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相続した実家の「取得費が不明」なら?売却時の税金対策

四谷 義仁

筆者 四谷 義仁

不動産キャリア20年

飲食店専門の不動産会社「株式会社不動産スペース」代表。不動産キャリア20年。大阪・京都・兵庫エリアを中心に、店舗仲介・管理・閉店サポートから収益物件の売買まで手がける。これまで数多くのカフェ・居酒屋・ラーメン店などの開業支援を行い、実際の経営数値や現場課題をもとに"リアルな店舗経営の見える化"を発信中。現場の泥臭さも、数字のシビアさも知る「現実派不動産屋」

相続した実家を売るとき、親がその家をいくらで買ったか分からないと、税金が数百万円単位で高くなることがあります。結論として、まず「売買契約書」を家の中から探すこと、そして「空き家の3000万円特別控除」が使えるかを先に確認することが、損をしないための二大ポイントです。

「古い家だし、親がいくらで買ったかなんて分かるはずがない」。相続の現場で本当によく聞くお悩みです。でもここをあきらめるかどうかで、手元に残るお金が大きく変わります。

まず全体の流れ:税金は「もうけ」にだけかかる

不動産を売ったときの税金は、売った金額そのものにかかるわけではありません。「もうけ(譲渡所得)」の部分にだけかかります。

①
売った金額
→
②
取得費と
売却の費用を引く
→
③
使える特例を引く
→
④
残った金額に
約20%

ここで出てくる「取得費(しゅとくひ)」とは、親がその家や土地を買ったときの代金や手数料のことです。相続で受け継いだ不動産の場合、この取得費と「いつ買ったか」は、亡くなった親のものをそのまま引き継ぎます。つまり、親が40年前に買った家なら、40年前の購入代金が取得費になります。

なお、親が買ったときから5年を超えて所有していた場合は「長期譲渡所得」となり、税率は所得税15%+復興特別所得税+住民税5%で、合計およそ20%です。

購入価格が分からないと、税金はどれくらい増えるのか

取得費を証明する書類がどうしても見つからない場合、「売った金額の5%」を取得費とみなして計算することが認められています(概算取得費)。一見ありがたい救済ルールですが、実際にはかなり不利になります。

3000万円で売却し、売却にかかった費用が100万円だったケースで比べてみます。

項目 取得費が分かる場合 取得費が不明(5%)
売った金額 3,000万円 3,000万円
取得費 2,000万円 150万円
売却の費用 100万円 100万円
もうけ 900万円 2,750万円
税金の目安 約183万円 約559万円

同じ家を同じ値段で売っても、書類があるかないかだけで差は約376万円。これが「探す価値がある」理由です。

※建物部分は、建ててからの年数に応じて取得費が減額されます(減価償却)。上の数字はイメージをつかむための簡略な例です。

家の中から探したい「取得費の手がかり」

遺品整理の前に、次のものがないか確認してみてください。一度捨ててしまうと取り返しがつきません。

  • ☐ 土地・建物の売買契約書、重要事項説明書
  • ☐ 購入代金の領収書、振込の控え
  • ☐ 住宅ローンの契約書(金銭消費貸借契約書)、返済予定表
  • ☐ 当時の分譲パンフレット、価格表
  • ☐ 購入時の通帳、記帳された入出金の記録
  • ☐ 登記のときの費用の領収書、不動産取得税の納付書

売買契約書そのものがなくても、ローン契約書や通帳の記録など「いくら払ったか」が分かる資料が残っていれば、実額で認めてもらえる可能性があります。ただし最終的な判断は税務署や税理士の確認が必要なので、見つけた資料は一式まとめて持っていくのが確実です。書類を探すついでに、相続した実家の「境界」が不明?測量費用と進め方で解説した測量図もあわせて確認しておくと、売却の準備が一度で進みます。

2つの特例は「どちらか一方」しか選べない

相続した不動産の売却では、税金を軽くする特例が主に2つあります。重要なのは、この2つは併用できず、どちらかを選ぶ形になることです。

①空き家の3000万円特別控除(被相続人居住用家屋の譲渡所得の特例)

もうけから最大3000万円を引ける、最も効果の大きい特例です。令和9年(2027年)12月31日までの売却が対象で、相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。令和6年1月1日以後の売却で、相続した相続人が3人以上いる場合は上限2000万円になります。

②相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例

納めた相続税の一部を取得費に足せる制度です。相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日まで(相続開始から実質3年10か月以内)の売却が対象で、相続税を納めた人が使えます。

①の詳しい条件は空き家「3000万円特別控除」とは?条件を解説をご覧ください。先ほどの例(もうけ2,750万円)なら、①が使えれば3000万円を引けるので税金はゼロになります。相続税を納めていない場合は②は使えません。つまり多くのケースでは「まず①が使えるか」を確認するのが出発点です。期限はどちらも相続の時点から数えるため、「準確定申告」「相続税申告」はいつまで?期限を一覧整理で全体のスケジュールを押さえておくと安心です。

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よくある質問

  • Q. 親の家の契約書が本当にどこにもありません。もう5%で計算するしかないのでしょうか。
    A. ローン契約書や通帳など支払いを示す資料が残っていれば実額で認められる可能性があります。まず一式そろえて税務署か税理士にご相談ください。
  • Q. 売れたら必ず確定申告が必要ですか。
    A. 特例を使って税金がゼロになる場合も、申告しないと特例自体が使えません。売った翌年の2月16日から3月15日までに申告が必要です。
  • Q. 3000万円特別控除の期限に間に合いそうにありません。
    A. 相続開始から3年を経過する日の属する年の年末が期限です。間に合わない恐れがあるなら、売却方法の選択を早めに決める必要があります。

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