
募集家賃で利回り計算は危険!反響との差1.5万円
利回りの計算に使う「想定家賃」を、ポータルサイトに出ている募集家賃で置くと、実際より高い利回りが出てしまいます。2026年10月15日に公表された調査では、募集に出ている家賃と、入居希望者が実際に問い合わせた物件の家賃の差が、首都圏のひとり暮らし向けで約1万5千円に広がっていました(株式会社LIFULL調べ)。「買ったあとに埋まらなかったらどうしよう」という不安は、この差を知らないまま計算していることから来ているのかもしれません。
2つの家賃を分けて見ます
少し聞き慣れない言葉が出てきますので、先に整理します。
- 掲載賃料……募集に出ているときの家賃。売り手・貸し手の希望価格です。
- 反響賃料……実際に問い合わせ(反響)が入った物件の家賃。借りる人が「これなら払える」と動いた価格です。
この2つは別物です。どちらも成約した家賃そのものではありませんが、反響賃料のほうが「現実に動いた価格」に近い数字になります。
公表された数字
| エリア・タイプ | 掲載賃料(前年同月比) | 反響賃料(前年同月比) |
|---|---|---|
| 首都圏・ひとり暮らし向け | 100,569円(+15.7%) | 85,920円(+2.6%) |
| 首都圏・ファミリー向け | 164,570円(+14.7%) | 公表なし |
| 近畿圏・ひとり暮らし向け | 66,463円(+9.0%) | 公表なし |
| 近畿圏・ファミリー向け | 91,976円(+10.2%) | 公表なし |
| 東京23区・ひとり暮らし向け | 公表なし | 102,273円(+3.9%) |
(いずれも2026年9月時点。株式会社LIFULL「LIFULL HOME'Sマーケットレポート 2026年7〜9月版」2026年10月15日公表。近畿圏は大阪府・兵庫県・京都府の合計)
注目すべきは、上がり方の差です
首都圏のひとり暮らし向けは、募集家賃が1年で15.7%も上がったのに、問い合わせが入った家賃は2.6%しか上がっていません。その差は約1万5千円、東京23区では約3万2千円に広がったと報告されています(同社調べ)。貸す側の値上げに、借りる側の予算が追いついていないということです。
近畿圏は、ひとり暮らし向け・ファミリー向けとも集計開始以来の最高値を更新しましたが、上昇率は首都圏より緩やかです。なお近畿圏の反響賃料は公表されていないため、首都圏と同じ幅の差があるとは言い切れません。あくまで「募集家賃と問い合わせの入る家賃は別だ」という事実の確認としてお読みください。
借りる人は、どこで妥協しているのか
家賃が上がっても、入居者の給料はそこまで上がりません。では、どう折り合いをつけているのか。同じ調査で2つの動きが出ています。
①エリアを外側へずらす。 首都圏の問い合わせの割合は、東京23区が縮小する一方、埼玉県・神奈川県が拡大しました(ひとり暮らし向けで東京23区50.6%・前年同期比マイナス0.9ポイント、埼玉県11.6%・プラス0.9ポイント/同社調べ)。
②築年数で妥協する。 東京23区のひとり暮らし向けでは、問い合わせが入った物件の平均築年数が2026年9月に21年となり、前年同月の19年から古くなりました。集計開始以来、最も古い水準です(同社調べ)。
②は、中古を買う投資家にとって悪い話ではありません。築20年を超えた部屋でも、立地と価格が合えば問い合わせは入っている、ということです。広さ帯ごとの戦い方については25㎡のワンルームは、まだ戦えますでも触れました。
新築の想定家賃は、どこから出てきた数字でしょうか
ここが、いちばん気をつけていただきたいところです。新築のアパートや新築ワンルームの提案書に書かれている想定家賃は、周辺の相場を調べて出した数字とは限りません。建築費と、見せたい利回りから逆算されていることがあります。
計算の向きが逆になっています
本来は「この家賃で貸せる」→「だから利回りはこれくらい」の順番です。逆算の場合は「利回り8%に見せたい」→「では家賃はこの額でなければならない」という順番になります。後者で出てきた家賃は、入居者が払える額かどうかを確かめていません。
ですから、提案書を受け取ったら、まず「この想定家賃は、どの物件のどの実績から出したものですか」と聞いてみてください。周辺の実際の事例を示せるかどうかで、数字の性格が分かります。
相場は「全物件の平均坪単価」で見ます
では、何を物差しにすればよいか。賃料査定の実務では、募集中の物件の家賃をそのまま並べません。坪単価に直して、そのエリアの物件を一通り平均します。
坪単価とは、1坪(約3.3平方メートル)あたりの家賃です。家賃を面積で割るだけです。なぜわざわざ割るのか。広さが違う部屋は、家賃の額面では比べられないからです。
| 部屋 | 面積 | 家賃 | 坪単価 |
|---|---|---|---|
| A | 20㎡(約6.05坪) | 58,000円 | 約9,600円 |
| B | 25㎡(約7.56坪) | 66,000円 | 約8,700円 |
| C | 35㎡(約10.59坪) | 85,000円 | 約8,000円 |
(説明のための計算例です)
家賃の額面ではCが一番高いのに、坪単価ではCが一番安い。この並べ替えをしないまま「近くの物件は8万5千円で出ている」と比べても、何も分かりません。
そして大事なのは、一部の物件ではなく全物件を平均することです。 強気に出している新築だけを見れば高く出ますし、埋まらずに値下げした築古だけを見れば安く出ます。そのエリアに建っている物件を一通り並べて出した平均坪単価が、現実的な入居者が求める相場賃料に近づきます。
この考え方は、記事の前半で見た数字と同じことを言っています。掲載賃料は強気な物件に引っ張られた希望価格の集まりで、反響賃料のほうが「ならされた水準」に近い。平均坪単価は、それを自分の手で出す作業です。
買う前にやる3ステップ
エリアの平均坪単価を出す
面積をかけて想定家賃を置く
下げても返済が回るか確認
- ☐ 想定家賃を、販売資料の数字ではなく自分で調べ直した
- ☐ 同じ駅・同じ広さ・同じ築年数帯の物件を一通り並べ、坪単価の平均を出した
- ☐ その平均坪単価に自分の部屋の面積をかけて、想定家賃を置き直した
- ☐ 想定家賃を5%下げても返済と経費が回るか計算した
- ☐ 空室が2か月続いた場合の手残りを計算した
とくに①が肝心です。販売資料の「満室想定利回り」は、募集家賃や逆算した家賃をもとに計算されていることがあります。希望価格で利回りを組み立てると、実際に入居者が付く家賃との差が、そのまま手残りから消えていきます。
近畿圏では貸家の着工が増え続けており、近畿圏の着工は全国平均の2倍という状況も続いています(貸家着工5か月連続増、近畿圏は全国の2倍)。新しい部屋が増えれば、募集家賃を強気に出しても競合に流れます。価格の平均値だけを見て判断しない、という点は大阪の中古マンション成約単価「7か月ぶり」下落と同じ考え方です。
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これから区分マンションや一棟物件を買おうとお考えのサラリーマン投資家様も、すでにお持ちの物件の家賃設定や入れ替えでお悩みのオーナー様も、株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。提案書の想定家賃が妥当かどうか、エリアの平均坪単価と実際に決まっている家賃から、率直にお伝えします。
株式会社不動産スペース TEL:06-6195-8209
よくある質問
Q. 販売資料の「満室想定利回り」って、信じていいんですか?
A. 前提の家賃を確認してください。新築では建築費と目標利回りから逆算されていることがあります。どの物件の実績から出した数字か聞くのが早道です。
Q. 相場の家賃は、どうやって調べるのが正しいですか
A. 同じ駅・同じ広さ帯の物件を一通り並べ、家賃を面積で割った坪単価の平均を出します。一部の強気な物件だけを見ると相場を読み違えます。
Q. 掲載賃料と反響賃料は、成約した家賃とは違うのですか
A. 違います。掲載賃料は募集時の希望額、反響賃料は問い合わせが入った物件の家賃です。どちらも契約が成立した金額そのものではありません。
Q. 築20年を超える物件は、もう買わないほうがいいですか
A. 一概には言えません。東京23区では問い合わせの入る物件の平均築年数が21年まで古くなっており、価格と立地が合えば需要はあると読めます。
