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「母が住み続けたい」配偶者居住権とは?相続した実家の注意点

相続・空家

四谷 義仁

筆者 四谷 義仁

不動産キャリア20年

飲食店専門の不動産会社「株式会社不動産スペース」代表。不動産キャリア20年。大阪・京都・兵庫エリアを中心に、店舗仲介・管理・閉店サポートから収益物件の売買まで手がける。これまで数多くのカフェ・居酒屋・ラーメン店などの開業支援を行い、実際の経営数値や現場課題をもとに"リアルな店舗経営の見える化"を発信中。現場の泥臭さも、数字のシビアさも知る「現実派不動産屋」

配偶者居住権とは?母は実家に住み続けられるの?

お父さんが亡くなっても、お母さんは「配偶者居住権(はいぐうしゃきょじゅうけん)」を遺産分割や遺言で取得し、登記もしておけば、実家に住み続けられます。ただし「登記をしていない」「あとで家を売りたくなった」といった場面でトラブルになりやすい権利です。仕組みを先に知っておきましょう。

「父が亡くなったけれど、母にはあの家に住み続けてほしい」「でも、名義を母にすると預金を分けにくい」。こうした悩みから生まれたのが、2020年4月1日に始まったこの制度です。2020年4月1日以降に始まった相続が対象です。

この記事では、「お父さんが亡くなり、お母さんが実家に残る」場合で説明します(お母さんが先でも、考え方は同じです)。

配偶者居住権とは、亡くなった人の持ち家に住んでいた妻(または夫)が、そのまま住み続けられる権利です。家の「所有権」は子どもなど別の人が持ち、配偶者は「住む権利」だけを持つ形になります。

  • 亡くなった時点で、その家に住んでいたことが必要です
  • 遺産分割協議(家族の話し合い)か、遺言で取得します
  • 期間は原則として、配偶者が亡くなるまで(話し合いで期間を決めることもできます)

手続きの流れ

①
遺産分割協議で決める
→
②
期間・費用の負担を決める
→
③
法務局で登記する
→
④
住み続ける
  • ①:遺産分割協議の進め方は、遺産分割協議はいつまで?進め方と「もめないコツ」をご覧ください。話し合いがまとまらない場合は、遺産分割協議がまとまらない時、調停・審判への進み方が参考になります。
  • ②:配偶者居住権を認める期間(一生涯か、決めた年数か)と、修繕や固定資産税などの費用を誰が負担するかを、先に話し合って書面に残します。ここを曖昧にすると、あとで「聞いていない」となりやすい部分です。
  • ③:登記をしないと、家が売られたときに新しい持ち主へ「住む権利がある」と言えません。登記は、早く済ませたほうが安心です。

子が知っておきたい3つの落とし穴

  1. 勝手に貸したり、売ったりできない:配偶者居住権は他人に譲れません。第三者に貸すには、家の所有者の承諾が必要です。
  2. 修繕は配偶者の負担:家の修繕は配偶者が費用を負担します。固定資産税の納税通知は家の所有者に届きますが、通常の維持にかかる費用にあたる分は、配偶者に請求できるとされています。どこまでを誰が持つかは、後でもめないよう、協議の段階で決めておくと安心です。
  3. 施設に入ると家が動かせない:お母さんが施設に入って空き家になっても、権利は残ります。子が家を売りたくても、そのままでは売りにくくなります。権利をやめてもらうには、お金を払って合意でやめてもらう方法があります。くわしくは次の見出しで説明します。使い道に迷ったら、空き家は「売る・貸す・解体」どれが正解?判断基準で整理してください。

数年後、お母さんが施設に入ったら?元気なうちに話しておきたいこと

お父さんが亡くなり、お母さんが実家に住み続ける。ここまでは安心です。でも、数年後にお母さんが施設に入ることになるケースは珍しくありません。

私自身、父が急に施設に入ったとき、お金の話は思ったより早く来ました。毎月の手出しは10万円以上になり、すぐ父の口座から引き出そうとしましたが、暗証番号が分からず、兄が銀行で手続きをしてくれたものの、かなり時間がかかりました。家の売却を考える以前に、「お金をどこから出すか」で止まってしまうことがあると知りました。

施設には、入るときの費用や毎月の費用がかかります。金額は施設の種類によって大きく違い、お母さんの年金と貯金だけでは足りなくなる家もあります。そのとき、「実家を売ってお金をつくろう」という話になります。

ところが、実家を売るには、お母さんの配偶者居住権をやめてもらう話し合いが先に必要です。しかも、お母さんが認知症などで判断が難しくなっていると、本人に代わって決める手続き(成年後見)が必要になり、時間がかかることがあります。くわしくは認知症の親の実家は売れる?成年後見と2026年改正をご覧ください。施設の費用の考え方は「親の施設探しは突然」特養の待ち時間と費用の備えが参考になります。

こうした話は、普段の暮らしの中ではなかなか切り出せません。だからこそ、お母さんが元気なうちに、家族で話しておくことをおすすめします。お母さんが亡くなったときの次の相続(二次相続)まで含めて話せると、あわてずに済みます。

元気なうちに話しておきたいこと

  • ☐ 施設に入るとき、費用を何でまかなうか(年金・預貯金・実家の売却など)
  • ☐ 実家を売ってもよいか。売るならいつごろか
  • ☐ お母さんが亡くなった後、実家を誰が引き継ぐか。兄弟でどう分けるか
  • ☐ 遺言書を作る気持ちがあるか。あるなら誰に相談するか

切り出し方のコツは、「相続の話」ではなく「お母さんが安心して暮らすための準備」として話すことです。お盆やお正月など、家族がそろう日が話しやすいタイミングです。

「配偶者短期居住権」もあります

名前が似ていますが、別の権利です。

項目配偶者居住権配偶者短期居住権
住める期間原則、一生涯遺産分割が決まるまで。ただし決まるのが早くても、死亡から6か月は住めます
登記できるできない
取得のしかた遺産分割か遺言で決める要件を満たせば自然に発生

遺産分割の話し合いが長引けば、決まるまで住み続けられます。早く決まった場合でも、死亡から6か月は住めます。

準備チェックリスト

  • ☐ 亡くなった時に、配偶者がその家に住んでいたか確認した
  • ☐ 遺言書の有無を確認した
  • ☐ 遺産分割協議で、期間と費用の負担を話し合った
  • ☐ 法務局で登記を済ませた(または専門家に依頼した)
  • ☐ 将来、施設に入るときの家の使い方と、次の相続について家族で話した

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よくある質問

Q. 母が住んでいる実家を、私が相続してもいいですか?母は住み続けられますか?
A. 子が実家の所有者になっても、母が配偶者居住権を取得して登記しておけば、住み続けられます。登記を忘れないようにしましょう。

Q. 母が亡くなったら、配偶者居住権はどうなりますか?
A. 配偶者居住権は、配偶者が亡くなると原則として消え、相続されません。話し合いで期間を決めていた場合は、その期間が終わった時点で消えます。

Q. 同居していなかった家にも使えますか?
A. 亡くなった時に住んでいた家が対象です。住んでいなかった家には使えません。

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