
開業資金は設備と運転の2つに分ける!Aさんは1,040万円
「開業にはいくら要るのか、さっぱり見当がつかない」。多くの人が最初にぶつかる壁です。結論から言うと、開業資金は「店をつくるお金(設備資金)」と「店を回すお金(運転資金)」の2つに分けると、足し算だけで見えてきます。この回では、Aさん(架空)の数字で、創業計画書の「必要な資金」の欄の考え方を追います。
必要な資金は「2つの箱」で数える
設備資金
(店をつくる)
運転資金
(店を回す)
の合計
| 箱 | 中身 | 特徴 |
|---|---|---|
| 設備資金 | 内外装工事、厨房機器、什器・備品、保証金など | 開店前に一度払う。形が残る |
| 運転資金 | 仕入れ、人件費、家賃、光熱費など、開店後の支払い | 売上が入るまでの間の「つなぎ」 |
家で例えるなら、設備資金は「家具と引っ越し代」、運転資金は「引っ越してから、収入が安定するまでの生活費」です。店は開けた日から黒字になるとは限らないので、この「つなぎ」を最初から数えておきます。
Aさんの必要な資金を足してみる(架空の例です)
以下は説明用の架空の例で、業界の相場や基準ではありません。Aさんは大阪市内の10坪・20席の食堂です。
| 区分 | 項目 | 金額 |
|---|---|---|
| 設備資金 | 内外装工事 | 400万円 |
| 設備資金 | 厨房機器 | 150万円 |
| 設備資金 | 什器・備品 | 80万円 |
| 設備資金 | 保証金(物件を借りるときに預けるお金) | 100万円 |
| 設備資金の計 | 730万円 | |
| 運転資金 | 開店後の約2か月分の支出 | 310万円 |
| 必要な資金の合計 | 1,040万円 |
運転資金の310万円は、毎月の支出(原価57万円+人件費55万円+家賃18万円+利息2万円+その他25万円=157万円)の約2か月分、157万円 × 2か月 = 314万円を、きりのよい金額に丸めたものです。「2か月分」は、この講座の説明のための置き方です。何か月分持つべきかは、別の回で扱います。
集めるお金(調達方法)とピッタリ合わせる
計画書の「必要な資金」の欄は、使うお金(上の表)と、集めるお金の2つの表でできています。この2つの合計は、必ず一致させます。
| 調達方法 | 金額 |
|---|---|
| 自己資金(自分で貯めたお金) | 340万円 |
| 公庫からの借入 | 700万円 |
| 合計 | 1,040万円(必要な資金と一致) |
340万円 + 700万円 = 1,040万円。ここで注意したいのは、借入の700万円は、毎月の利益から返していくことです。前々回の利益33万円(売上190万円のとき)は、この返済と生活費に回るお金でした。借りる額を増やすほど、毎月の返済も増えます。
見落としやすい費用
異業種から来た人が、よく数え忘れるのが次のような費用です。
- 開店前の家賃:工事の間も、家賃が発生することがあります(契約条件で変わります。契約時のお金は次回以降で扱います)
- 食材・資材の最初の仕入れ:開店初日から必要です
- 開店前に雇うスタッフの人件費:研修や試作の期間の分
- 許可・届出にかかる費用、広告・開店告知の費用
- 予備のお金:工事の追加、機器の故障など、見積もりより増える場合に備える
見積もりは「一式」になっていることが多いので、何が含まれ、何が含まれないかを聞いておくと、後からの増額を防げます。スケルトン(内装が何もない状態)では、ダクトやトイレで費用が大きく動くことがあります。詳しくは「スケルトン」の落とし穴、ダクト・トイレで100万円差をご覧ください。居抜きとスケルトンの費用の差は、飲食店「居抜き」と「スケルトン」費用相場を徹底比較で整理しています。
大阪で気をつけたいこと
大阪市内でも、ミナミやキタなど人通りの多いエリアと、駅から少し離れたエリアでは、家賃も保証金も違ってきます。物件が決まると、設備資金の数字は一気に具体的になります。だからこそ、先に「全部でいくら」を紙に書いておくと、物件の条件が計画に合うかをすぐに判断できます。光熱費など毎月の固定費の見当は、飲食店の光熱費っていくら?10坪居酒屋の電気・ガス・水道代も参考にしてください。
なお、開業にかかる費用の平均や中央値は、日本政策金融公庫総合研究所の調査で毎年公表されています。ただし、業種や店の広さで大きく変わるため、平均を自分の計画の数字として使わず、自分の見積もりで積み上げることが大切です。
今日のワーク
- 設備資金の項目(工事、厨房機器、什器・備品、保証金)を書き出し、見当の金額を入れる(幅があってよい)
- 毎月の支出(原価・人件費・家賃・利息・その他)を足して、その2か月分を運転資金の仮の数字にする
- 設備資金と運転資金を足して「必要な資金の合計」を出す
- 自己資金と借入の欄を作り、合計が一致するか確かめる
- ☐ 必要な資金を「設備資金」と「運転資金」の2つに分けた
- ☐ 見積もりの「一式」の中身を、確認する項目に挙げた
- ☐ 使うお金と集めるお金の合計を一致させた
- ☐ 予備のお金を、あらかじめ入れてある
次回予告
次回は、物件を借りるときに最初に出ていくお金、つまり保証金・礼金・仲介手数料・前家賃・造作譲渡料を見ていきます。設備資金のうち「契約のお金」を、より具体的に数えられるようになります。
ここまでで書けるようになった項目
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 全体の見取り図 | 第1回でわかった |
| 売上高(月) | 第2回で掛け算で作れるようになった |
| 売上原価・経費・利益(月) | 第3回で引き算で出せるようになった |
| 家賃の上限と、物件探しの3条件 | 第4回で決められるようになった |
| 必要な資金(設備・運転)と調達方法の考え方 | 今回、足し算で組み立てられるようになった |
| 動機、略歴、お借入の状況など | これから順に学ぶ |
出店・開業物件探しのご相談はこちら
大阪で飲食店の開業をご検討中の方、居抜き・スケルトンの貸店舗をお探しの方は、株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。物件を探す前の資金計画やエリア選びの段階からのご相談も承っております。「全部でいくら要るのか」「この予算で借りられる物件はあるか」といった整理にも対応します。
TEL:06-6195-8209
よくある質問
Q. 開業資金は、結局いくら用意すればいいですか。
A. 業種や広さで大きく変わるため、決まった額はありません。設備資金と運転資金を自分の見積もりで積み上げ、予備も入れて出します。
Q. 運転資金って、何のためのお金ですか。
A. 売上が安定して入るまでの、仕入れ・人件費・家賃などの支払いに充てるお金です。開店してすぐは、思ったほど売上が伸びないこともあります。
Q. 自己資金が少ないと、もう開業は無理ですか。
A. 一概には言えません。必要な資金と借入の返済の見通しを、数字で示せるかが大切です。代替策は別の回で扱います。
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参考
※Aさんの数字は説明用の架空の例です。融資の条件・様式は変更されることがあります。最新情報は公庫の公式サイトでご確認ください。
