
飲食店の仕入れ先の選び方!月57万円の支払条件
仕入れ先は、値段だけで選ばず、「いつ払うか(支払条件)」まで見て決めるのがコツです。創業計画書の第5欄「取引先・取引関係等」には、仕入れ先の名前に加えて、現金払いか、あとで払う「掛け」か、何日締めの何日払いかを書きます。「仕入れ先は安いところならどこでもいい」と思っていた会社員の方も、支払いの日が開店直後の資金繰りを左右することが分かると、選び方が変わります。会社員から食堂を始めるAさん(架空)の例で、書き方を見ていきます。
この講座の位置づけ: 創業計画書の第5欄「取引先・取引関係等」(販売先・仕入先・人件費の支払条件)を書く回です(第18回)。開業までの流れでいうと、内装工事が進み、開店の準備に入る前後に、仕入れ先を決めて取引の条件を確かめる段階です。
前回は公庫融資の流れ!面談で聞かれる質問と答え方です。全体の見取り図は公庫の創業計画書、数字が苦手でも書ける順番にあります。
第5欄には何を書くのか
日本政策金融公庫(公庫)の創業計画書の第5欄は、販売先・仕入先・外注先に分かれています。二次情報(創業計画書の解説サイト)では、次の項目を書く欄があると紹介されています。公庫の様式そのものは、公庫の書式ページで確認してください。
- 取引先の名前と所在地
- 売上や仕入れの中での割合(シェア)
- 掛取引(あとで払う・あとで受け取る取引)の割合
- 回収・支払の条件(「月末締め翌月末払い」のような形)
飲食店の販売先は、お客さまです。外注先は、ほとんどない店が多いようです。つまり、実際に悩むのは仕入先の書き方です。二次情報では、開店前でも「未定」のまま出すのではなく、仕入先の候補と取引条件を具体的に想定して書く方がよいとされています。この講座では、第6欄「関連企業」は、親会社や関連会社がない方は書くことがありません。
「掛け」と「現金払い」の違い
- 現金払い:品物を受け取るとき(または注文のとき)に払う。支払いは早いが、お金の管理は分かりやすい。
- 掛け(掛取引):品物を先に受け取り、代金はあとでまとめて払う。たとえば「月末締め・翌月末払い」なら、4月に仕入れた分の代金は、4月末で1か月分をまとめ、5月末に払います。
4月に仕入れる
4月末に締める
5月末に払う
掛けにできると、開店した月に出ていく仕入れ代が、一時的に少なくなります。ただし、1か月たつと前の月の分を払うので、毎月の支払い総額は変わりません。ここを勘違いして運転資金を減らすと、あとで苦しくなります(運転資金の考え方は、飲食店の運転資金は何か月分?売上5割でもつ月数で計算で見ました)。
Aさんの月57万円の仕入れを、3つの業者に分けてみる
Aさんの売上原価は月57万円です(売上190万円×原価率30%。第3回で見ました)。この57万円を、どこから仕入れるのかを決めて書き出します。次の表は、説明用の架空の例で、実際の業者の条件や相場ではありません。
| 仕入先(種類) | 月の仕入れ額 | 払い方(架空) |
|---|---|---|
| 食材の卸業者 | 30万円 | 掛け(月末締め・翌月末払い) |
| 酒販店 | 12万円 | 掛け(月末締め・翌月20日払い) |
| 鮮魚・青果の店 | 10万円 | 現金払い |
| 業務用スーパーなど | 5万円 | 現金払い |
| 合計 | 57万円 | 掛け42万円+現金15万円 |
計算は足し算と割り算だけです。
- 合計:30+12+10+5=57万円(売上原価と一致)
- 掛けの合計:30+12=42万円。仕入れ全体の約74%(42÷57)
- 現金の合計:10+5=15万円。約26%(15÷57)
開店した月に払う仕入れ代は、現金の15万円だけです。掛けの42万円は、翌月にまとめて払います。そして翌月以降は、前の月の掛け42万円+その月の現金15万円=57万円を毎月払う形になります。開店月の資金繰りが少し軽くなるだけで、毎月の原価57万円は変わりません。
数字のつながりに注意
第16回の運転資金の検算は、仕入れを現金で払う前提のやや厳しい置き方でした。掛けにできても、「その分、運転資金を減らす」とは考えず、余裕として残しておくのが安全です。業者との条件は、お店の信用や取引の実績で変わります。初めての取引では、現金払いや前払いを求められることもあるため、事前に確認し、計画書にはその条件で書くことをお勧めします。
仕入れ先を選ぶ前に確かめること
値段のほかに、次の点を業者に聞いておきます。どれも金額に影響する項目です。
- ☐ 支払条件(現金か掛けか、締め日と支払日)
- ☐ 最低の注文金額・配送の曜日と時間帯(開店前に着くか)
- ☐ 欠品したとき・急に足りなくなったときの対応
- ☐ 請求書の形式と、支払い方法(振込手数料はどちらが持つか)
- ☐ 取引を始めるときに必要な書類(業者によって違う)
- ☐ 市場や仲卸(問屋)を使う場合、買い手の登録や利用の条件
大阪には、市場や卸の業者が多くあります。中央卸売市場などは、買い手の登録が必要になる場合があります。個別の条件は施設や業者で違うため、窓口に確認してください。
消費税の「インボイス」にも触れておきます
消費税の課税事業者になる場合は、仕入れ先が適格請求書発行事業者(インボイス登録をした事業者)かどうかで、消費税の計算に影響することがあります。仕入れ先の請求書に載っている登録番号は、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で、「T」を除いた13桁の番号から調べられます(国税庁)。自分が課税事業者になるかどうかは、税務署や税理士に確認してください。
人件費の支払条件も、この欄に書く
第5欄には、人件費の支払条件を書く欄もあります(二次情報による紹介。様式は公庫の書式ページで確認してください)。給与の締め日と支払日です。賃金は、毎月1回以上、決まった日に払うきまりになっています(労働基準法第24条)。Aさんの例(架空)では、月末締め・翌月25日払いとします。飲食店で人を雇う手続き!大阪の最低賃金は1,231円で見た人件費55万円は、この日に払うことになります。
Aさんの第5欄(架空)
| 区分 | 書く内容(架空の例) |
|---|---|
| 販売先 | 個人のお客さま(100%)。現金・カード等で、その場で受け取る |
| 仕入先 | 食材卸30万円(掛け・月末締め翌月末払い)、酒販店12万円(掛け・月末締め翌月20日払い)、鮮魚・青果10万円(現金)、業務用スーパーなど5万円(現金) |
| 外注先 | なし |
| 人件費の支払条件 | 月末締め・翌月25日払い |
業者の名前と所在地は、決まった段階で書きます。公庫の記入例の中身は、ここには載せません。書式ページの記入例(洋風居酒屋)で、実際の書き方を見てください。
今日のワーク
- 自分の月の売上原価(売上×原価率)を、仕入れ先の種類ごとに分けて書き出す(Aさんは3〜4つ)
- それぞれ「現金」か「掛け」か、掛けなら締め日と支払日を仮に置く
- 掛けと現金の割合を、割り算で出す(Aさんは約74%と約26%)
- 気になる業者に電話をして、支払条件と最低注文金額を1つ聞く
- ☐ 仕入れ額の合計が、売上原価と一致した
- ☐ 現金と掛けの割合を出した
- ☐ 業者に支払条件を確認した
- ☐ 人件費の締め日と支払日を決めた
次回予告
次回は、第8欄の調達に関わる、信用保証協会と、大阪府・大阪市の制度融資の考え方を見ていきます。公庫との違いを整理します。
ここまでで書けるようになった欄
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 全体の見取り図、売上、利益、家賃、資金 | 第1〜5回でできた |
| 契約・内装・許可・消防・従業員・集客 | 第6〜11回で順番がつかめた |
| 第1欄 創業の動機、第2欄 略歴、第7欄 借入 | 第12〜14回で書けるようになった |
| 業態と席数、運転資金の検算、融資の流れ | 第15〜17回でできた |
| 第5欄 取引先・取引関係等(仕入先と支払条件) | 今回、書けるようになった |
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よくある質問
Q. 開店したばかりでも、掛けで仕入れさせてもらえますか?
A. 業者の判断で、実績のない開業直後は現金払いや前払いを求められる場合もあります。事前に確認し、計画書にはその条件で書いてください。
Q. 仕入れ先がまだ決まっていません。「未定」と書いてもいいですか?
A. 二次情報では、候補と想定の条件を具体的に書く方がよいとされます。決める前に、数社へ条件を聞いて書き出しておくのが近道です。
Q. 支払いが遅れそうで怖いです。どう備えればいいですか?
A. 支払日を月の資金繰りの表に書き込み、入金の少ない月も払える金額か計算しておきます。不安なら、現金払いの割合を増やす方法もあります。
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参考
- 各種書式ダウンロード(国民生活事業)|日本政策金融公庫
- 創業計画書の取引先・取引関係等の書き方(二次情報)|創業手帳
- 適格請求書発行事業者公表サイト|国税庁
- 労働基準法(第24条 賃金の支払)|e-Gov法令検索
※Aさんの数字・取引条件は説明用の架空の例で、実際の業者の条件や相場ではありません。公庫の様式・融資の条件は変更されることがあり、最新情報は公庫でご確認ください。融資が必ず受けられるわけではありません。
