
飲食店の開店前の集客は開業90日前から!Aさんは月900人
「店を開けたら、お客さんは勝手に来てくれるのかな」「宣伝って、いつから何をすればいいの?」。会社員から飲食店を始める方が、開店前にいちばん不安になるところです。結論から言うと、集客は「開店してから」ではなく「開店の約3か月前」から始められます。Googleのヘルプでは、開業日を登録してオーナー確認を終えると、開業日の90日前からお店のプロフィールがGoogleに表示されるとされています(Googleビジネスプロフィール ヘルプ)。いまは、TikTokやInstagramで知って、食べログやGoogleで確かめてから行く、という流れが主流で、1つの媒体だけでは通用しません。この記事では、会社員から飲食店を始めるAさん(架空)の売上190万円を「来てもらう人数」に直して、何をいつやるかを順番に見ていきます。
この講座の位置づけ:創業計画書の第3欄「取扱商品・サービス」のうち、セールスポイント・販売ターゲット・販売戦略を書くための回です(第11回)。開業までの流れでいうと、営業許可の申請(開店2〜3週間前)よりも前から、開店後の約3か月までにあたります。
前回は飲食店で人を雇う手続き!大阪の最低賃金は1,231円でした。売上の組み立ては飲食店の売上は掛け算で作る!客単価×席数×回転数×日数、全体の見取り図は公庫の創業計画書、数字が苦手でも書ける順番をご覧ください。
全体の流れ
来てほしい人を
決める
月の売上を
「人数」に直す
Googleに登録
(開店の約3か月前〜)
開店直前の準備
(あいさつ・発信)
開店後の約3か月
①まず「誰に来てほしいか」を決める
創業計画書には、お客さんをどう呼ぶかを書く欄があります。様式は公庫の各種書式ダウンロード(国民生活事業)で確認できます(記入例は業種別に掲載されています)。記入例を見ると、「すでに付き合いのあるお客さんを軸に、どうやって広げるか」を具体的に書く形になっています。数字や文章の転載はしませんので、実際の様式と記入例は公庫のページでご確認ください。
「誰でも来てください」では、計画書でも、実際の宣伝でも、伝わりません。Aさん(架空)は次のように決めました。説明用の例です。
| 時間帯 | 来てほしい人 | 理由(Aさんの考え) |
|---|---|---|
| 昼(客単価1,000円) | 近くの会社に勤める人 | 店の周りにオフィスが多い想定 |
| 夜(客単価3,500円) | 近所に住む人、仕事帰りの人 | 家と駅の間に店がある想定 |
大阪市内は、キタやミナミのような繁華街と、オフィス街、住宅街とで、昼と夜の人の流れが大きく違います。物件を選ぶ前に、昼と夜で、その場所を誰が歩いているかを、曜日を変えて見に行くことが大切です。家賃の上限や内見前の条件は飲食店の家賃は売上のいくらまで?内見前に決める3条件でまとめています。
②売上190万円を「来てもらう人数」に直す
集客は、気持ちの話にしないで、数字にするとやることが見えます。第2回で作った売上の掛け算を、割り算で戻してみます。
- 昼:売上50万円 ÷ 客単価1,000円 = 500人(1か月)
- 夜:売上140万円 ÷ 客単価3,500円 = 400人(1か月)
- 合計:500人 + 400人 = 900人(1か月)
- 1日あたり:900人 ÷ 営業25日 = 36人
| 時間帯 | 月の売上 | 客単価 | 月のお客さん(延べ) | 1日あたり |
|---|---|---|---|---|
| 昼 | 50万円 | 1,000円 | 500人 | 20人 |
| 夜 | 140万円 | 3,500円 | 400人 | 16人 |
| 合計 | 190万円 | ― | 900人 | 36人 |
(Aさんの数字は説明用の架空の例です)
「延べ」とは、同じ人が2回来たら2人と数える数え方です。Aさんの計画は、席が20席ある店に、1日36人来てもらうことが前提になっています。
ここで、リピーター(何度も来てくれる人)の役割を考えます。たとえば、週に1回来てくれる常連が30人いると、30人 × 4週 = 月120人です。900人のうち、120 ÷ 900 = 約13%です。この割合は説明用の仮の数字ですが、常連が増えるほど、毎月ゼロから呼ぶ人数が減ることは確かです。開店したばかりの時期は常連がいないので、知ってもらう仕事が多くなります。
いまのお客さんは「知る」と「確かめる」を別の場所でする
私が見ているいまの集客の流れは、次のとおりです。まずTikTokやInstagramで、お店を知ります。そのあとで食べログやGoogleを開き、メニューや評価を確かめてから来店を決めます。
TikTok・Instagram
食べログ・Google
(メニュー・評価)
つまり、インスタだけ、食べログだけ、といった1つの媒体だけでは通用しない時代です。SNSで見て気になっても、検索したときにメニューや評価が見つからなければ、お客さんは別の店に行ってしまいます。逆に、食べログやGoogleが整っていても、知ってもらう入口がなければ、検索すらされません。これは当社の見方であり、統計に基づく数字ではありません。
Aさんの月900人を呼ぶには、「知る場所」と「確かめる場所」の両方を、開店前から用意する必要があります。どの媒体を使うかは、来てほしい人(①)によって変わります。会社員が多い昼と、近所の人が中心の夜では、見ている媒体も違うかもしれません。
③まず「確かめる場所」のGoogleに、自分でお店を登録する(開店の約3か月前から)
飲食店を探すとき、多くの人は「地名 + ランチ」のように、スマートフォンで調べます。そのとき地図に出てくるのが、Googleの「ビジネスプロフィール」です。Googleのヘルプでは、お店の追加と申請は無料とされています(Googleビジネスプロフィール ヘルプ)。
開店前のお店の場合は、次のような仕組みです(Googleビジネスプロフィール ヘルプ「開業日を追加する」)。
- プロフィールの「開業日」に、年と月を入力して保存する。1年先までの日付を指定できる。
- 開業日を入れて、オーナー確認(本当にお店の持ち主かどうかの確認)を終えると、開業日の90日前からプロフィールがGoogleに表示される。
- 開業日の90日前から、投稿や写真で、お客さんとやり取りができる。
- 正式に開業するまでは、ほかのユーザーが情報の編集を提案したり、クチコミや写真を投稿したりすることはできない。
- 開業すると「最近開店したお店」というタグが90日間表示される。
確認の方法は、動画の録画やビデオ通話などが案内されています。動画で確認する場合は、お店の看板など、名前と住所がわかるものを求められることがあります。看板がまだ付いていない時期もありますので、確認の方法と必要なものは、必ず最新のヘルプで確かめてください。工事が進んで、お店の外観が見えるようになってから確認する、という順番になる場合もあります。
登録を急ぐ理由は、地図の上のお店の情報が、自分以外の人も追加できてしまうからです。開店前に、自分で正しい住所・電話番号・営業時間を入れておけば、「閉店中と表示される」「違う営業時間が出る」といった行き違いを防ぎやすくなります。
④開店の1〜2週間前にやっておくこと
営業許可の申請は開店の2〜3週間前、消防への届出は使用開始の7日前までです。流れは飲食店の営業許可の取り方!大阪市は開店2〜3週間前にと「飲食店の消防届出」大阪市は工事前に相談、開始7日前に届出で見てきました。この手続きと並べて、集客の準備も進めます。
- 近隣へのあいさつ:隣や上下階のお店、ビルの管理会社に、開店日と営業時間を伝えます。搬入の時間やゴミ出しのルールは、ビルごとに決まりがあります。私の見方では、開店前にこのルールを聞いておくと、開店後のやり取りが円滑になります。
- お店の発信:店名、メニュー、写真、開店日を、TikTokやInstagramなどのSNSと、Googleの地図で知らせます。見た人が次に開く食べログやGoogleでも、同じメニューと写真が見つかるようにそろえます。Aさんなら、昼と夜の2種類のメニューがわかる写真を用意します。食べログの費用については、下の「食べログは、無料と有料で『できること』と『露出』が変わる」で触れます。
- 開店日の決め方:契約日や開店日の縁起を気にする方は、契約・開業の縁起日カレンダーも参考にしてください。
開店前は、ほかのユーザーが「クチコミ」を書けない期間です(Googleビジネスプロフィール ヘルプ)。開店前にできるのは、お店の情報を正しく伝えることです。クチコミ集めは、開店後の仕事になります。
⑤開店後の約3か月は「知ってもらう」と「また来てもらう」
開店後は、Googleに「最近開店したお店」と表示される90日間があります。ここは、一度来てくれた人にもう一度来てもらう工夫を決めておく時期です。
- 初めて来た人に、次に来る理由(昼のセットの内容が変わる、など)を伝える
- 来てくれた人に、お店の情報が地図で見られることを伝える
- 営業時間やメニューが変わったら、すぐに地図の情報を直す
クチコミは、お客さんが書いてくれるものです。お願いの仕方によっては、ルール違反になることがあります。お願いする前に、Googleのガイドラインを確認してください。
有料の広告やグルメサイトの有料プランなどを使う場合は、費用や契約の条件が媒体で違います。契約の前に、料金、契約の期間、途中でやめられるかを必ず確認してください。
食べログは、無料と有料で「できること」と「露出」が変わる
- 無料プラン:誰でも登録できます。
- 有料プラン:食べログとの契約が必要です。ネット予約を受けられるほか、エリアの飲食店の情報を見たり、お店の閲覧数やクリック数を確認したりでき、集客の分析に役立ちます。
有料プランは月1万円からで、金額が上がると露出(検索結果などで見られる回数)が増える仕組みだと、当社は聞いています。当社の見方では、食べログは宴会の予約にとても強い媒体です。宴会のお客さんを取りたい夜の営業には、候補に入ります。
ただし、プランの内容と金額は、食べログの公式ページで確認できていない情報で、時期によって変わります。契約の前に、必ず食べログの店舗向け公式ページで、最新の料金・内容・契約期間・途中解約の可否を確認してください。
Aさん(架空)の場合、広告費は「その他25万円」の中から決めるのでした。たとえば広告費を月2万円までと置くと、有料プランの金額によっては、それだけで枠を使い切ります。最初は無料で掲載してメニューと写真をそろえ、開店後のお客さんの動きを見てから、有料プランを入れるか決めるという順番も考えられます。
集客のお金は、第3回の「その他」の中にある
Aさん(架空)の月の経費のうち、「その他(光熱費・広告費など)」は25万円でした。広告費に使える金額は、この25万円の中から決めます。たとえば、説明用に「広告費は月2万円まで」と置けば、残りの23万円で光熱費などをまかなう計画になります。広告費を増やせば、利益33万円が減ります。集客に使うお金も、計画書の数字の一部です。
創業計画書の「販売戦略」に書く3つのこと
ここまでの内容を、計画書に書く形に整理します。
- 誰に売るか:昼は近くの会社員、夜は近所の人や仕事帰りの人
- どう知ってもらうか:TikTokやInstagramで知ってもらい、食べログやGoogleで確かめてもらう。開業日の約3か月前にGoogleのプロフィールを作り、開店前からSNSと地図で同じ情報を伝える
- どう続けて来てもらうか:昼のセットの内容を定期的に変える、開店後の約3か月に再来店を増やす工夫を決める
これは、Aさんの説明用の例です。自分の店の場合は、実際に見に行った立地の様子と、自分ができる範囲の工夫を書いてください。実績のない取り組みを大きく書くより、実際にできることを具体的に書くほうが伝わります。
今日のワーク
- 自分の売上(月)を、客単価で割って、月のお客さんの人数を出す。営業日数で割って、1日の人数も出す
- 来てほしい人を、昼と夜に分けて1行ずつ書く
- 候補の立地を、昼と夜、平日と休日に見に行き、歩いている人の様子をメモする
- 広告費に使える金額を、経費の「その他」の中から仮に決める
- 自分の店のメニューと写真が、SNS・食べログ・Googleで同じに見えるか、使う媒体ごとに確認する計画を書く
- ☐ 月のお客さんの人数と、1日の人数を出した
- ☐ 昼と夜で、来てほしい人を書いた
- ☐ 候補の立地を、時間帯を変えて見に行った
- ☐ 広告費の枠を仮に決めた
- ☐ Googleビジネスプロフィールのヘルプを読んだ
次回予告
次回からは、創業計画書の最初の欄に戻ります。「なぜ飲食店を始めたいのか」という創業の動機の書き方を、飲食の経験がない方の目線で見ていきます。
ここまでで書けるようになった項目
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 全体の見取り図 | 第1回でわかった |
| 売上高(月) | 第2回で掛け算で作れるようになった |
| 売上原価・経費・利益(月) | 第3回で引き算で出せるようになった |
| 家賃の上限と、物件探しの3条件 | 第4回で決められるようになった |
| 必要な資金(設備・運転)と調達方法の考え方 | 第5回で足し算で組み立てられるようになった |
| 契約のときに動くお金 | 第6回で5種類に分けて数えられるようになった |
| 内装費の見積書の読み方 | 第7回で項目に分けて比べられるようになった |
| 営業許可の流れ(事前相談→申請→検査) | 第8回で順番と時期がつかめた |
| 消防署への届出(相談→使用開始届) | 第9回で順番と時期がつかめた |
| 従業員の欄と、人件費の「時間」への直し方 | 第10回で考え方がつかめた |
| 販売ターゲット・販売戦略と、集客の時期 | 今回、考え方がつかめた |
| 動機、略歴、お借入の状況など | これから順に学ぶ |
開店前後の集客・物件探しのご相談はこちら
大阪で飲食店の開業をご検討中の方、居抜き・スケルトンの貸店舗をお探しの方は、株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。「昼と夜の人の流れを見て、立地を選びたい」「売上の数字を持って、家賃と席数を相談したい」「看板が付けられる物件かを確認したい」といったご相談にも対応します。物件を探す前の資金計画やエリア選びの段階からのご相談も承っております。
TEL:06-6195-8209
よくある質問
Q. 開店前なのに、Googleにお店を載せてもいいのですか?
A. Googleのヘルプでは、開業日を登録してオーナー確認を終えると、開業日の90日前から表示されるとされています。手順は最新のヘルプで確認してください。
Q. 宣伝にお金をかけないと、お客さんは来ませんか?
A. 金額が決まった答えはありません。まず月の人数を数字にして、広告費の枠を経費の中で決め、使い道を絞るのが現実的です。
Q. インスタだけやっていれば、お客さんは来ませんか?
A. 当社の見方では、足りません。SNSで知った人は、食べログやGoogleでメニューと評価を確かめてから来る流れがあります。知る場所と確かめる場所の両方を用意してください。
Q. 友だちや知り合いだけで、開店直後は回るでしょうか?
A. 知り合いは最初の支えになりますが、Aさんの例では1日36人が必要です。知り合い以外の人に知ってもらう準備も並行して進めてください。
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参考
- 開業日を追加する|Googleビジネスプロフィール ヘルプ
- ビジネスを追加または申請する|Googleビジネスプロフィール ヘルプ
- 各種書式ダウンロード(国民生活事業)|日本政策金融公庫
- 飲食店で人を雇う手続き!大阪の最低賃金は1,231円|店舗市場
※Aさんの数字は説明用の架空の例です。Googleビジネスプロフィールの画面・確認方法・表示の条件は変更されることがあり、最新情報はGoogleのヘルプでご確認ください。公庫の様式や融資の条件も、公庫の最新ページでご確認ください。
