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「飲食店の消防届出」大阪市は工事前に相談、開始7日前に届出

新規開業者向け

四谷 義仁

筆者 四谷 義仁

不動産キャリア20年

飲食店専門の不動産会社「株式会社不動産スペース」代表。不動産キャリア20年。大阪・京都・兵庫エリアを中心に、店舗仲介・管理・閉店サポートから収益物件の売買まで手がける。これまで数多くのカフェ・居酒屋・ラーメン店などの開業支援を行い、実際の経営数値や現場課題をもとに"リアルな店舗経営の見える化"を発信中。現場の泥臭さも、数字のシビアさも知る「現実派不動産屋」

「保健所の許可は取ったのに、消防署のことは何も知らなかった」。そんなことにならないか、不安な方も多いと思います。結論から言うと、消防署には、工事の前に図面を持って相談し、使う日の7日前までに「防火対象物使用開始届」を出すのが大阪市の基本です(大阪市消防局)。会社員から飲食店を始めるAさん(架空)の場合で、順番を見ていきます。

この講座の位置づけ:創業計画書の「取扱商品・サービス」の欄で説明するお店が、火事の面でも安全に開けるかを確かめる回です(第9回)。開業までの流れでいうと、契約のあと・内装工事の前に相談し、開店の1週間前までに届出をする手続きです。

前回は飲食店の営業許可の取り方!大阪市は開店2〜3週間前にでした。全体の見取り図は公庫の創業計画書、数字が苦手でも書ける順番をご覧ください。

保健所と消防署は、別々の窓口

営業許可は保健所(大阪市では生活衛生監視事務所)、火事に関する手続きは消防署です。窓口も書類も別なので、片方が済んでも、もう片方が済んだことにはなりません。消防署の窓口は、お店のある場所を担当する消防署です(大阪市消防局)。

全体の流れ

①
契約
→
②
図面を持って
消防署に相談
→
③
内装工事
→
④
厨房設備の届出
(該当する場合)
→
⑤
使用開始届
(7日前まで)
→
⑥
開店
順番やること時期の目安大阪市の案内
①物件を決める(賃貸借契約)相談の前―
②図面を持って、管轄の消防署に相談工事を始める前用途変更などで消火器などの消防用設備が新たに必要になる場合があり、事前相談が推奨されている
③内装・設備の工事相談の内容を図面に反映―
④炉・厨房設備等の設置届(該当する場合)設置の5日前まで火災の危険が大きい設備が対象で、火を使う設備すべてではない
⑤防火対象物使用開始(変更)届出書使用を始める日の7日前まで窓口のほか、大阪市行政オンラインシステムでも申請できる
⑥開店――

(出典:新しくお店を始められる方へ|大阪市消防局、2025年12月19日の掲載、火災予防条例関係詳細|大阪市消防局、2024年4月1日更新)

使用開始届の根拠は、大阪市火災予防条例第56条と同施行規則第5条、厨房設備等の届出は同条例第57条と同施行規則第6条です(大阪市消防局)。

大切なのは②の事前相談です。内装ができあがってから「感知器(煙や熱を知らせる機器)が足りない」と言われると、やり直しの工事費がかかります。

現場の実情:個人店の消防申請は、実は出していない店が多い。でも今は変わってきた

ここからは、法律の説明ではなく、私の肌感覚の話です。大阪の個人店では、消防への申請をしていない店が8割ほどある、と私は見ています。昔は9.5割以上が出していない、というイメージでした。

出さない理由は単純で、誘導灯(出口を示す緑のあかり)や消火器をつけるのに、意外とお金がかかるからです。申請に行くと、足りない設備を指摘されます。それなら行かない、という判断が働きやすいのです。

ただ、今は流れが変わっています。大阪では、北新地のクリニックの火災や、難波・道頓堀の雑居ビルの火災をきっかけに、消防への見方が厳しくなったと感じています。その影響で、ビルの側が、賃貸借契約書の特約に「消防への申請を必ず行うこと」と書き足すケースが増えました。

つまり、「出さなくても、まわりも出していない」は、もう通りにくくなっています。届出は条例で決まった義務です(大阪市火災予防条例第56条)。契約書に特約があれば、出さないことは契約違反にもなりえます。

だから、費用は最初から資金計画に入れておくのが安全です。誘導灯や消火器は、あとで追加すると、工事の段取りも崩れます。契約の前に、次の2点を聞いておきましょう。

  • ☐ 契約書に、消防申請についての特約があるか
  • ☐ 誘導灯・消火器・感知器の追加が必要か、必要なら誰の費用か

使用開始届に必要なもの

大阪市の案内では、届出書に次の図面などをつけます。

  • ☐ 防火対象物使用開始(変更)届出書(第3号様式)
  • ☐ 配置図
  • ☐ 付近見取図
  • ☐ 各階平面図
  • ☐ 電気配線図
  • ☐ 消防用設備等の配置図
  • ☐ 階数が10以上、または棟数が2以上の建物の場合は、防火対象物棟概要追加書類(第4号様式)

(出典:大阪市消防局「新しくお店を始められる方へ」)

保健所に出す「営業施設の構造と設備を示す図面」と、消防署に出す各階平面図は、もとになるのは同じ内装の図面です。内装の設計ができた時点で、保健所と消防署の両方に使える形で作ってもらえるか、設計会社に聞いてみましょう。

「防火管理者」と「消防計画」は何のためか

防火管理者とは、お店や建物の火災を防ぐ担当者のことです。置く必要があるかどうかは、建物全体の人数や用途で決まります。大阪市では、防火管理者を選んだとき、選任(解任)の届出書を管轄の消防署に出します(根拠は消防法第8条と同施行規則第3条の2)。消防計画(火災のときの動き方を決めた書類)を作ったときも、届出が必要です(出典:防火・防災管理関係詳細|大阪市消防局、2026年2月19日更新)。

自分の店に防火管理者が必要かどうかは、お店の人数だけでなく、入るビル全体で決まるため、ここでは断定しません。物件が決まったら、ビルの管理会社と消防署に確認してください。誰が、いつまでに講習を受けるかは、のちの回で取り上げます。

内装・厨房まわりで、先に聞いておきたいこと

次の点は、消防署への相談と、内装の見積もりの両方で確認が必要です。

  • ☐ 感知器・誘導灯・消火器が、今の間仕切り(部屋の仕切り)に合っているか
  • ☐ 厨房設備(コンロ、フライヤーなど)が、設置の届出の対象になるか
  • ☐ カーテンやのれんなど布製品に、防炎品(燃え広がりにくい加工をした製品)が必要か
  • ☐ 上記の追加工事の費用が、内装の見積もりに入っているか

防炎品については、他の自治体の案内で、飲食店のカーテンやじゅうたんなどに防炎の表示がある製品を使うよう求められていることを確認しました(出典:防炎防火対象物|札幌市消防局)。大阪市での扱いは、消防署に確認してください。

テナントとして入る場合の注意として、西宮市の案内には「間仕切りの変更により、自動火災報知設備の感知器の増設・移設が必要になることが多い」とあります(出典:防火対象物使用開始届|西宮市消防局)。ミナミ・キタの繁華街に多い雑居ビル(飲食店や事務所などが同じ建物に入るビル)では、ビル全体の消防設備と、あなたの区画の工事がつながっています。感知器の増設を誰の費用で、どの業者が行うかを、契約の前に管理会社に聞いておくと、あとの話が早くなります。この点は第7回の「見積書に含まれないもの」の考え方と同じです。内装見積書の「一式」は中身を聞く!Aさんの400万円も参考にしてください。

Aさん(架空)の場合、消防の追加工事は、第7回の内装400万円の中で見込んでいるのか、別にかかるのかを、見積もりの段階で聞く、という置き方にします。金額は物件で大きく変わるため、数字は仮置きしません。

居抜き物件でも、確認は必要

前の店が飲食店でも、「そのまま使える」と決めつけないでください。大阪市の案内では、店舗を新たに始める場合や、建物の用途を変える場合に使用開始届が必要とされています(大阪市消防局)。居抜きで、前の店と同じ用途の場合に、新しい使い手の届出が必要かどうかは、管轄の消防署に確認してください。前の店の設備については、居抜き物件「引き渡し後」に多いトラブル7選と対策も参考になります。

今日のワーク

  1. 気になる物件の住所から、管轄の消防署を大阪市のページで調べる
  2. 内装の図面ができたら、工事を始める前に、消防署へ相談の日程を電話で聞く
  3. 開店予定日から逆算して、使用開始届を出す日(7日前まで)を決める。保健所の申請日(2〜3週間前)より後でも、余裕を持って決める
  4. ビルの管理会社に、消防設備の工事を誰が・どの業者で行うかを聞く
  • ☐ 管轄の消防署を調べた
  • ☐ 工事前に相談の日程を取った
  • ☐ 使用開始届を出す日を決めた
  • ☐ 厨房設備の設置届が必要か、消防署に確認した
  • ☐ 防火管理者が必要かを、管理会社と消防署に確認した
  • ☐ 消防設備の追加工事が、内装の見積もりに入っているか確認した

次回予告

次回は、人を雇うときの手続きです。創業計画書の「従業員」の欄と、「事業の見通し」の人件費の書き方につなげて見ていきます。

ここまでで書けるようになった項目

項目状況
全体の見取り図第1回でわかった
売上高(月)第2回で掛け算で作れるようになった
売上原価・経費・利益(月)第3回で引き算で出せるようになった
家賃の上限と、物件探しの3条件第4回で決められるようになった
必要な資金(設備・運転)と調達方法の考え方第5回で足し算で組み立てられるようになった
契約のときに動くお金第6回で5種類に分けて数えられるようになった
内装費の見積書の読み方第7回で項目に分けて比べられるようになった
営業許可の流れ(事前相談→申請→検査)第8回で順番と時期がつかめた
消防署への届出(相談→使用開始届)今回、順番と時期がつかめた
動機、略歴、お借入の状況などこれから順に学ぶ

消防・開業物件探しのご相談はこちら

大阪で飲食店の開業をご検討中の方、居抜き・スケルトンの貸店舗をお探しの方は、株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。「この物件の消防設備は、飲食店で使うのに足りそうか見てほしい」「ビルの管理会社に、何を確認すればよいか知りたい」「資金の数字を持って、物件の相談をしたい」といったご相談にも対応します。物件を探す前の資金計画やエリア選びの段階からのご相談も承っております。

TEL:06-6195-8209

お問い合わせフォームはこちら

よくある質問

Q. 工事が終わってから、消防署に行けばいいですよね?
A. おすすめしません。大阪市は事前相談を勧めています。工事後に指摘されると、やり直しの費用と日数がかかります。

Q. 消防署への届出は、いつまでに出しますか。
A. 防火対象物使用開始届は、使用を始める日の7日前までです(大阪市消防局)。厨房設備の届出は設置の5日前までです。

Q. 保健所の許可があれば、消防署は行かなくていいですか。
A. いいえ。保健所と消防署は別の窓口です。営業許可とは別に、消防署への相談と届出が必要かを確認してください。

関連記事

参考

※Aさんの数字は説明用の架空の例です。届出の時期、必要書類、設備の基準は変更されることがあり、店の業態や物件によっても異なります。最新情報は管轄の消防署でご確認ください。

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