
「実家の前の道が私道だった」相続登記の漏れと売却の壁
実家を相続して名義を変えたのに、家の前の道の持分だけが亡くなった親の名義で残っている——これは実際によくある話です。しかも、売ろうとした段階で初めて分かることが多く、そこから慌てて手続きをすることになります。この記事では、前面道路が私道かどうかを自分で調べる手順と、売る前・水道工事の前に必要になる承諾について、やさしく整理します。
なぜ私道の持分は相続登記を忘れられるのか
理由はシンプルです。固定資産税の通知書に載らないことがあるからです。
広く通行に使われている私道は「公衆用道路」として固定資産税が非課税になる扱いがあります(地方税法348条2項5号)。非課税なので、毎年届く納税通知書の課税明細に出てきません。市区町村によっては、不動産の一覧表である名寄帳(なよせちょう)にも載せていないことがあります。
税金がかからないことと、名義が親のままであることは別の話です。登記簿上は故人の持分がそのまま残っているため、相続登記は必要になります。
大阪市内では、幅4m未満の古い住宅地で、実家の敷地のほかに細長い土地の持分がくっついている例が珍しくありません。公図を広げて初めて「この細長い土地は何ですか」と聞かれることが、相続のご相談ではよく起きます。
家の前の道には4つの種類があります
| 道路の種類 | 幅 | 土地の持ち主 | 建て替え |
|---|---|---|---|
| 認定道路(公道) | 4m以上 | 市や府など | できる |
| 位置指定道路(建築基準法42条1項5号) | 4m以上 | 多くは個人 | できる |
| 2項道路(みなし道路) | 4m未満 | 多くは個人 | セットバックが必要 |
| 建築基準法上の道路でない「通路」 | — | 個人 | 原則できない |
「位置指定道路」は、個人の土地だけれど役所が道路として認めたもの、という意味です。「2項道路」は、昔からある細い道を道路とみなしたもので、建て替えのときに道の中心から2mまで敷地を下げる(セットバックする)必要があります。
私道かどうかを調べる3ステップ
法務局で
公図を取る
道の地番を
登記で調べる
市役所で
道路種別を確認
まず法務局(またはオンライン)で実家の公図を取り、玄関から公道に出るまでに通る土地があるか見ます。地番が振られていれば私有地です。その地番で登記事項証明書を取れば、誰の名義で、持分が何分の何なのかが分かります。
そのうえで、その道が建築基準法上の道路かどうかを役所で確認します。大阪市なら「マップナビおおさか」で道路種別を見られますが、市も参考用と案内しているため、最終確認は市役所3階の道路参考図閲覧コーナー、または都市計画局建築指導部建築企画課で行ってください。
「親の不動産」を全部調べる3つの方法|名寄帳と新制度でご紹介した名寄帳を請求するときは、窓口で「相続の手続きのため」と目的を伝えると、非課税の土地まで含めて確認してもらいやすくなります。
売る前に確認したいチェックリスト
- ☐ 私道の持分が故人の名義のまま残っていないか(公図+登記事項証明書)
- ☐ 名寄帳に非課税の土地も含まれているか(窓口で目的を伝える)
- ☐ 前面道路が建築基準法上の道路か(大阪市なら道路参考図)
- ☐ 私道の共有者が何人いて、連絡が取れるか
- ☐ 過去の通行・掘削承諾書が権利証の封筒に入っていないか
- ☐ 水道・ガスの引き込み管が私道のどこを通っているか
買主が住宅ローンを組むとき、また古い配管を引き直すときには、私道の所有者から「通ってよい」「掘ってよい」という承諾書を求められるのが実務の慣行です。共有者が多く、相続が進んで持ち主が分からなくなっていると、ここで時間がかかります。相続した実家の「境界」が不明?測量費用と進め方と同じく、売ると決めてからでは間に合わないことがあるため、先に調べておく価値があります。
2023年4月の民法改正で少し前進しました
2023年(令和5年)4月1日施行の改正民法で、「継続的給付を受けるための設備の設置権」(民法213条の2)が新しく条文に書かれました。他人の土地に水道管などを通さなければ水を引けない場合に、必要な範囲でその設備を設置できるという権利です。
ただし、注意点が2つあります。
- 設置する場所と方法は、相手の損害が最も少ないものに限られ、事前に土地の所有者とその土地を使っている人へ知らせる必要があります。
- 権利があっても勝手に工事をしてよいわけではなく、拒まれた場合は裁判所の手続きによることになります。
つまり、承諾書を取りに行く実務はなくなっていません。
共有の私道については、法務省が「所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)」(令和4年6月)を公表しており、舗装のへこみを直すような現状維持の工事は保存行為として各共有者が単独でできる、といった整理が示されています。相手が見つからないケースの対処法も事例別に載っているので、困ったときの手がかりになります。
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よくある質問
Q. 固定資産税がかかっていない私道も、相続登記しないといけませんか。
A. 名義が個人である限り必要です。税金の有無ではなく、登記簿の名義人が誰かで判断します。
Q. 持分だけの登記にも、また登録免許税がかかるんでしょうか。
A. 土地の価額が100万円以下なら令和9年3月31日までは免税の扱いがあります。申請書への記載が条件なので法務局でご確認ください。
Q. 私道の共有者のうち1人が亡くなっていて、連絡が取れません。
A. 法務省の共有私道ガイドラインに事例別の対処法が載っています。工事の内容によって必要な同意の範囲が変わります。
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