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「賃料3万円空室が満室に」障害福祉サービス活用術

不動産管理

四谷 義仁

筆者 四谷 義仁

不動産キャリア20年

飲食店専門の不動産会社「株式会社不動産スペース」代表。不動産キャリア20年。大阪・京都・兵庫エリアを中心に、店舗仲介・管理・閉店サポートから収益物件の売買まで手がける。これまで数多くのカフェ・居酒屋・ラーメン店などの開業支援を行い、実際の経営数値や現場課題をもとに"リアルな店舗経営の見える化"を発信中。現場の泥臭さも、数字のシビアさも知る「現実派不動産屋」

大阪市内では家賃の上昇が続いていると言われますが、実はそれは「新築・築浅」物件に限った話であることが多く、築古物件は据え置きのままというケースが少なくありません。特にバブル期に建てられた「3点ユニット」の物件は、少子化と競合の影響を受けやすく、なかなか賃料を上げられずに苦戦しているオーナー様も多いのではないでしょうか。そんな中、賃料3〜4万円で10室以上空いていた物件が、ある取り組みによってわずか1か月で満室になり、しかも賃料までアップした事例が出てきています。今回は、オーナー様の間で話題になり始めている「障害福祉サービス」を活用した空室対策についてご紹介します。

大阪の家賃上昇は「新築・築浅」限定、築古は据え置きが現実

大阪府内の家賃相場は、この数年上昇傾向が続いています。ただし、この上昇はすべての物件に等しく起きているわけではありません。実際に、大阪メトロ中央線「緑橋」駅では単身者向け住戸の家賃相場が1年で127.4%まで上昇し、玉造駅(天王寺区)も118.3%上昇するなど、家賃相場の急騰が話題になりました(大東建託パートナーズ調べ)。ただしこれは新規に貸し出される「募集家賃」の数字で、新築・築浅やリフォーム済みの物件から順に相場を押し上げている一方、築30年前後で手を入れていない物件は、周辺相場ほど家賃が上がっていないことも少なくないと指摘されています。詳しくは以前の記事「大阪「緑橋」駅の家賃が1年で127%に急騰 家主の見直し術」でも解説しています。全国の県庁所在地を対象にした別の調査でも、新築の家賃が高い一方で築古物件の家賃は下がり、その差が年々拡大していると報告されています(健美家調べ)。つまり、新築・築浅の物件は家賃が上がりやすい一方で、築古物件は入居者に選ばれにくく、家賃を上げるどころか空室が長期化しやすい、という状況が広がっているのです。

バブル期の「3点ユニット」物件が特に厳しい理由

なかでも厳しい状況に置かれやすいのが、バブル期(1980年代後半〜1990年代前半)に建てられた、お風呂・トイレ・洗面が1つの空間にまとまった「3点ユニット」の物件です。当時は多く建てられたタイプですが、今の入居者層、特に若い世代からは敬遠されがちな間取りです。加えて、少子化で入居者の母数そのものが減っているうえ、周辺にはより設備の整った新築・築浅の物件が増え続けているため、競合に押される形で賃料を上げるどころか、据え置き・値下げを迫られる物件も珍しくありません。




空室対策の選択肢がまた一つ減った「特区民泊」新規停止

空室対策として民泊の活用を検討されたオーナー様も多いと思いますが、大阪市では特区民泊の新規受付が2026年5月29日をもって終了しました(大阪市発表)。すでに認定を受けている施設は引き続き営業できますが、これから新たに特区民泊を始めるという選択肢は取れなくなっています。詳しい制度の変化については、以前の記事「大阪市「特区民泊」新規停止、空室活用オーナーの次の一手」でも解説していますので、あわせてご覧ください。

民泊という選択肢が狭まったことで、築古物件のオーナー様の間では、これに代わる新しい空室対策として「障害福祉サービス」への注目が高まっています。

新たな選択肢として注目される「障害福祉サービス」誘致

ここで言う障害福祉サービスとは、主に「グループホーム(共同生活援助)」と呼ばれる事業を指します。障がいのある方が、地域の中で少人数(数名程度)で共同生活を送るための住まいで、日常生活のサポートを行う世話人・支援員が常駐するのが特徴です。法律上は障害者総合支援法に基づく事業で、運営には都道府県・政令市などの指定を受けた社会福祉法人・NPO法人・株式会社などがあたります。

このグループホームですが、大阪府内では「出店したいけれど、条件に合う物件が見つからない」と困っている事業者が多くいます。地域によっては、障がいのある方の受け皿となるグループホームそのものが不足しているとの指摘もあり、事業者側の物件探しは決して簡単ではありません。つまり、築古で賃貸として決まりにくくなっている物件と、物件を探している福祉事業者との間には、需要と供給のミスマッチが生まれているのです。ここに、築古物件のオーナー様にとっての新しいチャンスがあります。

実際にあった事例:賃料3〜4万円の空室が1か月で満室に

実際に、障害福祉サービスの物件仲介を専門に扱う同業者から伺った話では、大阪市西淀川区にあった築古物件で、10戸の空室に対して消防法上の避難経路の確保など必要な設備を整えたうえで障害福祉サービス事業者への誘致を進めたところ、わずか1か月ほどで満室になり、賃料もアップしたそうです。個人の入居者を1室ずつ探すのではなく、事業者にまとめて借りていただく形にできれば、空室が一気に埋まるだけでなく、賃貸経営の安定にもつながりやすくなります。

収支シミュレーション:10室の空室対策で生まれる2つの選択肢

具体的に、賃料3万円の部屋が10室空室になっていたケースで試算してみましょう。

項目 内容
空室10室の家賃 障害福祉サービス事業者への誘致で、1室あたり賃料4万円で満室に
月間の収入増 4万円×10室=月間40万円
年間の収入増 40万円×12ヶ月=年間480万円



空室だった10室が生み出すこの年間480万円は、単なる「収入が増えた」という以上の意味を持ちます。この収益力そのものが、そのままオーナー様の選択肢の広がりにつながるからです。

選択肢1:保有して、年間480万円の収入を得続ける

このまま物件を保有し続ければ、障害福祉サービス事業者との契約が続く限り、年間480万円の安定した賃料収入をキャッシュフローに組み込むことができます。

選択肢2:売却して、まとまった資金を得る

収益物件の売却価格は、簡易的には「年間家賃収入 ÷ 利回り」で試算されることが多く、この年間480万円の収入増を利回り7%で売却価格に換算すると、想定売却価格は約6,857万円(480万円 ÷ 7%)という計算になります。

【ポイント】
つまり、「保有して年間480万円の収入を得続ける」か、「売却して約6,857万円を手にする」か――障害福祉サービスへの誘致によって、オーナー様はこの2つの選択肢を持てるようになります。何もしなければ、この選択肢自体が生まれません。空室を放置するのではなく、まずは積極的な空室対策を打つことが、オーナー様自身の選択肢を広げる第一歩になります。

※上記はあくまで簡易的な試算であり、実際の売却価格は立地・築年数・建物の状態・市場動向など様々な要因によって変動します。具体的な売却をご検討の際は、個別に不動産会社へご相談ください。

検討する際に確認しておきたいポイント

障害福祉サービスへの転用を検討する際は、次のような点を事前に確認しておくことをおすすめします。

  • 建物の用途変更や、消防法上の要件(避難経路の確保など)を満たせるかどうか
  • 事業用の賃貸借契約として、契約期間や原状回復の考え方をどう整理するか
  • 近隣住民への説明や合意形成をどう進めるか
  • 改修が必要な場合、自治体の補助制度が使えるかどうか

このあたりは物件ごとに事情が異なり、専門的な確認が必要になる部分も多いため、早い段階で不動産会社や行政書士など専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

空室対策・障害福祉サービス誘致のご相談はこちら

賃料が上がらず空室にお悩みのオーナー様、バブル期の3点ユニット物件の活用にお困りのオーナー様は、株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。弊社では、オーナー様の収益アップのために、こうした障害福祉サービス事業者をはじめとする様々な分野の専門業者とも情報交換できる関係にあり、物件やご状況に応じたご提案のバリエーションを豊富にご用意しています。「うちの物件には何が合うか分からない」という段階でも構いませんので、お気軽にご相談ください。

株式会社不動産スペース

06-6195-8209

お問い合わせフォームはこちら

よくある質問

Q. 障害福祉サービスとは具体的にどんな事業ですか?
A. 主に「グループホーム(共同生活援助)」を指し、障がいのある方が地域で少人数で共同生活を送るための住まいです。障害者総合支援法に基づいて運営されます。

Q. どんな物件でも障害福祉サービス向けに転用できますか?
A. 一戸建て・アパート・マンションいずれも対象になり得ますが、消防法上の要件や自治体の基準を満たす必要があるため、事前の確認が欠かせません。

Q. 入居者が住んでいる状態でも、途中から転用を検討できますか?
A. 空室が生じたタイミングから段階的に進めることも可能です。まずは空室部分から事業者と協議を始めるのが一般的です。

Q. 特区民泊の新規受付が終了した後、他に空室対策の選択肢はありますか?
A. 住宅宿泊事業法に基づく民泊(年間180日まで)などもありますが、稼働日数に上限があるため、長期契約が見込める障害福祉サービスも有力な選択肢です。

Q. グループホームとして貸し出す場合、個人向け賃貸より家賃を高く設定できますか?
A. 物件や地域の需給状況によりますが、事業者による法人契約でまとまった室数を借りていただくことで、賃料アップにつながった事例があります。

Q. 売却を考えていない場合でも、この対策を検討する意味はありますか?
A. あります。空室が埋まり家賃収入が安定すること自体が本来の目的で、売却時の価値向上はあくまで副次的なメリットです。

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参考

※障害福祉サービス(グループホーム等)の開設には自治体ごとの基準・手続きがあり、内容は今後変更される可能性もあります。具体的な検討にあたっては、最新情報を自治体や専門家にご確認ください。

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