
飲食店の家賃は売上のいくらまで?内見前に決める3条件
「いい物件が出たら、とりあえず見に行けばいい」。そう考えていると、内見のたびに心が揺れて、決めきれないまま「もう他の人に決まりました」と言われてしまいます。結論から言うと、家賃の上限は、売上と利益の計算から逆算して決めます。そして、坪数・家賃の上限・エリアの3つを、内見の前に紙に書いておくと、迷いが大きく減ります。この回では、Aさん(架空)の数字で、その決め方を電卓1つで追います。
内見の前に決める「3つの条件」
坪数
家賃の上限
エリア
| 条件 | 決めること | 決め方の手がかり |
|---|---|---|
| ①坪数(広さ) | 何坪までなら、席と厨房が収まるか | 席数と、厨房に必要な広さから |
| ②家賃の上限 | 毎月いくらまでなら払えるか | 売上と利益の計算から逆算 |
| ③エリア | どの街で、誰に売るか | 客単価と、来てほしいお客さんから |
順番が大切です。家賃の上限が先、物件はあとです。物件を先に見てしまうと、「この立地なら、少し高くても」と、数字より気持ちが先に動いてしまうからです。
Aさんの家賃は、妥当だったのか(架空の例です)
この講座の連続ケースです。以下は説明用の架空の例で、業界の相場や基準ではありません。Aさんは大阪市内の10坪・20席の食堂で、家賃を月18万円と置きました。前回の計算では、売上190万円のとき利益が33万円でした。
まず、家賃が売上のどれくらいを占めるかを割り算で出します。
家賃18万円 ÷ 売上190万円 = 約9.5%
では、家賃が上がると、利益はどう変わるでしょうか。家賃以外の数字(原価率30%、人件費55万円、利息2万円、その他25万円)は変えずに、家賃だけ動かしてみます。
| 家賃(月) | 売上に占める割合 | 利益(月) | 赤字にならない売上 |
|---|---|---|---|
| 15万円 | 約7.9% | 36万円 | 約139万円 |
| 18万円(Aさん) | 約9.5% | 33万円 | 約143万円 |
| 22万円 | 約11.6% | 29万円 | 約149万円 |
| 26万円 | 約13.7% | 25万円 | 約154万円 |
| 30万円 | 約15.8% | 21万円 | 約160万円 |
計算のしかたは、前回と同じです。利益は「33万円 − (家賃 − 18万円)」。赤字にならない売上は「家賃以外の経費82万円 + 家賃」を0.7で割った金額です(0.7は、原価率30%を引いて残る割合)。
ここから分かることが2つあります。
- 家賃が4万円上がると、利益は4万円減る。家賃は売上が少ない月も同じ額かかるので、そのまま利益にぶつかります。
- 家賃が12万円上がっても、赤字にならない売上は17万円しか上がらない。一見、小さな差に見えます。しかし、利益が33万円から21万円に減ると、借入の返済と生活費に回せるお金が、一気に細くなります。
「家賃を少し高く出すと、結局いくら残るの?」という疑問は、このように表にすれば自分で確かめられます。ご自身の数字で、同じ表を作ってみてください。
家賃の「割合」の目安は、業態で大きく違うため、ここでは決まった数字を示しません。当社の過去の試算記事(大阪市内10坪・家賃15万円カフェのリアルな収支モデル)では、家賃比率10〜12%以内を黒字化の鍵として置いていますが、これは10坪カフェの試算での話です。自分の売上と利益から確かめるのが一番確実です。
家賃の「見えない部分」も数える
物件の広告に出ている家賃(賃料)だけで判断しないでください。毎月払うお金には、次のようなものが加わることがあります。
- 共益費(管理費):廊下や階段など、共用部分の費用として払うお金
- 消費税:住宅の家賃は消費税がかかりませんが、これは「人が住むための貸付け」に限られています(国税庁)。店舗の家賃は、この非課税の対象外です。
- その他の月額費用:看板の使用料、駐車場など(物件による)
Aさんの「家賃18万円」を、これらを含めた毎月払う合計額として置くか、本体だけで置くかは、計画の最初にそろえておきましょう。途中でズレると、利益が実際より多く見えます。
①坪数と③エリアを決める
①坪数は、席数から考えます。Aさんは20席を10坪に置きました。1席あたり0.5坪(厨房を含む)という計算ですが、これはAさんの設定で、基準ではありません。業態によって、厨房が広く必要なお店も、カウンターで席を詰めるお店もあります。次の回以降で、設備の確認ポイントも扱います。
③エリアは、「誰に売るか」から考えます。Aさんは昼と夜の2部営業で、昼の客単価1,000円、夜の客単価3,500円と置きました。昼はオフィスや住宅街の人、夜は仕事帰りの人、といった具合に、客単価に合うお客さんが通る街を選びます。
大阪市内なら、ミナミやキタなどの繁華街は人通りが多い反面、家賃が上がりやすい傾向があります。逆に、駅から少し離れた街は家賃を抑えられますが、お客さんを呼ぶ工夫が必要です。どちらが良いかは、②の家賃の上限と、客単価で決まります。大阪の物件探しの全体像は、【2026年最新】大阪の飲食店開業ガイド|初期費用と物件探し方も参考にしてください。
なぜ「内見の前」に決めるのか
人気のある物件は、待ってくれません。これは、物件を扱う当社の現場でよく見る事実です。内見のあとで「どうしようか」と考え始めると、その間に、先に申込みが入ることがあります。
逆に、条件が紙に書いてあれば、その場で「合う・合わない」を判断できます。家賃の上限を超えているなら、見に行かなくて済みます。条件に合う物件が出たときだけ、すばやく動けます。
今日のワーク
- 前回の利益(仮)の表をもとに、家賃だけを3段階に変えて、利益と赤字にならない売上を出す
- 利益が「借入の返済と生活費」に足りる範囲で、家賃の上限を決める
- 席数から、必要な坪数の目安を決める(幅をもたせてよい)
- 客単価に合うエリアを、2〜3か所ピックアップする
- ☐ 家賃は、共益費と消費税を含めた「毎月払う合計額」で考えた
- ☐ 家賃を変えたとき、利益がいくら減るかを自分の数字で出した
- ☐ 坪数・家賃の上限・エリアの3条件を、紙に書いた
- ☐ 上限を超える物件は、見に行かないと決めた
次回予告
家賃の上限が決まったら、次は「全部でいくら必要か」です。次回は、開業資金を設備資金と運転資金に分けて、Aさんの必要な資金1,040万円の中身を見ていきます。
ここまでで書けるようになった項目
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 全体の見取り図 | 第1回でわかった |
| 売上高(月) | 第2回で掛け算で作れるようになった |
| 売上原価・経費・利益(月) | 第3回で引き算で出せるようになった |
| 家賃の上限と、物件探しの3条件 | 今回、自分の数字で決められるようになった |
| 必要な資金、動機、略歴など | これから順に学ぶ |
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大阪で飲食店の開業をご検討中の方、居抜き・スケルトンの貸店舗をお探しの方は、株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。物件を探す前の資金計画やエリア選びの段階からのご相談も承っております。「この売上なら家賃はいくらまでか」「このエリアで条件に合う物件があるか」といった整理にも対応します。
TEL:06-6195-8209
よくある質問
Q. 家賃は売上の何%までにすればいいですか。
A. 業態で大きく違い、決まった正解はありません。家賃を変えた利益の表を自分の数字で作り、返済と生活費が残る範囲で決めてください。
Q. いい物件が出たら、とりあえず見に行ってもいいですか。
A. 見に行くのは自由ですが、条件を決めずに行くと迷いやすくなります。先に家賃の上限と坪数を紙に書いておくと、判断が早くなります。
Q. 広告に出ている家賃が、そのまま毎月の支払いですか。
A. 共益費や消費税が加わることがあります。契約前に、毎月払う合計額を必ず確認してください。
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参考
※Aさんの数字は説明用の架空の例です。融資の条件・様式は変更されることがあります。最新情報は公庫の公式サイトでご確認ください。
