売るときの税金軽減
相続税を払った人が、相続した実家などを一定の期間内に売ると、払った相続税の一部を「取得費」に足せて、売ったときの税金が軽くなることがあります。これが「相続税の取得費加算の特例」です。「相続税で何百万円も払ったのに、売ったらまた税金がかかるなんて……」と感じている方は、売る前に必ず確認してください。
※本記事は2026年10月20日時点の国税庁の情報(令和8年4月1日現在の法令等)をもとにしています。
取得費加算の特例とは?
家を売ったときの税金は、「売ったお金」から「その家を手に入れるのにかかった費用(取得費)」などを引いた「もうけ」にかかります。取得費が大きいほど、もうけは小さくなり、税金も少なくなります。
この特例は、相続税を払った人が相続した不動産を売るとき、払った相続税のうち、売った不動産に対応する分を取得費に足してよいというものです。
相続税を払う
3年10か月以内に売る
確定申告で特例を使う
売却益が小さくなり税金が減る
使えるための3つの条件
国税庁の案内では、次の3つがすべて必要です。
- ☐ 相続や遺贈で手に入れた不動産であること
- ☐ 自分に相続税がかかっていること(相続税を実際に払っていること)
- ☐ 相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに売ること
相続税の申告期限は、亡くなった日の翌日から10か月です(期限の一覧は「準確定申告」「相続税申告」はいつまで?期限を一覧整理にまとめています)。つまり、売る期限はおおよそ相続開始から3年10か月以内になります。
※相続税がゼロの方(配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で税額が出なかった方など)は、「相続税を払っていない」ので対象外です。
取得費に足せる金額の考え方
足せる金額は、次の式で決まります。
たとえば、相続税を1,000万円払い、売った実家の評価額が財産全体の4割なら、400万円を取得費に足せる、という考え方です(あくまで説明用の例です)。ただし、足せる額には上限があり、特例を使わない場合の売却益までです。
「3000万円特別控除」とどう違う? どちらを使う?
空き家の売却には、もう一つ「被相続人居住用財産(空き家)の3000万円特別控除」があります。同じ家について、この2つを両方使うことはできません。どちらか一方を選びます。
| 比べるポイント | 取得費加算 | 3000万円特別控除 |
|---|---|---|
| 相続税を払っている必要 | あり | なし |
| 売る期限 | 相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日まで | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(令和9年12月31日までの売却が対象) |
| 向いている人 | 相続税を払った人で、控除の建物要件に合わない人 | 昭和56年5月31日以前の建物など、要件に合う人 |
一般には、要件に合うなら3000万円控除のほうが大きく税金が減ることが多いです。ただし、建物が新しくて控除の対象外だった場合や、相続税を多く払っていて売却益も大きい場合は、取得費加算が使えないか必ず比べてください。実際の有利・不利は、税理士に試算してもらうのが確実です。
失敗しやすい3つのポイント
- 売る時期を過ぎてしまう:「いい買い手が見つかるまで」と待つうちに期限を過ぎると、特例は使えません。相続税の申告日を先にメモしておきましょう。早く売りたいときは、空き家売却「仲介」と「買取」どっちが得?違いを解説も参考になります。
- 確定申告を忘れる:特例は、売った翌年の確定申告で自分から申し出ないと使えません。「取得費に加算される相続税の計算明細書」などの提出が必要です。
- 控除や特例を比べずに決める:売る前に、使える制度を並べて比べておくと安心です。
売る前のチェックリスト
- ☐ 相続税の申告書の控え(納めた税額)を探した
- ☐ 相続税の申告期限と、売る期限(3年10か月)をカレンダーに書いた
- ☐ 家の建築年を確認し、3000万円控除が使えるか確認した
- ☐ 取得費加算と3000万円控除を、税理士や不動産会社に比較してもらった
過去の記事もあわせてどうぞ。取得費が分からないときの対処は相続した実家の「取得費が不明」なら?売却時の税金対策、3000万円控除の条件は空き家「3000万円特別控除」とは?条件を解説で詳しく説明しています。
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よくある質問
Q. 相続税がゼロだったら、この特例は使えませんか?
A. 使えません。相続税を実際に払っていることが条件です。その場合は、3000万円特別控除など別の制度を確認してください。
Q. 「家を売ったあとで、税金が高くて困った」と気づいたら、もう遅いですか?
A. 売った翌年の確定申告で使える場合があります。ただし期限内の売却が前提なので、早めに税務署か税理士へご相談ください。
Q. 取得費加算と3000万円控除は、同じ家で両方使えますか?
A. 同じ家には両方使えません。どちらか有利なほうを選びます。
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