
「創業の動機」の書き方!なぜ飲食店かを3つの問いで
「脱サラして飲食店をやりたい、というだけでは動機が弱くて、融資の面談で落とされるのでは」。会社員から飲食店を始める方が、創業計画書の最初の欄でつまずく不安です。結論から言うと、動機の欄は、立派な言葉を並べる欄ではありません。「きっかけ」「なぜ飲食店か」「なぜ今、自分がやるのか」の3つの問いに、自分の言葉で答える欄です。日本政策金融公庫(公庫)の「創業計画書セルフチェックリスト」でも、創業の動機は「創業への熱意や創業を志すまでの経緯を記載しているか」を確かめる項目として挙げられています(日本政策金融公庫)。この記事では、会社員から飲食店を始めるAさん(架空)の例で、3つの問いの答え方を見ていきます。
この講座の位置づけ: 創業計画書の第1欄「創業の動機」を書く回です(第12回)。開業までの流れでいうと、物件を探すよりも前、いちばん最初にあたる作業です。数字の欄(売上・資金)を先に学んできましたが、計画書の紙の上では、いちばん上に書く欄です。
前回までの内容は、全体の見取り図が公庫の創業計画書、数字が苦手でも書ける順番、売上の作り方が飲食店の売上は掛け算で作る!客単価×席数×回転数×日数、資金の考え方が開業資金は設備と運転の2つに分ける!Aさんは1,040万円です。
全体の流れ
動機の欄で見られること
3つの問いに答える
書いてはいけないこと
動機を物件探しにつなげる
①まず、動機の欄は何を見られているのか
公庫の様式は、公庫の各種書式ダウンロード(国民生活事業)で手に入ります。飲食店ではなく別の業種ですが、9業種の記入例も同じページに載っています。記入例の文章や数字は、ここには転載しません。実際の様式と記入例は、必ず公庫のページでご確認ください。
動機の欄は、一言でいうと「この人は、なぜこの事業を始めるのか」が伝わるかどうかを見る欄です。私の見方では、読む側が知りたいのは、立派な理想よりも、話の筋が通っているかです。きっかけがあって、飲食店を選んだ理由があって、今やる理由がある。この3つがつながっていれば、言葉が派手でなくても伝わります。
反対に、書きにくくなる原因は、次の3つです。
- 「料理が好きだから」だけで終わる(好きなことと、お金を借りて店を開くことの間が空いている)
- 「会社を辞めたい」「自由になりたい」が中心になる(飲食店でなくてもよい理由になってしまう)
- あとで面談で聞かれても、答えられないことを書く
②3つの問いに答える(Aさんの場合)
Aさん(架空)は、大阪市内で10坪・20席の食堂を開く会社員です。説明用の例として、3つの問いへの答えを並べます。
| 問い | Aさんの答え(架空の例) |
|---|---|
| ① きっかけは何か | 勤め先の周りで、昼休みに落ち着いて食べられる定食の店が少なく、いつも並んで急いで食べていた。帰り道にも、一人でゆっくり夕食をとれる店が少ないと感じていた |
| ② なぜ飲食店なのか | 自分が感じた「困りごと」を、店という形で解決できると考えた。食事を出して、その場でお客さんの反応が見える仕事がしたい |
| ③ なぜ今、自分がやるのか | 昼と夜の売上、必要な資金、返済の見通しまで、数字に直した計画を作った。候補にしたい立地も、昼と夜に見に行った |
ポイントは、①と③の間に「数字」があることです。このシリーズで作ってきたAさんの計画(昼の客単価1,000円・夜の客単価3,500円、月の売上190万円、必要な資金1,040万円)は、動機を支える材料です。「こういう人に、こういう価格で出したい」という思いが、売上の組み立てと同じ向きになっていると、話に筋が通ります。
(Aさんの数字と経歴は、説明用の架空の例です。業界の標準ではありません)
問い①の答えが見つからないときは
きっかけは、大きな出来事でなくて構いません。自分が客として感じた不便や不満も、立派なきっかけです。次の3つを紙に書き出してみてください。
- 会社員時代、飲食店で「ここがこうだったらいいのに」と思ったこと
- 自分が何度も通った店と、その理由
- 周りの人から「作ってほしい」と言われたことがあるもの
3つのうち、どれか1つでも書ければ、それが出発点になります。
問い②の「飲食店でなくてもよい」を避ける
「自由になりたい」「人に使われたくない」は、本音かもしれません。ただ、それだけでは、飲食店である理由になりません。飲食店でなければできないことを一つ書いてください。たとえば、「その場で食べてもらい、反応が見える」「毎日同じ人が顔を出してくれる」などです。
問い③は、これまでの回の数字でつなげる
「今やる理由」は、気持ちだけでなく準備ができていることで伝わります。このシリーズで学んできた数字を、短く並べてみます。
- 売上は、客単価×席数×回転数×営業日数で作った
- 売上から原価や経費を引いて、利益が残るかを確かめた
- 開業に必要な資金を、設備資金と運転資金に分け、自己資金と借入で足りるかを確かめた
数字を出していない状態で「今がチャンスです」と書くより、数字を出した上で書くほうが、読む側に伝わります。
③書いてはいけないこと、気をつけること
動機は、あとで面談で聞かれる内容です。書いたことは、自分の口で説明できる範囲にとどめてください。
- 事実を盛らない: 飲食店で働いた経験がないなら、ないと分かる書き方で構いません。経験の書き方は、次回の「経営者の略歴」の回で見ます。
- 他人の言葉を借りない: 本や記事の立派な言い回しを写すと、面談で質問されたときに答えにくくなります。
- 店の特徴と動機をつなげる: 動機で「昼に落ち着いて食べられる店」と書いたなら、計画書の商品・価格・営業時間も同じ方向を向いているか確認します。
なお、公庫は事業資金の相談窓口(事業資金相談ダイヤル)を設けています。動機の書き方で迷ったときは、公庫のページで案内されている窓口や、お住まいの地域の商工会議所に相談する方法もあります。電話番号と受付時間は変わることがあるため、各種書式ダウンロード(国民生活事業)のページで最新の案内をご確認ください。融資が受けられるかどうかは、動機だけで決まるものではなく、公庫の審査によります。
④動機が決まると、物件探しが楽になる
動機の欄に「昼に落ち着いて食べられる店」と書けたなら、立地の条件も決まります。昼は近くの会社に勤める人が歩いている場所、夜は仕事帰りの人が通る場所です。大阪市内は、キタやミナミのような繁華街と、オフィス街、住宅街とで、人の流れが昼と夜で大きく違います。動機がはっきりしているほど、見るべき物件の数が減ります。物件を探す前の条件づくりは、飲食店の家賃は売上のいくらまで?内見前に決める3条件でまとめています。また、大阪の開業全体の費用と流れは、【2026年最新】大阪の飲食店開業ガイド|初期費用と物件探し方も参考になります。
今日のワーク
- 会社員時代に「飲食店でこうだったらいいのに」と思ったことを、3つ書き出す
- その中から一つ選び、「なぜ飲食店でそれができるのか」を2文で書く
- 自分で出した売上・資金の数字を見て、「だから今、始められる」と言える点を1つ書く
- 書いた文章を声に出して読み、自分の口で説明できるか確かめる
- ☐ きっかけを3つ書き出した
- ☐ 「飲食店でなければできないこと」を1つ書いた
- ☐ 自分の数字(売上・資金)とつなげて書いた
- ☐ 声に出して読み、盛った部分がないか確認した
- ☐ 公庫の記入例(別業種を含む)を、書き方の参考に読んだ
次回予告
次回は、第2欄の「経営者の略歴等」です。飲食の経験がない方が、前職の経験をどう書くか。事実を盛らずに、飲食店の運営につながる点を見つける方法を見ていきます。
ここまでで書けるようになった項目
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 全体の見取り図 | 第1回でわかった |
| 売上高(月) | 第2回で掛け算で作れるようになった |
| 売上原価・経費・利益(月) | 第3回で引き算で出せるようになった |
| 家賃の上限と、物件探しの3条件 | 第4回で決められるようになった |
| 必要な資金(設備・運転)と調達方法の考え方 | 第5回で足し算で組み立てられるようになった |
| 契約のときに動くお金 | 第6回で5種類に分けて数えられるようになった |
| 内装費の見積書の読み方 | 第7回で項目に分けて比べられるようになった |
| 営業許可の流れ(事前相談→申請→検査) | 第8回で順番と時期がつかめた |
| 消防署への届出(相談→使用開始届) | 第9回で順番と時期がつかめた |
| 従業員の欄と、人件費の「時間」への直し方 | 第10回で考え方がつかめた |
| 販売ターゲット・販売戦略と、集客の時期 | 第11回で考え方がつかめた |
| 創業の動機(第1欄) | 今回、3つの問いで書けるようになった |
| 略歴、お借入の状況など | これから順に学ぶ |
計画づくり・物件探しのご相談はこちら
大阪で飲食店の開業をご検討中の方、居抜き・スケルトンの貸店舗をお探しの方は、株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。「動機と立地がつながる物件を探したい」「売上の数字を持って、家賃と席数を相談したい」「創業計画書を作る前の資金計画から相談したい」といったご相談にも対応します。物件を探す前の資金計画やエリア選びの段階からのご相談も承っております。
TEL:06-6195-8209
よくある質問
Q. 飲食店の経験がなくても、創業の動機は書けますか?
A. 書けます。経験の有無より、きっかけ・飲食店を選んだ理由・今やる理由の筋が通っているかが大切です。経験の書き方は次回扱います。
Q. 「脱サラして自由になりたい」は動機に書いてもいいですか?
A. 本音でも、それだけでは飲食店である理由が伝わりません。飲食店でなければできないことを一つ添えて書いてください。
Q. 動機が弱いと、融資は通らないのでしょうか?
A. 動機だけで決まるものではなく、審査は公庫が行います。数字の計画と筋の通った説明をそろえることが大切です。詳細は公庫の窓口へ。
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- 開業資金は設備と運転の2つに分ける!Aさんは1,040万円
- 【2026年最新】大阪の飲食店開業ガイド|初期費用と物件探し方
参考
- 創業計画書セルフチェックリスト(2023年版)|日本政策金融公庫
- 各種書式ダウンロード(国民生活事業)|日本政策金融公庫
- 第1回 創業計画書 はじめの一歩|START 政策金融公庫の創業支援
- 【2026年最新】大阪の飲食店開業ガイド|初期費用と物件探し方|店舗市場
※Aさんの数字・経歴は説明用の架空の例です。公庫の様式、記入例、相談窓口、融資の条件は変更されることがあり、最新情報は公庫のページでご確認ください。
