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居抜き「造作譲渡契約書」で損しない7つの確認項目

閉店

四谷 義仁

筆者 四谷 義仁

不動産キャリア20年

飲食店専門の不動産会社「株式会社不動産スペース」代表。不動産キャリア20年。大阪・京都・兵庫エリアを中心に、店舗仲介・管理・閉店サポートから収益物件の売買まで手がける。これまで数多くのカフェ・居酒屋・ラーメン店などの開業支援を行い、実際の経営数値や現場課題をもとに"リアルな店舗経営の見える化"を発信中。現場の泥臭さも、数字のシビアさも知る「現実派不動産屋」

居抜きで店を手放すときは、「造作譲渡契約書(ぞうさくじょうとけいやくしょ)」に7つの項目を書面で残しておけば、あとからのもめ事はほとんど防げます。「少しでも高く、もめずに手放したい」――そう考えている店主の方に、契約書で必ず確認してほしいポイントを整理しました。

「造作譲渡」ってそもそも何ですか

造作(ぞうさく)とは、お店に取り付けた厨房機器・エアコン・カウンター・内装などのことです。これをスケルトン(コンクリートむき出しの状態)に戻さず、そのまま次に入るお店に売り渡すのが「造作譲渡」です。

ポイントは、この売買が店主(売る側)と次のテナント(買う側)の2者の契約だという点です。大家さんは当事者ではありません。だからこそ、口約束だけで進めると「聞いていない」「壊れていた」というトラブルになりやすいのです。

契約書に必ず入れたい7項目

項目 なぜ必要か
①貸主(大家さん)の承諾 承諾がないと譲渡そのものが無効になることがある
②譲渡する造作の一覧 「あると思っていた物がない」を防ぐ。型番・台数まで書く
③譲渡代金と支払時期 手付金の有無、残金の支払日を明記する
④引渡しの日と方法 鍵の受け渡し日。賃貸借契約の終了日とズレないようにする
⑤契約不適合責任の範囲 引渡し後に機器が壊れていたとき、誰がどこまで負うか
⑥リース品・未払いがある物の扱い 自分の所有物でない物は売れない。別に手続きが要る
⑦原状回復義務を誰が引き継ぐか 将来のスケルトン戻し費用を誰が負担するかを決める

このうち⑤と⑦が、あとから金額の大きいもめ事になりやすい2つです。

⑤契約不適合責任は「現状有姿」でも万能ではありません

契約不適合責任とは、売った物が契約の内容と違っていたときに売主が負う責任のことです。中古の設備なので、「現状有姿(げんじょうゆうし=今あるままの状態で引き渡す)」として責任を負わない特約を入れるのが一般的です。

特約があっても免れない責任があります

民法572条では、売主が知っていたのに伝えなかった事実については、責任を免れることができないと定められています。「冷蔵庫の調子が悪いのを知っていたが黙っていた」というケースは、特約があっても責任を問われる可能性があります。不具合は隠さず、契約書か引渡し書に「○○は動作不良あり」と書いて渡すほうが、結果的に自分を守ります。

⑥リース品は「売れません」

厨房機器をリースで使っている場合、その機器の持ち主はリース会社です。自分の物ではないので、造作譲渡の対象に入れることはできません。買い手に引き継ぐなら、リース会社の審査を受けて名義変更をする必要があります(詳しくは「厨房機器のリース解約」違約金交渉のコツと注意点もご覧ください)。

「造作買取請求権」は大家さんには使えないことが多い

借地借家法33条には、大家さんの同意を得て取り付けた造作は、契約が終わるときに時価で買い取るよう請求できる、と書かれています(造作買取請求権)。

ところが、この33条は同法37条が定める「特約で変更できない決まり」の中に入っていません。そのため「造作買取請求権は放棄する」という特約は有効とされ、実際の店舗の賃貸借契約書にはほぼ必ず入っています。つまり、大家さんに買い取ってもらう道はほぼ閉ざされているのが現実です。だからこそ、次のテナントへの造作譲渡が現実的な回収方法になります。

進め方の流れ

①
貸主に承諾をとる
→
②
造作の一覧と写真をつくる
→
③
金額と引渡し日を決める
→
④
契約書を交わす
→
⑤
代金受領・引渡し

①を飛ばして買い手を探すと、話がまとまってから大家さんに断られる、という最悪の順番になります。必ず最初に相談してください。

契約前チェックリスト

  • ☐ 賃貸借契約書に「造作譲渡の可否」「造作買取請求権の放棄」の条項があるか確認した
  • ☐ 譲渡する造作を1点ずつ書き出し、写真を撮った
  • ☐ リース・割賦(分割払い)が残っている機器を仕分けした
  • ☐ 不具合のある機器を洗い出し、買い手に伝えた
  • ☐ 原状回復義務を誰が負うかを契約書に書いた
  • ☐ 解約予告期間と引渡し日のスケジュールが合っているか確認した

印紙は貼るのですか

造作だけ(=動産の売買)の契約書は、印紙税の課税文書に当たらないため、原則として収入印紙は不要とされています。ただし、のれんや取引先まで含む「営業の譲渡」に当たる内容だと、第1号文書として課税対象になります。また、代金を受け取った領収書は第17号文書にあたり、記載金額5万円以上で200円からの印紙が必要です。迷ったときは所轄の税務署に確認するのが確実です。

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よくある質問

Q. 契約書なしで、口約束だけで造作を売ってもいいのでしょうか?
A. 法律上は口頭でも売買は成立しますが、後から「壊れていた」「聞いていない」となったとき証拠がありません。金額にかかわらず書面を残してください。

Q. 設備が古くてボロボロなんですが、それでも値段はつきますか?
A. 空調・給排水・グリストラップなど、ゼロから作ると高額になる設備が残っていれば値段がつくことがあります。一方で買い手の業態によっては価値が出ないこともあります。

Q. 造作譲渡をすれば、原状回復はしなくてよいのですか?
A. 自動的には免除されません。買い手が原状回復義務を引き継ぐことを、貸主を含めた三者で確認しておく必要があります。

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