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「106万円の壁」10月撤廃、大阪飲食店の備え

飲食経営

四谷 義仁

筆者 四谷 義仁

不動産キャリア20年

飲食店専門の不動産会社「株式会社不動産スペース」代表。不動産キャリア20年。大阪・京都・兵庫エリアを中心に、店舗仲介・管理・閉店サポートから収益物件の売買まで手がける。これまで数多くのカフェ・居酒屋・ラーメン店などの開業支援を行い、実際の経営数値や現場課題をもとに"リアルな店舗経営の見える化"を発信中。現場の泥臭さも、数字のシビアさも知る「現実派不動産屋」

2026年10月1日から、パート・アルバイトの「働き控え」の原因だった「106万円の壁」(社会保険への加入基準)が撤廃されます。「せっかく仕事に慣れてきたのに、年末が近づくと急にシフトに入ってくれなくなる」という悩みを抱えていた大阪の飲食店経営者の方も多いのではないでしょうか。結論からお伝えすると、これは人手不足解消の追い風になり得る一方、社会保険料の負担増という新しい課題も生まれるため、今のうちに準備しておくことが大切です。

「106万円の壁」とは何がどう変わるのか

これまで、月収8.8万円(年収換算で約106万円)を超えると厚生年金・健康保険への加入義務が生じ、手取り収入が減ってしまうことを嫌って、労働時間をあえて抑える「働き控え」が多くの職場で起きていました。2026年10月からは、この月収8.8万円という賃金要件が撤廃され、週20時間以上働いていれば、収入額に関わらず社会保険の加入対象になります(厚生労働省調べ)。

項目これまで2026年10月以降
賃金要件月収8.8万円以上で加入対象撤廃(週20時間以上で対象)
企業規模要件従業員51人以上の企業が対象当面は継続(2027年10月から段階的縮小、2035年に全企業へ)
影響を受ける人数全国で新たに約200万人が加入対象に(厚生労働省調べ)

飲食店にとってはチャンスにも負担にもなる

これまで「年末が近づくとシフトに入ってもらえない」「扶養の範囲内でしか働けないと言われる」といった悩みを抱えていた飲食店にとって、壁の撤廃は働き控えが緩和され、シフトが組みやすくなる可能性があります。以前お伝えした「外食特定技能」停止でも人手不足改善、大阪飲食店の一手でも触れたとおり、人手の確保は今も大阪の飲食店にとって大きな課題です。一方で、対象になった従業員を社会保険に加入させると、事業主側の保険料負担(おおむね給与の15%前後)が新たに発生するため、労務費の増加は避けられません。

「働ける主婦」を待つ求人アプリも登場している

最近では、子育て中の女性に特化した求人アプリのCMを目にする機会も増えました。これは、「106万円の壁」が撤廃されても、多くの主婦層が本当に望んでいるのは、単に長く働けることではなく、子育てと両立できる働き方だということの表れでもあります。送り迎えの時間に合わせた短時間シフトを組める、子どもの急な体調不良でも休みやすい、といった環境を整えている飲食店は、こうした層から選ばれやすくなります。壁の撤廃をきっかけに、労働時間の上限だけでなく、働き方そのものの柔軟さを見直すことが、人手不足解消への近道になるかもしれません。

事業主向けの支援策「キャリアアップ助成金」

国は、この負担を和らげるための助成金を用意しています。「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」は、新たに社会保険に加入させた従業員の手取りが減らないよう、基本給の増額や所定労働時間の延長といった処遇改善を行った事業主に対し、従業員1人あたり最大50万円が支給される制度です(厚生労働省調べ)。制度を使うには、事前に労働局へ計画書を提出する必要があるため、早めの確認をおすすめします。

今のうちにできる準備


対象従業員の把握

本人の希望確認

助成金活用の検討

まず、週20時間以上働いているパート・アルバイトの人数と、現在の月収を把握しましょう。次に、対象になる方に「加入すると手取りがどう変わるか」を丁寧に説明し、これまで通り働き控えを希望するのか、加入して労働時間を延ばしたいのか、本人の意向を確認します。そのうえで、キャリアアップ助成金が使えるかどうかを検討しましょう。

準備チェックリスト

  • ☐ 週20時間以上働く従業員の人数・月収を把握しているか
  • ☐ 対象になる従業員に、加入後の手取りの変化を説明できるか
  • ☐ 自社が従業員51人以上にあたるか(複数店舗を展開している場合は特に注意)
  • ☐ キャリアアップ助成金の対象になるか確認したか

なお、月給25万円の正社員 vs 時給1,700円のアルバイト、会社の本当のコストはどっちが高い?でもお伝えしたとおり、雇用形態ごとの実質コストは見た目の時給・月給だけでは判断できません。社会保険料の負担も含めて、店舗全体の人件費を見直す良い機会と捉えることもできます。大阪の最低賃金「1,231円」に正式決定、10月までの備えとあわせて、今年の10月は人件費まわりの制度変更が重なる月になります。

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よくある質問

Q1. うちは家族経営の小さな店ですが、対象になりますか?
A1. 企業規模要件(従業員51人以上)が当面残るため、多くの個人経営のお店はすぐには対象になりません。ただし複数店舗を展開している場合は合算されることがあるため、確認が必要です。

Q2. 社会保険料の負担が増えるのが正直しんどいです。どうすればいいですか?
A2. キャリアアップ助成金を使えば、加入初年度の実質負担を抑えられる場合があります。労働局や社会保険労務士に早めに相談することをおすすめします。

Q3. 従業員が「加入したくない」と言ったらどうなりますか?
A3. 要件を満たせば加入は義務のため、本人の希望だけで加入を避けることはできません。労働時間の調整も含めて、事前に本人と話し合っておくことが大切です。

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