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「居抜きの募集」広く出すか水面下か!?

閉店

四谷 義仁

筆者 四谷 義仁

不動産キャリア20年

飲食店専門の不動産会社「株式会社不動産スペース」代表。不動産キャリア20年。大阪・京都・兵庫エリアを中心に、店舗仲介・管理・閉店サポートから収益物件の売買まで手がける。これまで数多くのカフェ・居酒屋・ラーメン店などの開業支援を行い、実際の経営数値や現場課題をもとに"リアルな店舗経営の見える化"を発信中。現場の泥臭さも、数字のシビアさも知る「現実派不動産屋」

居抜きの買い手探しでは、広く募集すると関係者に気づかれやすくなり、水面下で進めると問い合わせが少なくなります。「閉めるといううわさが広がって、店が回らなくなったらどうしよう」と迷う方は、片方に振り切らず、募集の範囲を段階的に広げる進め方を考えましょう。

「広く」と「水面下」、それぞれの弱点

私の経験では、居抜きの買い手探しは、この2つの間で悩む店主さんが多いです。

進め方 良い点 弱点
広く募集する 問い合わせが増え、買い手を比べやすい 取引先・常連さん・スタッフなど関係者に知られるリスクが高まる
水面下で募集する 周りに気づかれにくい 問い合わせが限られ、買い手候補が少なくなりやすい

閉店の予定が早く漏れると、スタッフが辞めたり、取引先や常連さんの足が遠のいたりして、最終営業日まで店が回らなくなるおそれがあります。譲渡が決まる前に知られると、貸主や買い手に足元を見られることもあります(「閉店のお知らせ」常連客とSNSへの伝え方)。

間をとる進め方:範囲を3段階で広げる

以下は筆者が整理した目安です。物件や相手によって調整してください。

①
貸主・管理会社に相談
→
②
信頼できる窓口に絞り
匿名で募集
→
③
反応を見て範囲を広げる

① 貸主・管理会社に相談:最初に、貸主への解約予告期間と、買い手を入れてよいかという貸主の承諾を確認します(飲食店の「解約予告期間」トラブルと対処法)。

② 信頼できる窓口に絞って匿名で募集:店名と住所を伏せ、「大阪市内・15坪・居酒屋」のような条件だけで募集します。問い合わせの窓口は、店ではなく仲介会社などに一本化すると、スタッフや常連さんの目に入りにくくなります。

③ 反応を見て範囲を広げる:反応が少なければ、募集先を少しずつ広げます。いきなり全部に出さず、様子を見ながら広げるのがコツです。買い手の探し方は居抜きの「買い手」はどこで探す?5ルートと進め方も参考にしてください。

相談する業者選びが、いちばん大切

窓口にする業者を間違えると、そこから情報が漏れます。店名入りでチラシやSNSに載せられたり、同業の知り合いに話が広まったりすると、広く募集したのと同じ結果になってしまいます。募集のやり方より先に、信頼のおける業者に頼むことが一番大切です。次の点を、依頼する前に確認しましょう(以下は目安です)。

依頼前に確認したい5つのこと

  • 店名を出さずに募集してくれるか
  • どこに、どんな方法で募集するのか、事前に説明してくれるか
  • 店名入りで広告やSNSに載せないと約束してくれるか(できれば書面かメールで)
  • 買い手に店名を伝えるタイミングを、自分で決められるか
  • 居抜きの取引の実績があり、質問に具体的に答えてくれるか

内見は「ゆるく、でも順番を守る」

書面のNDA(秘密保持契約)を必ず結ぶ決まりはありません。現場では、もっと簡単に進めることが多いです。ただ、次の順番だけは守りましょう。

  • 内見は営業時間外に、1組ずつ行う
  • 店名や詳しい場所は、内見の直前に伝える
  • 「ここだけの話にしてください」と、メールなど記録に残る形で一言確認する
  • 売上の詳しい数字や契約書の中身は、買い手が本気で、話が固まってから出す

顧客名簿・従業員の情報は、内見の段階では見せない

お客様の名前・連絡先、予約台帳、スタッフの名前や給与は個人情報です。個人情報保護法27条は、本人の同意なく第三者に渡すことを原則禁止しています。合併などで事業を丸ごと引き継ぐ場合は、第三者への提供にあたらないという例外があります(27条5項2号)。個人情報保護委員会のガイドラインは、契約前の交渉段階で、相手の調査のために渡す場合もこの例外にあたると説明しています。ただし、渡す相手に守らせる契約が必要です。

ポイント:売上・仕入れ値・レシピも守る対象

不正競争防止法2条6項は、「秘密として管理されている」「事業に役立つ」「公然と知られていない」情報を営業秘密と呼んでいます。名簿や台帳を見せるのは、話がまとまったあとにしましょう。

内見前のチェックリスト

  • ☐ 貸主への解約予告期間と、買い手を入れる承諾を確認した
  • ☐ 店名・住所を伏せた募集条件(業態・坪数・エリア)を作った
  • ☐ 問い合わせの窓口を、信頼できる業者に一本化した(店名を出さない約束を確認)
  • ☐ 内見は営業時間外にし、店名は直前に伝えることにした
  • ☐ 「口外しない」ことを、メールなど記録に残る形で確認する
  • ☐ 売上資料・名簿・台帳は、話が固まるまで出さないと決めた

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よくある質問

Q. 閉店するとうわさになるのが怖くて、買い手探しを始められません。どうすればいいですか?

A. 店名と住所を伏せ、業態・坪数・エリアなどだけで募集できます。窓口を店以外に一本化すると、周りに気づかれにくくなります。

Q. 水面下で探していますが、問い合わせが全然来ません。

A. 範囲が狭すぎる可能性があります。解約予告期間から逆算して期限を決め、反応を見ながら少しずつ募集先を広げましょう。

Q. 売上表は、いつ買い手に見せればよいですか?

A. 目安は、内見を済ませて買い手が本気になり、話が固まってからです。見せる範囲は必要な分に絞りましょう。

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