
「貸家を相続」家賃は誰のもの?売却前の注意点
親が人に貸していた家(貸家)を相続すると、貸主(家を貸している側)の立場も一緒に引き継ぎます。遺産分割が終わるまでの家賃は相続人みんなのもので、売っても借主はすぐには出ていきません。
「実家とは別に、親が貸していた家があったと、亡くなってから知った」「相続したけど、借主への連絡から何から手をつければいいか分からない」。そんな声は少なくありません。この記事では、最初の1か月でやることと、売る前に押さえたい3つの決まりを、やさしく説明します。貸家が空いたあと空き家になる場合にも、同じ考え方が役に立ちます。
まず何が起きているのか
相続では、親の持ち物だけでなく、貸主としての権利と義務もそのまま相続人に移ります(民法896条)。家賃を受け取る権利も、修理をする義務も、預かっている敷金(借主から預かっているお金)を返す義務も、相続人が引き継ぎます。
遺産分割がまとまる前の家賃は、法定相続分(法律が決めた取り分)で、相続人がそれぞれ受け取ります。最高裁判所の平成17年9月8日の判決(民集59巻7号1931頁)が、そう判断しています。あとで遺産分割をして、その家を誰か一人が取得しても、それまでの家賃は取り分が変わりません。
最初の1か月でやること
契約書を探す
借主に連絡する
家賃の受け取り先を決める
続ける・売る・終わらせるを決める
- ☐ 賃貸借契約書(家賃、期間、敷金の額)
- ☐ 家賃の入金記録(親の口座の通帳)
- ☐ 借主の連絡先
- ☐ 敷金の預かり金額と保管場所
- ☐ 相続人全員の連絡先
親の口座は、亡くなったことを銀行が知ると凍結されます。家賃が止まったように見えても慌てず、受け取り先をどうするか、相続人どうしで先に決めておきましょう。口座の凍結については「親の口座が凍結」葬儀費用と空き家の支払いはどうするで説明しています。相続人の一人と連絡が取れない場合は、「相続人と連絡が取れない」実家の名義変更の進め方も参考になります。
借主には、貸主が亡くなったこと、連絡窓口になる人、家賃の振込先が変わるなら新しい口座を、書面で伝えます。私の考えでは、「勝手に出ていけとは言いません」と、最初の連絡で伝えておくと、話がこじれにくいです。
売りたいときの3つの決まり
借主がいる家を売るときは、次の3つを知っておいてください。
- 借主は新しい持ち主にも主張できる
建物の引渡しを受けていれば、登記がなくても、売却後の新しい持ち主に契約の効力が及びます(借地借家法31条)。 - 貸主からやめてもらうには6か月前の申入れ
期間の定めがない契約で貸主が解約を申し入れると、6か月で終了します(借地借家法27条)。 - 申し入れには正当な理由が必要
貸主と借主それぞれの事情のほか、立退料など財産上の給付の申出も考慮されます(借地借家法28条)。
つまり、売ったからといって借主が出ていく必要はなく、「相続したから使いたい」だけでは、解約が認められないことがあります。借主が住んだままの家は、買主も限られます。売る方法の考え方は空き家売却「仲介」と「買取」どっちが得?違いを解説、売る・貸す・解体の比べ方は空き家は「売る・貸す・解体」どれが正解?判断基準をご覧ください。
借主が自分から出る意向なら、期限と敷金の精算(部屋を直す費用を引いて返すこと)を書面に残してから売る方が、話が早く進みます。
相続人が複数いるとき
誰が借主とやり取りするかを決めておかないと、連絡が二重になります。遺産分割で誰が家を取得するかが決まるまでは、窓口を一人にして、家賃と敷金の動きをメモに残しておきましょう。遺産分割の進め方は遺産分割協議はいつまで?進め方と「もめないコツ」にまとめています。
親が任せていた不動産会社は信用できる?
亡くなった親御さんは賃貸経営に熱心でも、相続した子どもは不動産に興味がない。そんな家庭は多いです。しかも「不動産屋はなんとなく怪しい」という先入観を持つ方も少なくありません。何をしたらよいか、任せている会社が信用できるのか、分からないことが分からないまま、不安だけが大きくなります。
そんなときは、気軽に相談できる不動産会社に聞くのが一番だと私は考えています。ただし、一つ気をつけてください。不動産会社にも得意分野があります。売買が得意な会社、賃貸の管理が得意な会社、相続の相談に慣れた会社など、さまざまです。相談する前に、次の点を聞いてみましょう。
- ☐ 貸家や賃貸の管理を、何年くらい扱っていますか
- ☐ 相続した人からの相談は、どれくらいありますか
- ☐ 売る・貸し続ける、どちらの話もできますか
- ☐ 費用や手数料を、書面で出してもらえますか
答えが具体的で、できないことを「できない」と言ってくれる会社は、話しやすい相手です。今の管理会社に不安があれば、管理委託契約書(管理を任せている約束の書類)を探して、費用と解約の条件を確認しておくと、相談がスムーズです。
相続した不動産・空き家のご相談はこちら
実家や親族の不動産を相続して何から手をつければよいか分からない方、所有している空き家の活用・売却・解体を検討中の方、どちらのご相談も株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。
株式会社不動産スペース 電話:06-6195-8209
よくある質問
Q. 親の遺産の中に貸家があり、借主が住んでいます。すぐ出てもらえますか?
A. 貸主が解約を申し入れても、終了するのは6か月後で、正当な理由も必要です(借地借家法27条・28条)。借主の事情も考えて話し合います。
Q. 遺産分割がまだなのに、親の口座に入った家賃は誰のもの?
A. 遺産分割までの家賃は、法定相続分で各相続人が受け取るとした最高裁判決があります。使い込みを避けるため、受け取りの記録を残してください。
Q. 借主が高齢で、売ると追い出すようで気が引けます。どうすれば?
A. 売っても契約は新しい持ち主に引き継がれます(借地借家法31条)。借主に事情を話し、住み続ける前提で買主を探す方法もあります。
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