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バー・スナックの閉店!許可は居抜きで「引き継げない」

閉店

四谷 義仁

筆者 四谷 義仁

不動産キャリア20年

飲食店専門の不動産会社「株式会社不動産スペース」代表。不動産キャリア20年。大阪・京都・兵庫エリアを中心に、店舗仲介・管理・閉店サポートから収益物件の売買まで手がける。これまで数多くのカフェ・居酒屋・ラーメン店などの開業支援を行い、実際の経営数値や現場課題をもとに"リアルな店舗経営の見える化"を発信中。現場の泥臭さも、数字のシビアさも知る「現実派不動産屋」

バーやスナックを畳むとき、いちばん見落とされるのが「許可(ライセンス)の返し方」と「在庫のお酒」です。とくに、接待をするお店の許可は、居抜きでお店を譲っても買い手に引き継げません。「このまま続けていいのか分からない」と迷っている段階でも、ここだけは先に知っておくと、引き渡しの日程で慌てずに済みます。

まず、自分の店が「許可」か「届出」かを確かめる

バーやスナックは、同じ「お酒のお店」でも、営業のしかたで必要な手続きが変わります。ここを間違えると、閉店時に出す書類も変わってしまいます。

店のかたち 営業するために必要なもの 閉店したときにすること
接待をする(風営法の1号営業) 公安委員会(警察)の許可 許可証を遅滞なく返納する
接待はしないが深夜0時以降もお酒を出す 警察署への届出(深夜酒類提供飲食店営業) 廃止の届出を出す
接待なし・深夜0時までに閉める 保健所の営業許可だけ 保健所に廃業届を出す

※どの形でも、保健所への廃業届は共通で必要です。
※「接待」とは、お客さまの近くに座って話し相手になる、お酒を注ぐといった、もてなしの行為のことです。これがあると「許可」が必要な営業になります。

許可証の返納は、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)第10条第1項で、営業をやめたときは「遅滞なく」返すと決められています。届出のお店(深夜酒類提供飲食店営業)は、同法第33条第2項で廃止の届出が必要です。警視庁では、返納には「返納理由書」、廃止には「廃止届出書」という決まった用紙を使います。期限や用紙は地域で運用が違うことがあるので、お店を管轄する警察署の生活安全課に一度確認してください。

閉店までの進め方は、この順番で

①
解約予告期間を確認
→
②
最終営業日を決める
→
③
スタッフ・常連へ告知
→
④
警察・保健所へ届出
→
⑤
税務署へ届出

最初に見るのは、お店の家主さんとの契約書です。「解約の◯か月前までに通知」という約束(解約予告期間)を先に確認しないと、お店を閉めたあとも家賃だけ払い続けることになります。警察や保健所への届出は、お店を閉めた「あと」の作業です。詳しい届出の流れは、深夜営業飲食店の閉店届出|保健所・警察・消防の3手続きでも整理しています。

最終営業日や引き渡し日を決めるときは

縁起のいい日を選びたい方は、縁起のいい日カレンダー(月別)|店舗市場もご覧ください。ただし縁起は気持ちの問題です。日程は解約予告期間・家賃の発生日・原状回復の工期を優先して決めてください。

居抜きで譲るとき「引き継げる許可」と「引き継げない許可」

ここが、バー・スナック特有のつまずきどころです。

  • 保健所の営業許可は引き継げます。食品衛生法では、相続・合併・会社分割に加えて、お店の事業譲渡でも「地位承継届」を保健所に出せば、買い手は新しく許可を取り直さずに引き継げます(千葉県の案内では、譲渡契約書の写しなどを添えて提出するとされています)。
  • 風営法の許可は引き継げません。風営法で承継が認められているのは、相続(第7条)、法人の合併(第7条の2)、法人の分割(第7条の3)だけです。売買による営業譲渡で許可を引き継ぐ規定はありません。つまり、接待をするお店を居抜きで譲る場合、買い手は自分で新しく許可を取る必要があります。
  • 名義を貸すのもだめです。同法第11条で、許可を受けた人が自分の名義で他人に営業させることは禁じられています。「許可が下りるまで私の名前で」は違反になります。

買い手が許可や届出を済ませるまで、お店は開けられません。ここを見落とすと、引き渡し日が決まっているのに営業できない空白期間が生まれます。私の経験では、スナックはカウンターやボトル棚をそのまま残して次の借主に引き継げる形が多く、厨房設備だけの店より造作が評価されやすい傾向があります。ただし、あくまで傾向で、物件・業者・契約内容によって異なります。

在庫のお酒・ボトルキープ・カラオケの始末

閉店時に残るお酒は、扱いに注意が必要です。国税庁は、飲食店が自分の営業場でお酒を飲ませる場合は販売業免許は不要だが、持ち帰り用に売るには酒類小売業免許が必要だと説明しています。つまり、在庫のボトルを「お客さまや他のお店に売る」のは販売にあたり、免許の話になります。仕入先に返品できないか相談するか、居抜き譲渡の造作と一緒にどう扱うかを契約書に書くのが安全です。判断に迷うときは、所轄税務署の酒類指導官に確認してください。

お客さまから預かっているボトルキープは、お店の持ち物ではなく預かり品です。閉店の告知と同じタイミングで、引き取りの期限をはっきり伝えておきましょう。ツケ(売掛)も、閉店してからでは回収が難しくなります。

カラオケ機器や製氷機のリースは、途中でやめると残りの料金を一括で求められることが多いので、契約書の解約条項を早めに見てください(「厨房機器のリース解約」違約金交渉のコツと注意点)。弊社の取引では、残した家具や備品が次の借主の内装計画の邪魔になることも多く、処分したほうが話が早い場面もあります。

閉店前チェックリスト

  • ☐ 賃貸借契約の解約予告期間を確認した
  • ☐ 自分の店が「許可」か「届出」かを確認した
  • ☐ 許可証・届出済証の保管場所を確認した(紛失時は別の書類が必要)
  • ☐ 保健所の廃業届と営業許可証を用意した
  • ☐ 居抜きで譲る場合、買い手が許可を取る期間を日程に入れた
  • ☐ 在庫のお酒の扱い(返品・契約書への記載)を決めた
  • ☐ ボトルキープの引き取り期限をお客さまに伝えた
  • ☐ カラオケ機器などリース契約の解約条項を確認した

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よくある質問

Q. スナックを人に譲りたいのですが、私の許可をそのまま使ってもらえませんか?
A. できません。風営法に売買による承継の規定はなく、買い手が新しく許可を取る必要があります。名義を貸すことも禁じられています。

Q. もう限界かもしれない、という段階でも相談していいですか?
A. はい。解約予告期間や買い手探しには時間がかかるため、決める前の段階でご相談いただくほうが選べる手が増えます。

Q. 残ったお酒は、常連さんに売ってしまってもいいですか?
A. 持ち帰り用に売るのは販売にあたり、酒類小売業免許が必要です。返品の相談か、譲渡の契約に含める形を検討してください。

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