
焼肉店の閉店|「ロースターとダクト」処分の落とし穴
焼肉店や鉄板焼き店の閉店は、カフェや居酒屋より「設備の片づけ方」で手元に残るお金が大きく変わります。「もう限界かもしれない」と思った段階で最初にやるべきことは、閉店の告知ではなく、賃貸借契約書を開いて原状回復(借りた部屋を元の状態に戻すこと)の範囲を確認し、設備を「売れるもの」と「捨てるもの」に仕分けることです。
焼肉店の倒産は、件数が減っても高止まり
東京商工リサーチの調査では、2026年1〜8月(20日まで)に負債1,000万円以上で倒産した焼肉店は29件でした。前年同期の35件からは17.1%減ったものの、2025年は年間59件で過去最多を記録しており、水準としては高止まりが続いています。
- ■ 従業員10名未満の店:28件(構成比96.5%)
- ■ 資本金1千万円未満(個人企業を含む):28件(構成比96.5%)
- ■ 原因の最多は「販売不振」:24件(構成比82.7%)
※上の3項目は従業員数・資本金・原因という別の切り口の構成比です。合計は100%になりません。
苦しんでいるのは大手ではなく、個人や小規模の店が中心だということです。
閉店に至る理由は、焼肉店ならではの事情が重なる
実務でよく聞くのは、次のような重なり方です。
| よくある理由 | 焼肉店・鉄板焼き店で特に効く事情 |
|---|---|
| 売上が戻らない | 大手チェーンや食べ放題業態との価格競争が激しい |
| 利益が残らない | 肉の仕入れ値の上下で原価率が大きく振れる |
| 設備費が重い | ロースター・排煙ダクト・ガス設備の投資額が大きく、回収に時間がかかる |
| 人が続かない | 高温・煙・換気の環境で、ホールの負荷が高い |
ここで大事なのは、3つ目の「設備費が重い」が、閉店するときにもう一度のしかかってくる点です。
なぜ焼肉店の閉店は「設備の処分」でつまずくのか
1. 無煙ロースターのダクトは床下を通っている
多くの焼肉店は、煙を下に吸い込む「下引きダクト」を使っています。配管が床下やテーブルの脚の中を通っているため、撤去するには床を剥がす工事が必要になることがあります。壁や天井を直すだけの一般的な飲食店の原状回復とは、工事の規模が変わります。
なお、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は住宅の賃貸借を対象にしたものですが、どこまでが借主の負担になるかを考えるときの土台として参考になります。店舗の場合は、契約書の取り決めが優先されます。
2. ダクトの中に油がたまっている
東京消防庁は、排気ダクトは普段目が届きにくく、内部に多量の油脂がたまって火災の通り道になるおそれがあると注意を呼びかけています。日々の清掃が追いついていない店では、引き渡し前の洗浄費や、貸主からの指摘が出ることがあります。見積もりの読み方は店舗の原状回復見積もり「スケルトン戻し」の落とし穴とはでも解説しています。
3. 厨房機器の廃棄は「産業廃棄物」になる
店の設備を捨てるときは、家庭ごみのようには出せません。大阪市も、産業廃棄物は許可を持つ業者に委託する必要があり、他人に委託しても排出した事業者の責任は終わらないと明記しています。処理の流れは産業廃棄物管理票(マニフェスト=廃棄物の行き先を記録する伝票)で追う仕組みです。安い業者に任せきりにしないことが、後々のトラブル防止になります。
4. ロースターがリース品のことがある
ロースターや冷蔵設備は、自分の持ち物ではなくリース契約の場合があります。リース品は自分のものではないので、居抜きで次の人に売ることはできません。中途解約には残リース料の精算が伴うのが一般的です。詳しくは「厨房機器のリース解約」違約金交渉のコツと注意点をご覧ください。
進める順番を間違えないことが一番の節約になる
原状回復の範囲を確認
リース品と自己所有を仕分け
居抜き譲渡を打診
撤去見積もりと比較
解約予告を出す
解約予告を先に出してしまうと、残り時間が足りず、居抜きの相手を探す余裕がなくなります。順番を逆にしないことが、そのまま費用の差になります。
最終営業日や引き渡し日を決めるときに
日取りを気にされる方のために、月別の契約・開業の縁起日カレンダーをご用意しています。ただし縁起は気持ちの問題です。日程は解約予告期間・家賃の発生日・原状回復の工期を優先して組んでください。
設備の仕分けチェックリスト
- ☐ 賃貸借契約書の原状回復条項(スケルトン戻しか、一部残し可か)
- ☐ 工事業者が貸主指定になっていないか
- ☐ ロースター・冷蔵庫・製氷機などのリース契約書の有無と残期間
- ☐ ダクト・排煙設備の設置年と清掃履歴
- ☐ グリストラップ(排水の油を受ける装置)の清掃状態
- ☐ ガス・電気の契約容量(次の借主への訴求材料になります)
- ☐ 廃棄する機器の産業廃棄物処理の委託先と見積もり
焼肉店は、むしろ居抜きで評価されやすい業態です
ダクトやロースター、ガス容量をそろえ直すと、新しく焼肉店を開く人は大きな初期投資が必要になります。だからこそ、設備が生きた状態の焼肉店は「同じ業態で使いたい人」にとって価値があります。撤去して更地のように戻すより、設備ごと引き継いでもらったほうが、原状回復費が消えて譲渡代金が入る、という逆転が起きやすい業態です。
ただし、残す設備が消防や衛生の基準に合っているか、リース品が混ざっていないかは、先に整理しておく必要があります。ここを曖昧にしたまま話を進めると、引き渡し直前でもめることがあります。
テナント探し・戦略的な閉店のご相談はこちら
株式会社不動産スペース(店舗市場)は、大阪で「不動産×飲食店」に特化して、新しい出店先をお探しの飲食店様と、計画的な移転・閉店・居抜き売却をお考えの飲食店様の双方をお手伝いしています。焼肉店・鉄板焼き店の設備評価や、解約予告前の段取りづくりもご相談ください。
お電話:06-6195-8209
よくある質問
Q. 床下にダクトが通っているのですが、全部剥がさないと退去できませんか。
A. 契約書の原状回復範囲によります。スケルトン戻しの指定がなければ、残置で交渉できる場合もあります。まず条項の確認と貸主への相談を先に行ってください。
Q. ロースターだけ次の人に売ることはできますか。
A. 自己所有であれば可能です。リース品は所有者がリース会社なので売れません。契約書で名義を確認してから話を進めてください。
Q. 設備を捨てるのと居抜きで売るのは、どちらが得なんでしょうか。
A. 撤去見積もりと譲渡見込み額を並べて比べるのが確実です。焼肉店は設備投資が重いため、居抜きのほうが有利になるケースが多く見られます。
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