
「居抜き譲渡が白紙に」前に決める手付金と解除の線引き
まず確認|物件は貸主のものです
私の経験では、賃貸借契約書に「造作譲渡不可」と書かれていることが多くあります。地域差もあるようで、東京ではそこまで言われることは少ないと聞きますが、大阪では、買い手探しを先に進めて最後に貸主へ相談し、「勝手に進めていた」と激怒される話をよく聞きます。物件は貸主のものです。ここを勘違いしないでください。
最終段階でもめないために、買い手を探す前に、貸主へ事前に話をしてくれる業者に依頼することをおすすめします。
居抜き譲渡が「白紙」になる4つの場面
買い手が決まっても、貸主(大家さん)の承諾が出なかったり、買い手の融資が通らなかったりすると、居抜きの譲渡は白紙になります。「買い手が決まったのに、やっぱりやめると言われたらどうしよう」と不安な店主さんは、手付金と解除の決まりを、契約書に先に書いておくと安心です。
居抜き(いぬき)とは、内装や厨房機器をそのまま次のお店に引き継ぐ売り方です。この売買は、売る店主と買う側の2者の契約です。白紙になりやすいのは、次の4つの場面です。
| 場面 | 起きること | 契約書に決めておくこと |
|---|---|---|
| ①貸主の承諾が出ない | 民法612条1項は、貸主の承諾なしに借りる権利を譲ることを認めていません。承諾なしに進めると、貸主から契約を解除されるおそれがあります(同条2項) | 「○月○日までに承諾が出なければ白紙。手付は全額返す」 |
| ②買い手の融資が通らない | 買い手が代金を払えず、話が止まる | 融資が通らなかったときの解除(融資特約)と、手付の返し方 |
| ③買い手が気が変わる | 買い手から「やめたい」と言われる | 手付を放棄すれば解除できる期限 |
| ④売り手の事情で取りやめる | 売り手から白紙にする場合 | 手付の倍額を返す、という取り決め |
②の融資特約は、法律で決まった仕組みではありません。契約書に書いて、はじめて効きます。
手付金で解除するときのルール
手付金(てつけきん)とは、契約のときに買い手が渡す、証拠と約束のお金です。民法557条1項では、買い手は手付を放棄し、売り手は手付の倍額を現実に提供すれば、契約を解除できると決められています。ただし、相手が契約の履行(りこう=約束の実行)に着手した後は、この方法は使えません。
たとえば、譲渡代金が100万円で手付が10万円の場合(仮の例です)
- 買い手からやめるときは、渡した10万円をあきらめます。
- 売り手からやめるときは、10万円を返したうえで、さらに10万円を渡します(合計20万円)。
民法557条2項により、手付で解除したときは、別に損害賠償を請求されることはありません。手付の金額は、民法には決まりがなく、2者で決めます。どの行為が「履行の着手」になるかは、事情によって判断が分かれます。迷うときは、弁護士に確認してください。
白紙を防ぐ進め方
貸主に承諾の相談
買い手と条件を確認
契約書
(手付・解除条件)
承諾・融資の確認日
残金と引き渡し
順番は、貸主への相談が先です。買い手探しの方法は居抜きの「買い手」はどこで探す?5つのルートと進め方にまとめています。
引き渡し日は、貸主への解約予告期間と合わせて決めます。くわしくは飲食店の「解約予告期間」トラブルと対処法をご覧ください。たとえば引き渡し日を12月20日とするなら、承諾の確認日は11月10日、融資の結果の確認日は11月20日、といった具合に、引き渡し日から逆算して日付を置きます(仮の例です)。
閉店日や引き渡し日は、縁起を気にされるオーナーも多い項目です。大安・一粒万倍日・天赦日などの日取りは、下の月別カレンダーで確認できます。
※縁起は気持ちの問題です。日程は、解約予告期間・家賃の発生日・原状回復の工期を優先して決めてください。
私の経験から
私の経験では、売る店主さんは、高く売ることより、手間と不安の少ない進め方を選ぶ方が多くいます。そのため、条件が多少安くても、承諾と融資の確認日をはっきり決めた話のほうが、まとまりやすいと感じています。
また、弊社の取引では、引き渡し日まで電気を残さずに止めてしまい、年数のたった冷蔵庫が急に動かなくなった例があります。止める時期は飲食店の閉店「電気・ガス・水道」止める順番と期限でまとめています。あくまで目安で、物件・業者・契約内容により異なります。
バーやスナックなど許可の種類が違う業態は、買い手が許可を取り直す期間も日程に入れます。バー・スナックの閉店!許可は居抜きで「引き継げない」を参考にしてください。
契約前チェックリスト
- ☐ 貸主の承諾が出る日(確認日)を決めた
- ☐ 承諾が出ないときは白紙で、手付を全額返すと書いた
- ☐ 買い手の融資の結果が出る日を決め、不承認なら解除できると書いた
- ☐ 手付の金額と、手付で解除できる期限を書いた
- ☐ 売り手から解除するときの金額(倍額)を確認した
- ☐ 引き渡し日が、解約予告期間とずれていないか確認した
テナント探し・戦略的な閉店のご相談はこちら
大阪で新しい出店先をお探しの飲食店様、計画的な移転・閉店・居抜き売却をご検討中の飲食店様、どちらのご相談も株式会社不動産スペースへお気軽にお問い合わせください。買い手を探す前の貸主への事前相談から、白紙になりにくい契約条件の整理まで、実務に即してお手伝いします。
TEL:06-6195-8209
よくある質問
Q. 買い手が決まったのに、やっぱりやめると言われたら、お金は返すのですか?
A. 手付が渡してあれば、買い手が手付を放棄して解除できます。履行に着手した後は使えません。契約書の取り決めが基本です。
Q. 手付金はいくらにすればよいですか?
A. 民法には金額の決まりがなく、2者で決めます。解除のしやすさに直結するため、契約書に金額と期限を書いてください。
Q. 貸主の承諾が出る前に、買い手から手付をもらってもよいですか?
A. 承諾が出ないと白紙になるおそれがあります。受け取るなら、承諾が出なければ全額返すと契約書に書いてください。
