
飲食店の席数は逆算で決める!客単価と回転数から
「内装を決める前に、席は何席にすればいいのか分からない」「広い店にしたら、席が埋まらず赤字になるのでは」。会社員から飲食店を始める方が、必ず通る悩みです。結論から言うと、席数は「なんとなく」ではなく、「売りたい金額÷(客単価×回転数×営業日数)」で逆算して決めるものです。この記事では、会社員から食堂を始めるAさん(架空)の例で、コンセプトを4つの言葉にして、そこから席数を割り算で出す手順を見ていきます。公庫の様式での位置づけは、日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード(国民生活事業)」で確認できます。
この講座の位置づけ: 創業計画書の第3欄「取扱商品・サービス」を固める回です(第15回)。開業までの流れでいうと、物件を探す前、計画書を作る段階の作業です。第2回で学んだ売上の掛け算を、今度は「席数を求める割り算」として使います。
前回までの流れは「経営者の略歴」の書き方!前職を飲食店の強みに言い換えると、飲食店の売上は掛け算で作る!客単価×席数×回転数×日数です。全体の見取り図は公庫の創業計画書、数字が苦手でも書ける順番です。
全体の流れ
コンセプトを4つの言葉にする
昼と夜の「売りたい金額」を置く
割り算で席数を出す
坪数・家賃とつなげて確かめる
①コンセプトは「誰に・何を・いくらで・いつ」の4つで言い切る
コンセプトと聞くと、おしゃれな言葉を考えがちです。でも、計画書で使うコンセプトは、次の4つの質問に短く答えるだけで足ります。
| 質問 | Aさん(架空)の答え |
|---|---|
| 誰に | 近くで働く会社員と、仕事帰りの30〜40代 |
| 何を | 定食(昼)と、お酒に合う一品料理(夜) |
| いくらで | 昼は1人1,000円、夜は1人3,500円 |
| いつ | 昼と夜の2部営業、月25日 |
この4つのうち、「いくらで」が客単価、「いつ」が営業日数です。つまり、コンセプトを4つの言葉にすると、そのまま売上の掛け算の材料がそろいます。公庫の様式と飲食店(洋風居酒屋)を含む記入例は、公庫の各種書式ダウンロード(国民生活事業)で見られます。記入例の文章や数字は、ここには転載しません。実際の様式と書き方は、必ず公庫のページでご確認ください。
私が確認できた範囲では、公庫の書式ページに、第3欄の書き方そのものの細かい説明は載っていませんでした。そのため、4つの質問への分け方は「公庫の説明」ではなく、この記事側の整理です。
②昼と夜の「売りたい金額」を置く
次に、昼と夜で、1か月にいくら売りたいかを置きます。Aさんは、第3回までの計画どおり、昼50万円・夜140万円・合計190万円です。
ここで1つ、つまずきやすい点があります。昼と夜は、同じ席を使い回します。 昼用に20席、夜用に別の20席が必要になるわけではありません。席数は、昼と夜のどちらでも足りる数にそろえます。
③割り算で席数を出す(Aさんの場合)
第2回の掛け算「客単価×席数×回転数×営業日数=月の売上」を、席数について解き直します。席数=月の売上÷(客単価×回転数×営業日数) です。回転数とは、1つの席が1日に何回入れ替わるか、という数です。
| 客単価 | 回転数 | 営業日数 | 1席あたりの月の売上(掛け算) | 売りたい金額 | 必要な席数(割り算) | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 昼 | 1,000円 | 1.0回 | 25日 | 1,000×1.0×25=2.5万円 | 50万円 | 50÷2.5=20席 |
| 夜 | 3,500円 | 0.8回 | 25日 | 3,500×0.8×25=7万円 | 140万円 | 140÷7=20席 |
昼も夜も、答えが20席でそろいました。Aさんの店が20席なのは、この割り算の結果です。(Aさんの数字は、説明用の架空の例です。業界の標準ではありません。前回までの数字、売上190万円・必要な資金1,040万円・利益33万円は変えていません)
席数を変えると、売上と利益はどう動くか
席数を15席・20席・25席にしたとき、月の売上がどう変わるかを見ます。1席あたりの月の売上は、昼2.5万円+夜7万円=9.5万円です。
| 席数 | 昼(月) | 夜(月) | 月の売上 |
|---|---|---|---|
| 15席 | 37.5万円 | 105万円 | 142.5万円 |
| 20席 | 50万円 | 140万円 | 190万円 |
| 25席 | 62.5万円 | 175万円 | 237.5万円 |
15席だと、月の売上は142.5万円です。第3回と同じ置き方(原価率30%、原価以外の経費は合計100万円のまま)で計算すると、142.5万円−原価42.75万円−経費100万円=マイナス0.25万円、つまり利益はほぼゼロです。席を5つ減らすだけで、Aさんの利益33万円は消えてしまいます。
反対に、25席にすれば売上は増えます。ただし、席が増えれば広い物件が要り、家賃も内装費も人件費も増えます。席を増やしたら経費も一緒に増えるので、利益が同じように増えるとは限りません(この表は売上だけの比較です)。
なお、席が足りないときは、席を増やす以外の道もあります。夜の客単価を3,500円から4,000円に上げると、夜の売上は4,000×0.8×25×20席=160万円で、20万円増えます。席を増やすか、1人あたりの売上を上げるかは、計画の段階で比べられます。
席数の目安は、二次情報では広さ次第
「10坪なら何席か」の目安も、参考までに見ておきます。マネーフォワード クラウドの記事(2026年4月1日更新)では、10坪の店で1坪あたり1〜1.5席、10〜15席が標準的としています(二次情報であり、公的な基準ではありません)。Aさんの20席は、1坪あたり2席になり、この目安より多めです。
私は、この食い違いを隠さず見るほうがよいと考えます。席数は、店の形・厨房の広さ・業態(立ち飲みか、座って食事か)で大きく変わります。 Aさんの20席は説明用の置き方で、実際の物件では、図面で席を並べてみないと確かめられません。席の並べ方と動線は、後の回で扱います。
④坪数・家賃とつなげて確かめる
席数が出たら、他の欄と見比べます。
| 見比べる先 | 確かめること |
|---|---|
| 第4回「家賃と3つの条件」 | 席数から決めた坪数で、家賃18万円に収まるか |
| 第9欄「事業の見通し」 | 席数を変えたとき、利益がちゃんと残る数字か |
| 第8欄「必要な資金」 | 席数が増えると、内装・厨房機器・什器の費用も増えないか |
大阪では、ミナミ・キタなどの繁華街は夜、オフィス街は昼にお客さんが偏る傾向があると、当社は見ています。立地によって昼と夜の比率が変わるので、決めたコンセプトが、探している街の昼夜の人の流れと合っているかを、内見の前に確かめてください。家賃の上限の決め方は飲食店の家賃は売上のいくらまで?内見前に決める3条件、利益の出し方は売上190万円で手元に残るのは?原価・人件費・家賃を引くで扱っています。
今日のワーク
- 「誰に・何を・いくらで・いつ」を、4行で書く
- 昼と夜それぞれの客単価・回転数・営業日数を置き、1席あたりの月の売上を出す
- 売りたい金額を置き、「売りたい金額÷1席あたりの売上」で席数を出す
- 席数を3席増やした場合と減らした場合の売上を、足し算と掛け算で出す
- ☐ コンセプトを4つの言葉で言い切った
- ☐ 昼と夜で、同じ席を使い回していると理解した
- ☐ 席数を割り算で出した
- ☐ 席が少ない場合の売上も計算した
次回予告
次回は、第8欄にもどり、「運転資金は何か月分持つべきか」 です。開店直後にお金が足りなくなる典型的なパターンと、どう備えるかを見ていきます。
ここまでで書けるようになった項目
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 全体の見取り図 | 第1回でわかった |
| 売上高(月) | 第2回で掛け算で作れるようになった |
| 売上原価・経費・利益(月) | 第3回で引き算で出せるようになった |
| 家賃の上限と、物件探しの3条件 | 第4回で決められるようになった |
| 必要な資金(設備・運転)と調達方法の考え方 | 第5回で足し算で組み立てられるようになった |
| 契約のときに動くお金 | 第6回で5種類に分けて数えられるようになった |
| 内装費の見積書の読み方 | 第7回で項目に分けて比べられるようになった |
| 営業許可の流れ(事前相談→申請→検査) | 第8回で順番と時期がつかめた |
| 消防署への届出(相談→使用開始届) | 第9回で順番と時期がつかめた |
| 従業員の欄と、人件費の「時間」への直し方 | 第10回で考え方がつかめた |
| 販売ターゲット・販売戦略と、集客の時期 | 第11回で考え方がつかめた |
| 創業の動機(第1欄) | 第12回で3つの問いで書けるようになった |
| 経営者の略歴等(第2欄) | 第13回で事実の書き出しと言い換えで書けるようになった |
| お借入の状況(第7欄) | 第14回で残高と年間返済額で書けるようになった |
| 業態・コンセプトと席数(第3欄) | 今回、4つの言葉と割り算で決められるようになった |
| 運転資金の考え方など | これから順に学ぶ |
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TEL:06-6195-8209
よくある質問
Q. 「広い店のほうが儲かる」と思っていましたが、違うのですか?
A. 席が増えれば売上の上限は上がりますが、家賃・内装費・人件費も増えます。席数は割り算で出し、利益が残るかを確かめてください。
Q. 席数が決まらないまま、物件を探してもいいですか?
A. 広さが合わない物件を何件も見ることになりがちです。先に席数の目安を置いてから、坪数と家賃の条件を決めるのが近道です。
Q. 客単価や回転数は、どうやって決めればいいですか?
A. 近くの似た業態の店の価格や、満席になる時間帯を実際に見て仮置きします。確かな数字はないので、少し控えめに置いて計算し直せる形にしておきます。
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参考
- 各種書式ダウンロード(国民生活事業)|日本政策金融公庫
- 創業計画書セルフチェックリスト(2023年版)|日本政策金融公庫
- 10坪の飲食店で売上はいくら?目標設定から経営戦略まで解説|マネーフォワード クラウド(2026年4月1日更新)
- 【2026年最新】大阪の飲食店開業ガイド|初期費用と物件探し方|店舗市場
※Aさんの数字は説明用の架空の例です。席数の目安は二次情報であり、公的な基準ではありません。公庫の様式、記入例、相談窓口、融資の条件は変更されることがあり、最新情報は公庫のページでご確認ください。
