
10月1日カスハラ対策義務化、小さな飲食店の準備5つ
10月1日から「カスハラ対策」が飲食店にも義務に
2026年10月1日から、お客様などからの「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対策が、法律ですべての事業主の義務になります。アルバイト1人を雇う小さな飲食店も例外ではありません。「怒鳴るお客さんに、うちの子(スタッフ)が泣いて辞めてしまった」「常連さんだから強く言えない」――そんな悩みを抱える店主の方こそ、施行前の今週のうちに、最低限の準備を済ませておきましょう。
何が変わるのか
2025年6月に改正された「労働施策総合推進法」(働く人を守るための法律の一つ)により、カスハラを防ぐための措置が事業主の義務となり、2026年10月1日に施行されます(厚生労働省発表)。具体的な中身は、2026年2月26日に告示された国の指針で示されました。
押さえておきたい3つのポイント
- 業種・規模を問わず、すべての事業主が対象。正社員だけでなく、パート・アルバイトも守る対象です。
- 対応が不十分な場合、都道府県の労働局(国の出先機関)から助言・指導・勧告を受ける可能性があります(厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」より)。
- 正当な苦情や要望はカスハラではありません。障害のある方が配慮を求めることも、カスハラには当たりません。
大阪府の吉村知事も9月15日の会見で、府として「対策基本方針」と「対応マニュアル」を作ると発表しました。府の調査では職員の約4分の1がカスハラを経験し、そのうち16%が「仕事を辞めたい」と感じたそうです(大阪府調べ、関西テレビ報道)。
数字で見るカスハラの実態
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 過去3年にカスハラの相談があった企業 | 27.9% |
| 過去3年にカスハラを受けた働き手 | 10.8% |
| 受けた内容:しつこい・繰り返しの言動 | 57.3% |
| 受けた内容:大声などの威圧的な言動 | 50.2% |
出典:厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」(同省マニュアルに掲載)
飲食店でいえば、大声で怒鳴る、長時間居座る、無断で動画を撮って「SNSにさらすぞ」とほのめかす、土下座を求める、といった行為が典型例にあたります。
小さなお店が今週やっておきたい5つの準備

国のマニュアルでは、規模の小さい会社の場合、経営者自身が相談窓口を担う形も想定されています。大がかりな仕組みは要りません。紙1枚にまとめて、休憩室に貼るところから始めましょう。
- ☐ 「迷惑行為には店として毅然と対応し、スタッフを守る」という方針を文章にした
- ☐ スタッフが困ったときに連絡する相手(店長・オーナー)と連絡方法を決めた
- ☐ 1人で対応させない、やり取りを記録する(日時・内容・録音)ルールを決めた
- ☐ 話が平行線になったら、退店をお願いする目安の時間を決めた(国のマニュアルでは30分程度を一例として紹介)
- ☐ 暴力や脅しがあれば、ためらわず110番すると決めた
- ☐ 相談したスタッフが不利益を受けないこと、相談内容を秘密にすることを伝えた
- ☐ 無断で撮影・SNS投稿されたときの対応(証拠の残し方・削除の申出先・相談先)を決めた
SNSにモザイクなしで動画を上げられたら?
最近増えているのが、お客様がスタッフとのやり取りを無断で撮影し、「こんな対応をされた」と顔にモザイクもかけずにSNSへ投稿するケースです。国の指針とマニュアルでは、無断での撮影や、働く人のプライバシーにかかわる情報をSNSなどに投稿することを、カスハラの典型例(精神的な攻撃)として挙げています。「SNSにさらすぞ」とほのめかして脅すことも同じ扱いです(厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」より)。
ただし、料理や接客への感想・批判を投稿すること自体が、すべてカスハラになるわけではありません。問題になるのは、スタッフの顔や名前をさらしたり、事実と違う内容で店やスタッフをおとしめたりする場合です。見つけたときは、次の順番で落ち着いて対応しましょう。
証拠を残す
運営会社に
削除を申し出る
警察・弁護士
などに相談
映ったスタッフを
ケアする
- 証拠を残す:投稿が消される前に、URL・画面の保存(スクリーンショット)・投稿日時を記録します。
- 削除を申し出る:各SNSの通報・削除申請の窓口から申し出ます。2025年4月に施行された「情報流通プラットフォーム対処法」(ネット上の権利侵害への対応を定めた法律)により、利用者の多い大手SNSなどには、削除の申出から原則7日以内に対応を判断し、申し出た人に通知することが義務付けられています(総務省発表)。
- 相談する:名誉毀損(人の評判を傷つけること)など犯罪にあたる可能性があれば警察へ。投稿者に損害賠償を求めたいときは、弁護士に相談して投稿者を特定する手続きを進めます。削除の相談は法務局などでも受け付けています(厚生労働省マニュアルより)。
- SNSで言い返さない:店のアカウントで感情的に反論すると、かえって炎上を広げるおそれがあります。
- スタッフを守る:映ってしまったスタッフの気持ちに寄り添い、シフトや持ち場の配慮を検討しましょう。
予防策として、店内やメニューに「スタッフの撮影・SNSへの投稿はご遠慮ください」と掲示しておくのも効果的です。大阪府も、庁舎内で業務を妨げるような撮影を禁止する方針を示しています(関西テレビ報道)。
人手不足の時代こそ「守る店」が選ばれる
カスハラ対策は、法律を守るためだけのものではありません。スタッフが安心して働ける店は、辞めにくく、採用でも有利になります。「外食特定技能」停止でも人手不足改善、大阪飲食店の一手でもお伝えしたとおり、人を集める力は今の飲食店経営の生命線です。大阪の最低賃金「1,231円」に正式決定、10月までの備えとあわせて、10月からの「人」に関する準備を一気に済ませておくことをおすすめします。
なお、繁華街の立地や深夜営業などで、どうしてもトラブルが多いと感じている場合は、客層に合わせた出店場所の見直しも一つの選択肢です。
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よくある質問
Q1. スタッフ2〜3人の個人店でも、本当にやらないといけないの?
A1. はい。規模や業種を問わず、人を雇っているすべての事業主が対象です。ただし、店主が相談役を担い、ルールを紙1枚にまとめて伝えるなど、規模に合った形で問題ありません。
Q2. お客様のクレームは全部カスハラになりますか?
A2. なりません。料理や接客への正当な苦情は、お店の改善につながる大切な声です。要求の内容や言い方が、社会の常識で許される範囲を超えた場合にカスハラと判断されます。
Q3. お客さんに勝手に動画を撮られて、モザイクなしでSNSに上げられた。どうしたらいい?
A3. まずURLと画面を保存して証拠を残し、SNSの運営会社に削除を申し出ましょう。お店のアカウントで言い返すのは避け、悪質な場合は警察や弁護士に相談してください。
Q4. 迷惑なお客様に「出ていってください」と言ってもいいのですか?
A4. 暴言や長時間の居座りなどが続く場合、退店をお願いすることは国のマニュアルでも対応例として示されています。身の危険を感じたら、迷わず警察に通報してください。
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参考
- 吉村知事「職員の約4分の1がカスハラを経験。大阪府の職員を守るため」カスタマーハラスメント対策基本方針策定を発表|関西テレビ放送 カンテレ
- カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)|厚生労働省
- 【2026年10月施行】カスタマーハラスメント対策が企業の義務に――厚労省が指針を告示|社会保険労務士法人エフピオ
- インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)|総務省
※本記事は2026年9月24日時点の情報です。制度の詳細や最新情報は、厚生労働省・大阪労働局の発表をご確認ください。
