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大阪の長屋の空き家、なぜ空家法が使えないのか

不動産管理

四谷 義仁

筆者 四谷 義仁

不動産キャリア20年

飲食店専門の不動産会社「株式会社不動産スペース」代表。不動産キャリア20年。大阪・京都・兵庫エリアを中心に、店舗仲介・管理・閉店サポートから収益物件の売買まで手がける。これまで数多くのカフェ・居酒屋・ラーメン店などの開業支援を行い、実際の経営数値や現場課題をもとに"リアルな店舗経営の見える化"を発信中。現場の泥臭さも、数字のシビアさも知る「現実派不動産屋」

長屋の空き家に「空家法」が使えないのはなぜか

隣の長屋が何年も空き家で老朽化していても、同じ棟の別の部屋に誰か1人でも住んでいれば、国の「空家法」に基づく行政の指導・勧告・命令・強制撤去(代執行)は使えません。空家法は「建物1棟ごと」に居住実態の有無を判断する法律だからです(空家等対策の推進に関する特別措置法)。ただし、自治体が独自の条例を持っていれば話は別です。

「空家法」とは、正式には「空家等対策の推進に関する特別措置法」という国の法律です。放置された危険な空き家に対し、市区町村が段階的に指導・勧告・命令を行い、最終的には代わりに取り壊す(行政代執行)こともできる仕組みです。制度の基本的な仕組みは別記事「『空家法』とは?空き家を放置するとどうなるか」で詳しく解説していますので、まずはそちらもあわせてご覧ください。ここでは、その空家法が「なぜ長屋には使いにくいのか」という点に絞って解説します。

ポイント:空家法が「空家等」と認めるかどうかは、建物1棟ごとに判断します。長屋は1棟の建物の中に壁を共有する形で複数の住戸が並ぶ建物です。隣の1軒が何年も空き家で老朽化していても、同じ棟の別の部屋に誰かが住んでいれば、棟全体としては「居住その他の使用がなされていないことが常態」とは言えず、空家法上の「空家等」に当たりません(大阪弁護士会空家等対策プロジェクトチーム、八尾市「長屋にまつわる諸問題の解説報告書」令和3年1月による)。

では、長屋には空家法がまったく使えないのかというと、そうではありません。長屋1棟全体に誰も住んでいない状態になれば、棟全体が空家法上の「空家等」に該当し得ます。このすきまを埋めるため、独自の「空家条例」を制定し、長屋の一部空室(法定外空家等)を条例の対象に加えている自治体もあります。たとえば大阪府八尾市は、区分所有建物である長屋の専有部分が使われていない状態を「法定外空家等」と定義し、条例に基づいて調査・助言・指導・勧告・命令ができるようにしています。ただし、こうした条例を持っているかは自治体によって差があり、大阪市・堺市などに同様の条例があるかは個別に確認が必要です。

空家法・条例以外にも、区分所有法に基づく区分所有者間の対応という道がありますが、程度に応じて必要な合意のハードルが上がります。

行為の種類 内容の例 必要な合意
保存行為破損箇所の緊急の小修繕区分所有者が単独でできる
管理行為(普通決議)通常の維持管理・改良工事区分所有者の人数・議決権の過半数
変更行為(特別決議)老朽化を理由にした大規模修繕・建替え等区分所有者の人数・議決権の4分の3以上
廃止・処分共用部分の取り壊し・売却区分所有者全員の同意

このように、屋根や柱、外壁など建物を支える「共用部分」への本格的な対応ほど、多くの区分所有者の合意が必要になります。所有者に連絡がつかない・相続で権利関係が複雑になっているといったケースでは、事実上手詰まりになりやすいのが実情です。これは、国土交通省のモデル事業(大阪府不動産コンサルティング協会による「区分所有長屋における管理不全空室等への予防的介入モデル構築事業」)が、まさに解決しようとしている課題です。

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よくある質問

Q. 隣の長屋が何年も空き家で老朽化しています。市に相談しても対応してもらえませんか?
A. 同じ棟に住んでいる人がいる場合、国の空家法は使えないことが多いですが、自治体が独自の「空家条例」を持っていれば対象になることがあります。まずは自治体の空き家相談窓口に情報提供してみましょう。

Q. 長屋全体が空き家になれば空家法の対象になりますか?
A. はい。長屋1棟すべてに居住・使用の実態がなくなれば、建物全体として空家法上の「空家等」に該当し得ます。

Q. 区分所有者の一人と連絡が取れません。何もできませんか?
A. 緊急の小規模な補修(保存行為)であれば他の所有者が単独で行えます。ただし本格的な取り壊しなどは合意形成が必要になるため、早めに専門家(不動産会社・弁護士・自治体窓口)に相談するのが現実的です。

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参考

※お住まいの自治体に長屋を対象にした独自の空家条例があるかどうかは、各市区町村の空き家対策担当窓口にご確認ください。

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