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「経営者の略歴」の書き方!前職を飲食店の強みに言い換える

新規開業者向け

四谷 義仁

筆者 四谷 義仁

不動産キャリア20年

飲食店専門の不動産会社「株式会社不動産スペース」代表。不動産キャリア20年。大阪・京都・兵庫エリアを中心に、店舗仲介・管理・閉店サポートから収益物件の売買まで手がける。これまで数多くのカフェ・居酒屋・ラーメン店などの開業支援を行い、実際の経営数値や現場課題をもとに"リアルな店舗経営の見える化"を発信中。現場の泥臭さも、数字のシビアさも知る「現実派不動産屋」

「飲食店で働いた経験がないのに、略歴欄に何を書けばいいのか。正直に書いたら、それだけで融資は難しいのでは」。異業種から飲食店を始める方が、創業計画書の第2欄で手が止まる理由です。結論から言うと、略歴の欄は、飲食店の経験を競う欄ではありません。これまでの仕事を事実のまま書き、その中から「店の運営につながる部分」を見つけて添える欄です。日本政策金融公庫(公庫)の様式には、この欄の名前が「経営者の略歴等」と記されています(日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード(国民生活事業)」)。この記事では、会社員から食堂を始めるAさん(架空)の例で、前職の言い換え方を3つのステップで見ていきます。

この講座の位置づけ: 創業計画書の第2欄「経営者の略歴等」を書く回です(第13回)。開業までの流れでいうと、物件探しや契約の前、計画書を作る段階の作業です。前回の第1欄「創業の動機」とセットで、「この人は、なぜ、この事業を始めるのか」を伝える部分にあたります。

前回は「創業の動機」の書き方!なぜ飲食店かを3つの問いででした。全体の見取り図は公庫の創業計画書、数字が苦手でも書ける順番です。

全体の流れ

①
職歴を事実のまま書き出す
→
②
運営につながる点に言い換える
→
③
足りない部分を補う
→
④
動機・数字と矛盾がないか確認

①まず、職歴を「事実のまま」書き出す

公庫の様式と飲食店(洋風居酒屋)を含む9業種の記入例は、公庫の各種書式ダウンロード(国民生活事業)で見られます。記入例の文章や数字は、ここには転載しません。実際の様式と書き方は、必ず公庫のページでご確認ください。

このページには、略歴欄の書き方そのものの説明は載っていません。そのため、この記事の整理は「公庫の説明」ではなく、記事側の考え方です。

まず、次の項目を紙に書き出します。きれいな文章にする必要はありません。

  1. 勤め先の名前と、いた期間(何年何月から何年何月まで)
  2. その間の役割(営業、経理、店舗の運営、人の管理など)
  3. 任された数字や人数(担当した売上、部下の人数、扱った客の数など。覚えている範囲の事実だけ)
  4. 飲食店に関わった経験(働いた経験だけ。お客として通った店は別)

飲食店で働いた経験がなければ、4は「なし」で構いません。ないものを、あるように書かないことが、いちばん大切です。面談で聞かれたとき、自分の口で説明できる内容だけを書きます。

②前職の仕事を「店の運営」に言い換える(Aさんの場合)

Aさん(架空)は、大阪市内で10坪・20席の食堂を開く会社員です。説明用の例として、前職を食堂の運営に結びつけた表を作りました。

前職での仕事(架空の例)食堂の運営につながる点計画書のどこと関係するか
法人向けの営業を10年担当した相手の話を聞き、値段の理由を説明する。お客さんの層をつかむ客単価・販売ターゲット(第3欄)
営業の数字を毎月まとめた売上と経費を毎月見て、赤字にならないか確かめる事業の見通し(第9欄)
後輩2人の指導をした人に仕事を教え、シフトを回す従業員(第4欄)
取引先との支払いの日程を管理した仕入れ先への支払いと、売上の入金のずれを見る取引先・取引関係等(第5欄)

この表の左の列は、Aさんが実際にした仕事です。中央の列は、その仕事から何が言えるかを考えたものです。ここで大切なのは、言い換えを元の事実より大きく書かないことです。「後輩2人の指導」を「大規模な組織運営」と書いてしまうと、面談で質問されたときに答えにくくなります。

(Aさんの経歴は、説明用の架空の例です。業界の標準ではありません。前回までの数字、売上190万円・必要な資金1,040万円は変えていません)

言い換えるときのコツ

  • 動詞で書く: 「営業職」とだけ書かず、「新規のお客さまを開拓し、契約までを担当した」のように、何をしたかを動詞で書きます。
  • 数字は覚えている範囲で: 「約10年」「部下2人」のように、事実として言えるものだけにします。分からない数字は書きません。
  • 飲食とのつながりは1行で: 一つの職歴につき、「だから食堂ではこう生かせる」を1行にとどめます。

③足りない部分は、正直に補う

飲食店での経験がない場合、不安が残るのは当然です。補い方は、次のような方法があります。

どれも、事実として行ったものだけを書きます。これからやる予定のことは、「予定」と分かる書き方にします。なお、公庫は事業資金相談ダイヤルを設けています。略歴欄の書き方に迷ったときは、公庫のページで案内されている窓口や、お住まいの地域の商工会議所に相談する方法もあります。電話番号と受付時間は変わることがあるため、各種書式ダウンロード(国民生活事業)で最新の案内をご確認ください。融資が受けられるかどうかは、略歴だけで決まるものではなく、公庫の審査によります。

公庫の窓口で聞いた「本人について確認される3つの視点」

事業計画(売上や利益の見通し)が大切なのは言うまでもありません。そのうえで、当社が公庫の担当の方に聞いたところ、申込む本人について、「自己資金」「経験」「社会的信用」の3つの視点が確認されますとのことでした。そして、このうち1つが足りなくても、残りの2つで補えれば問題ないという説明でした。

(当社が窓口で確認した内容です。支店や時期、案件によって変わる可能性があるため、ご自身の案件は必ず公庫の窓口でご確認ください)

この見方に当てはめると、略歴の欄は「経験」を伝える欄です。飲食店の経験が少なくても、自己資金(第8欄)がしっかりあり、社会的信用(借入の返済状況などを正直に書く第7欄とも関わります)に問題がなければ、補える余地があるということです。逆に、経験が少ないのに、自己資金も少ない場合は、上の補い方(アルバイトでの経験、人を迎える計画)が大事になります。

見られる点計画書のどの欄と関係するか今回の回との関係
自己資金第8欄(必要な資金と調達方法)第5回で学んだ
経験第2欄(経営者の略歴等)今回の回
社会的信用第7欄(お借入の状況)など次回の回

(欄との対応は、記事側の整理です。公庫が欄ごとに見る点を定めているわけではありません)

④動機・数字と矛盾がないか確かめる

略歴は、他の欄とつながっていると、話に筋が通ります。次の3つを見比べてください。

見比べる欄確かめること
第1欄「創業の動機」動機に書いた「困りごと」と、前職の経験が結びついているか
第4欄「従業員」経験が足りない部分を、人や研修で補う計画になっているか
第9欄「事業の見通し」売上や経費の数字を、自分の前職の経験で説明できるか

私の見方では、略歴が数字や動機とずれていると、面談で説明に苦労します。たとえば、動機に「落ち着いて食べられる店」と書いたのに、略歴が飲食と関係のないままで、補う計画もない。この状態だと、質問されたときに答えがばらばらになりやすいからです。書き終えたら、声に出して、3つをつなげて話せるか試してみてください。

大阪市内は、キタ・ミナミのような繁華街、オフィス街、住宅街で客層が違います。前職で相手にしていた層と、これから店で迎えたい層が近いなら、それも立派なつながりです。物件を探すときの条件づくりは、飲食店の家賃は売上のいくらまで?内見前に決める3条件でまとめています。

今日のワーク

  1. 前職の職歴を、勤め先・期間・役割の順に紙に書き出す(事実だけ)
  2. その中から、食堂の運営につながる仕事を2つ選び、「どう生かせるか」を1行ずつ書く
  3. 飲食店の経験がない場合、補う方法を1つ決める(アルバイト、講習、人を迎えるなど)
  4. 第1欄の動機と、第2欄の略歴を声に出して続けて読み、つながっているか確かめる
  • ☐ 職歴を勤め先・期間・役割で書き出した
  • ☐ 前職の仕事を、食堂の運営につながる点に言い換えた(事実より大きく書いていない)
  • ☐ 飲食店の経験がない部分を、補う方法を決めた
  • ☐ 動機・従業員・事業の見通しの欄と、矛盾がないか確かめた

次回予告

次回は、第7欄の「お借入の状況」です。住宅ローンやカードの借入など、すでにある借入をどう書くか。隠さずに書く理由と、書き方の考え方を見ていきます。

ここまでで書けるようになった項目

項目状況
全体の見取り図第1回でわかった
売上高(月)第2回で掛け算で作れるようになった
売上原価・経費・利益(月)第3回で引き算で出せるようになった
家賃の上限と、物件探しの3条件第4回で決められるようになった
必要な資金(設備・運転)と調達方法の考え方第5回で足し算で組み立てられるようになった
契約のときに動くお金第6回で5種類に分けて数えられるようになった
内装費の見積書の読み方第7回で項目に分けて比べられるようになった
営業許可の流れ(事前相談→申請→検査)第8回で順番と時期がつかめた
消防署への届出(相談→使用開始届)第9回で順番と時期がつかめた
従業員の欄と、人件費の「時間」への直し方第10回で考え方がつかめた
販売ターゲット・販売戦略と、集客の時期第11回で考え方がつかめた
創業の動機(第1欄)第12回で3つの問いで書けるようになった
経営者の略歴等(第2欄)今回、事実の書き出しと言い換えで書けるようになった
お借入の状況などこれから順に学ぶ

計画づくり・物件探しのご相談はこちら

大阪で飲食店の開業をご検討中の方、居抜き・スケルトンの貸店舗をお探しの方は、株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。「計画書の数字を持って、家賃と席数を相談したい」「前職の客層に合う立地を知りたい」「創業計画書を作る前の資金計画から相談したい」といったご相談にも対応します。物件を探す前の資金計画やエリア選びの段階からのご相談も承っております。

TEL:06-6195-8209

お問い合わせフォームはこちら

よくある質問

Q. 飲食店で働いた経験がないと、融資は受けられませんか?
A. 経験の有無だけで決まるものではなく、審査は公庫が行います。事実を書いたうえで、補う計画を添えることが大切です。

Q. 「もう会社員の経歴しかなくて、書くことがない」場合はどうすれば?
A. 勤め先・期間・役割を事実のまま書き出し、店の運営につながる仕事を探します。接客、数字の管理、人の指導などが手がかりです。

Q. 経歴を少し大きく書いたほうが、通りやすいですか?
A. おすすめしません。面談で質問されたとき、自分の口で説明できる範囲にとどめてください。

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参考

※Aさんの数字・経歴は説明用の架空の例です。公庫の様式、記入例、相談窓口、融資の条件は変更されることがあり、最新情報は公庫のページでご確認ください。

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