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飲食店M&A3割増、倒産する前に「売る」という選択肢

飲食経営

四谷 義仁

筆者 四谷 義仁

不動産キャリア20年

飲食店専門の不動産会社「株式会社不動産スペース」代表。不動産キャリア20年。大阪・京都・兵庫エリアを中心に、店舗仲介・管理・閉店サポートから収益物件の売買まで手がける。これまで数多くのカフェ・居酒屋・ラーメン店などの開業支援を行い、実際の経営数値や現場課題をもとに"リアルな店舗経営の見える化"を発信中。現場の泥臭さも、数字のシビアさも知る「現実派不動産屋」

2026年上半期、飲食業界のM&Aは62件で前年比3割増

2026年1〜6月に飲食業界で起きたM&A(会社の合併・買収)は62件で、前年より29.1%増え、過去最多ペースで推移しています(M&Aプロパティーズ調べ)。同じ時期、飲食店の倒産も473件と過去最多を更新しましたが(帝国データバンク調べ)、その裏側で「潰れる前に売る」という決断をする経営者が着実に増えているのです。

本記事は、2026年8月14日にお伝えした「大阪最低賃金1231円へ 全国飲食店倒産473件、閉店も選択肢に」の続報です。前回は倒産件数473件と「居抜き売却」という選択肢をご紹介しましたが、今回はその後に判明した「M&A(会社の合併・買収)が実は3割も増えている」という新しいデータに焦点をあてます。

「倒産」と「M&A」、実は裏表の関係

「M&A」というと大企業のニュースに聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと「お店や会社を、まるごと他の会社に譲る(売る)こと」です。今回わかったのは、2026年1〜6月のM&A62件のうち、半数の31件が「戦略的売却型」だったことです。これは、赤字で仕方なく手放すのではなく、「まだ元気なうちに、条件の良い相手に事業を託す」前向きな売却を指します。次に多いのが「事業承継型」の22件で、後継者がいない店主が、店の名前や常連客ごと引き継いでもらうケースです(M&Aプロパティーズ調べ、THE GOLD ONLINE 2026年8月29日付)。

ポイント:「倒産」は資金が尽きた後の結果ですが、「戦略的売却」は資金と体力が残っているうちの前向きな決断です。同じ「お店を手放す」でも、いつ動くかで得られる条件がまったく違います。「居抜き」「M&A」「転貸」の具体的な違いについては、飲食店を閉める前に知っておきたい「居抜き・M&A・転貸」の違いを解説!でも詳しく比較していますので、あわせてご覧ください。

2026年1〜6月の飲食業M&A内訳 件数 割合
戦略的売却型(生産性向上のための売却) 31件 約5割
事業承継型(後継者難への対応) 22件 約35%
ファンド売却型 6件 約10%
業務資本提携・経営統合型 2件 約3%

(出典:M&Aプロパティーズ調べ、THE GOLD ONLINE 2026年8月29日付記事より)

大阪の飲食店経営者にとっての意味

総務省の消費者物価指数では、6月の食料品(生鮮品を除く)と生鮮食品がいずれも前年同月比3%を超える上昇となっており(総務省統計局調べ)、原価高はまだ続いています。帝国データバンクによると、倒産のうち居酒屋を中心とする「酒場・ビヤホール」が125件で最多、ラーメン店や町中華などを含む「中華・東洋料理店」が91件で、いずれも過去最多を更新しました。大阪・ミナミやキタの繁華街でも同じ業態の店舗は多く、対岸の火事ではありません。M&Aや居抜きでの事業譲渡は、東京の大企業だけの話ではなく、個人経営の1店舗でも「店舗ごと・常連客ごと引き継いでもらう」形で十分に選択肢になります。採算が厳しくなってから慌てて相談するより、まだ数字に余裕があるうちに、閉店・移転・譲渡も含めた選択肢を並べて考えてみることをおすすめします。

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よくある質問

Q. 「戦略的売却型」のM&Aと、単なる廃業はどう違うのですか?
A. 廃業は店を畳んで終わりですが、戦略的売却は店舗や設備、時には従業員やレシピごと他社・他店に引き継いでもらう方法で、資金の一部を回収できる可能性があります。

Q. 個人経営の小さな飲食店でもM&Aや事業譲渡はできますか?
A. 可能です。居抜きでの店舗譲渡も広い意味でのM&A・事業承継の一種で、大阪でも個人店同士の引き継ぎ事例は珍しくありません。

Q. 倒産と戦略的売却、どちらが良い条件で店を引き継げますか?
A. 一般的に、資金や体力が残っているうちに動く戦略的売却のほうが、設備や立地の価値を評価してもらいやすく、条件面で有利とされています。

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