
売上190万円で手元に残るのは?原価・人件費・家賃を引く
「売上さえ立てば、なんとかなるんじゃないか」。そう思って開店して、月末に通帳を見て青ざめる人は少なくありません。結論から言うと、飲食店の利益は「売上から、材料費・人件費・家賃などを引いた残り」です。売上190万円のお店でも、引くものを並べると、利益は33万円(この講座の架空の例)になります。ただし、これは借入の返済と税金を引く前の数字です。この回では、引き算だけで利益を出し、「最低いくら売れば赤字にならないか」までを電卓1つで追います。
利益は「引き算」で出す
式は文章で書くと、次の2行だけです。
売上から材料費(売上原価)を引く = 粗利(あらり)
粗利から、人件費・家賃・利息・その他を引く = 利益
粗利とは、「材料を引いたあとに、お店に残るお金」のことです。ここから人と家賃などを払い、なお残ったものが利益です。
売上
材料費を引く
人件費・家賃などを引く
利益
| 用語 | 日常の言葉で言うと | 例 |
|---|---|---|
| 売上原価 | 売った料理の材料にかかったお金 | 食材、飲み物の仕入れ |
| 人件費 | 働く人に払うお金 | アルバイトの給料(本人の生活費は別に考える) |
| 家賃 | 店の場所の使用料 | 毎月の賃料 |
| 支払利息 | 借りたお金に付く手数料 | 公庫などへの利息 |
| その他 | 上のどれでもない毎月の出費 | 光熱費、広告費、消耗品 |
Aさんの利益を作ってみる(架空の例です)
この講座の連続ケースです。以下は説明用の架空の例で、業界の相場や基準ではありません。Aさんの月の売上は、前回の記事で190万円になりました。ここから引いていきます。
| 項目 | 金額(月) | 計算 |
|---|---|---|
| 売上高 | 190万円 | 前回の掛け算の答え |
| 売上原価(材料費) | 57万円 | 190万円 × 原価率30%(※) |
| 粗利 | 133万円 | 190 − 57 |
| 人件費 | 55万円 | アルバイトなど。Aさん本人の生活費は含まない |
| 家賃 | 18万円 | |
| 支払利息 | 2万円 | |
| その他(光熱費・広告費など) | 25万円 | |
| 経費の合計 | 100万円 | 55 + 18 + 2 + 25 |
| 利益 | 33万円 | 133 − 100 |
※原価率とは、売上のうち材料費が占める割合です。30%なら、1,000円の料理に材料費300円ということです。30%はAさんの設定であり、おすすめの数字ではありません。原価率は、業態やメニューで大きく変わります。自分のメニューの材料費を一品ずつ足して、自分の数字を確かめてください。
この33万円が、借入の返済(元金)と、Aさん自身の生活費の出どころになります。利益が出ていても、そこから返済と生活費を引くと残りは小さい、という点は覚えておいてください。また、利益には税金もかかります(税金の計算は、この講座では扱いません)。
「材料と人にいくら使うか」を見る
飲食業では、材料費(Food)と人件費(Labor)を合わせた金額を「FLコスト」と呼びます。むずかしく聞こえますが、「材料と人に、売上のどれだけを使っているか」を見るための数字です。
Aさんの場合は、57万円 + 55万円 = 112万円です。売上190万円で割ると、約59%になります。残りの約41%で、家賃・利息・その他を払い、利益を残す形です。
この割合に「正解」の数字は、ここでは示しません。出典のない目安を鵜呑みにすると、自分の店に合わない計画になるからです。業態で大きく違うので、自分の計画で確かめることが大切です。
最低いくら売れば、赤字にならないか
「売上が計画の7割だったら、どうなる?」。これを知るための考え方が、損益分岐点(そんえきぶんきてん)です。赤字にならない最低ラインの売上のことです。
Aさんの原価率は30%なので、1円売るごとに、材料費を引いて70銭が残ります。一方、人件費・家賃・利息・その他の100万円は、売上が少なくても毎月かかります(※説明を簡単にするため、人件費も毎月ほぼ一定と置いています)。
赤字にならない売上 = 毎月かかる100万円 ÷ 0.7 = 約143万円
| 売上 | 粗利(売上 × 0.7) | 経費 | 利益 |
|---|---|---|---|
| 190万円(計画どおり) | 133万円 | 100万円 | +33万円 |
| 143万円(ぎりぎり) | 約100万円 | 100万円 | ほぼ0円 |
| 120万円(計画の約6割) | 84万円 | 100万円 | −16万円 |
Aさんは、計画の約75%の売上があれば赤字を避けられます。逆に言えば、売上が計画の4分の1減るだけで、利益はほぼゼロです。なお、この計算には借入の返済(元金)を入れていません。返済まで入れると、赤字にならない売上はさらに上がります。計画書の売上を「少し甘く」置くと、この余裕が見かけだけになるため、前回の「控えめな回転数」が効いてきます。
大阪で置くときの一言
大阪市内でも、ミナミやキタの繁華街では家賃が上がりやすく、引き算の中で家賃が大きな割合を占めがちです。10坪クラスの店の引き算の例は、大阪市内10坪・家賃15万円カフェのリアルな収支モデルで、返済まで含めた見方は店主の人件費30万円・初期費用500万円カフェの収支モデルと公庫返済シミュレーションで確認できます。「その他」に入る光熱費は、物件や業態で差が出ます。見積もりは、内見のときに確認するのが確実です。
今日のワーク
- 前回の月の売上(仮)を書く
- 自分のメニューの材料費を一品ずつ足して、原価率を出す(材料費 ÷ 売り値)
- 人件費・家賃(仮)・利息・その他を置き、引き算して利益を出す
- 「経費の合計 ÷(1 − 原価率)」で、赤字にならない売上を出す
- ☐ 原価率を、自分のメニューで確かめた
- ☐ 人件費に、自分の生活費を混ぜていない
- ☐ 利益を引き算で出した
- ☐ 赤字にならない売上と、計画の売上との差を見た
次回予告
利益の計算ができると、「払える家賃の上限」が見えてきます。次回は、家賃は売上のいくらまでなら安心か。借入の返済まで入れた見方は、資金の回で改めて扱います。今回はまず、返済を入れる前の利益で考えます。内見に行く前に決めておく「坪数・家賃の上限・エリア」の3条件を、Aさんの数字で考えます。
ここまでで書けるようになった項目
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 全体の見取り図 | 第1回でわかった |
| 売上高(月) | 第2回で掛け算で作れるようになった |
| 売上原価・経費・利益(月) | 引き算で出せるようになった |
| 必要な資金、動機、略歴など | これから順に学ぶ |
出店・開業の計画づくりのご相談はこちら
大阪で飲食店の開業をご検討中の方は、株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。物件を探す前の資金計画やエリア選びの段階からのご相談も承っております。「この売上なら、家賃はいくらまでが目安か」といった整理にも対応します。
TEL:06-6195-8209
よくある質問
Q. 売上があるのに、お金が残らないのはなぜですか。
A. 売上から、材料費・人件費・家賃などを引いたものが利益だからです。売上と手元に残るお金は別物と考えてください。
Q. 原価率は何%にすればいいですか。
A. 業態やメニューで大きく違うため、決まった正解はありません。自分のメニューの材料費を足して、自分の数字で確かめてください。
Q. 損益分岐点は、開業前に出す必要がありますか。
A. 出しておくと、売上が計画を下回ったときの余裕が分かります。引き算ができれば、電卓だけで出せます。
関連記事
- 飲食店の売上は掛け算で作る!客単価×席数×回転数×日数
- 公庫の創業計画書、数字が苦手でも書ける順番
- 大阪市内10坪・家賃15万円カフェのリアルな収支モデル
- 店主の人件費30万円・初期費用500万円カフェの収支モデルと公庫返済シミュレーション
参考
※Aさんの数字は説明用の架空の例です。融資の条件・様式は変更されることがあります。最新情報は公庫の公式サイトでご確認ください。
