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内装見積書の「一式」は中身を聞く!Aさんの400万円

新規開業者向け

四谷 義仁

筆者 四谷 義仁

不動産キャリア20年

飲食店専門の不動産会社「株式会社不動産スペース」代表。不動産キャリア20年。大阪・京都・兵庫エリアを中心に、店舗仲介・管理・閉店サポートから収益物件の売買まで手がける。これまで数多くのカフェ・居酒屋・ラーメン店などの開業支援を行い、実際の経営数値や現場課題をもとに"リアルな店舗経営の見える化"を発信中。現場の泥臭さも、数字のシビアさも知る「現実派不動産屋」

「見積書に『内装工事一式』と書いてあるけれど、これが高いのか安いのか、さっぱり分からない」。工事の経験がない人が、いちばん最初につまずくところです。結論から言うと、見積書は「一式」の中身を聞き、3社に同じ条件で出してもらって比べれば、数字が苦手でも読めます。この回では、Aさん(架空)の内装費400万円を分解しながら、見積書の読み方と比べ方を見ていきます。

この講座の位置づけ:創業計画書の「必要な資金と調達方法」の欄のうち、設備資金の中でも金額が大きい内装工事の数字を固める回です(第7回)。開業までの流れでいうと、物件の申込みの前後から、工事を発注する前に行うことです。前回は店舗を借りる時に最初に出るお金|保証金・礼金・仲介手数料でした。全体の見取り図は公庫の創業計画書、数字が苦手でも書ける順番をご覧ください。

まず、見積書は何のためにあるか

見積書は、「この工事に、いくらかかるか」を、工事を頼む前に書面にしてもらったものです。家のリフォームで言えば、「見積もり」と「請求書」の間にある約束の紙です。創業計画書では、内装工事の金額は設備資金(第5回で数えたお金)の中心になります。

見積書が役に立つ場面中身
資金計画内装費の金額の根拠になる。「なんとなく400万円」から卒業できる
業者選び同じ条件で比べると、安い・高いの理由が見える
工事が始まってから「ここは含まれていない」と言われる追加費用の線引きが分かる

なお、日本政策金融公庫(公庫)の「各種書式ダウンロード(国民生活事業)」のページには、創業計画書への見積書の添付についての記載は見当たりませんでした。見積書の提出を求められるかどうかは、融資の内容や時期で変わることがあるため、公庫の窓口や面談で確認してください。

見積書を読む手順

①
総額と税込・税別を見る
→
②
「一式」の行に印をつける
→
③
含まれないものを探す
→
④
支払い条件と工期を見る
→
⑤
3社を同じ条件にそろえて比べる

「一式」の中身は、聞いて書いてもらう

「一式」とは、細かい中身をまとめて1行にした書き方です。まとめて書くこと自体は、悪いことではありません。ただ、中身が分からないと、比べることも、あとから「入っていなかった」と気づくこともできません。内装費400万円(税込、説明用の仮置き)を、項目に分けるとこうなります。以下は説明用の架空の例で、業界の相場や基準ではありません。

項目金額(Aさんの例)中身(やさしい言い方)
解体・下地工事40万円古い壁や床を壊し、新しい壁の土台を作る
床・壁・天井の仕上げ110万円見える部分の床材、壁紙、天井
電気・照明工事60万円コンセント、照明、分電盤(電気の配り役)まわり
給排水・ガス工事70万円水とガスの配管、流し台のつなぎ込み
空調・換気(ダクト)工事60万円エアコン、換気扇、煙や臭いを外へ出す筒(ダクト)
造作(カウンター・建具)40万円その店専用に作るカウンターやドア
設計・諸経費20万円図面代、現場の管理費など
合計400万円40 + 110 + 60 + 70 + 60 + 40 + 20

このように、「一式」の行を、項目と金額に分けてもらうだけで、比べやすさが一気に変わります。業者に頼むときは、こう言えば十分です。「一式と書かれたところを、項目に分けてもらえますか」。聞くだけなら無料です。

自社の過去記事では、ダクトやトイレのつくりの違いで、スケルトン(内装が何もない状態)の工事費が100万円単位で変わる例を紹介しています(「スケルトン」の落とし穴、ダクト・トイレで100万円差)。ダクトや消防設備が見積に入っているかどうかは、総額を大きく左右する確認点です。

「含まれないもの」を探す

見積書で、いちばん大事なのは書いてあることより、書いていないことです。次のような工事は、見積に入っているのか、別の業者に頼むのか、物件ごとに違います。

  • ☐ 排気のダクトや、屋外までの配管
  • ☐ 消防設備(火災報知機、誘導灯など)の追加工事
  • ☐ ガスや電気の容量を増やす工事(引き込みの変更など)
  • ☐ グリストラップ(排水の油をこしとる設備)の設置
  • ☐ 看板・サインの工事
  • ☐ 厨房機器の搬入・設置
  • ☐ 保健所の営業許可に必要な図面の作成

「含まれない」と書かれていたら、それをいくらで、誰に頼むのかを必ず聞きます。物件によっては、貸主やビルの管理会社が工事の業者を指定したり、一部の工事を貸主側で行ったりする場合があります。見積を依頼する前に、貸主や管理会社に「工事の業者に決まりはありますか」と確認しておくと、あとで見積をやり直さずにすみます。

3社に頼んで、同じ条件にそろえて比べる

見積は、できれば3社に依頼します(相見積もり)。ただし、金額の安い順に並べるだけでは比べたことになりません。各社に同じ図面、同じ条件で依頼し、出てきた見積に「含まれないもの」を足して、同じ条件にそろえます。Aさん(架空)が3社から見積をもらった、と仮定します。

会社見積の金額含まれないもの条件をそろえた金額
A社360万円ダクト・消防設備(別途60万円と見込む)420万円
B社400万円なし400万円
C社430万円なし430万円

一番安く見えたA社は、条件をそろえるとB社より高くなりました。数字を見るときは、「いくら」より先に「何が入っているか」を見るのがコツです。ここで使った60万円は、説明用に置いた見込みの数字です。

支払い条件と、追加工事のルールを書面で

金額のほかにも、見積書や契約書で確認したい点があります。

  1. 支払いの時期:契約時、着工時、工事の途中、完了後など、いつ・いくら払うか。手元に使えるお金が、いつ必要になるかを決めます。
  2. 工期:工事が終わる日。開店の予定日から逆算して、遅れた場合の対応も聞きます。
  3. 追加工事のルール:工事を始めてから「ここも直す必要があった」と言われたとき、事前に見積を出して、承諾してから進めるという約束を、書面で残します。
  4. 保証・アフター対応:引き渡し後に不具合が出たとき、誰がいつまで対応するか。

工事を頼む業者に、許可は必要?

内装工事を頼むときの、一つの確認点です。国土交通省によると、建築一式工事以外の建設工事では、1件の請負代金が税込500万円未満の工事は「軽微な建設工事」とされ、建設業の許可がなくても請け負えます(国土交通省)。Aさんの内装費400万円は、この範囲に入ります。ただし、金額が500万円以上になる場合や、工事を分けて契約する場合の扱いは、国土交通省の最新の案内で確認してください。許可の有無は、業者を選ぶときの一つの材料です。

大阪の現場で、もう一つ。消防は「工事の前」に

飲食店では、内装の仕様(壁や天井の材料、厨房の火を使う場所など)によって、消防の設備や届出に関わってきます。設計が固まったあと、工事の前に、管轄の消防署に相談しておくと、工事のやり直しを避けやすくなります。大阪市内の場合は、管轄の消防署の予防担当が窓口です。くわしい届出の流れは、次々回の第9回で取り上げます。

今日のワーク

  1. 気になる物件の図面を用意して、内装工事業者に見積を頼むときの「依頼条件」(図面、希望の席数、厨房の設備、開店希望日)をメモに書き出す
  2. 見積書をもらったら、「一式」と書かれた行に印をつけ、業者に「項目に分けてください」と頼む
  3. 3社の見積の「含まれないもの」を一覧にして、条件をそろえた金額を出す
  4. 第5回で作った必要な資金の表の「内外装工事」の欄を、見積の数字で更新する
  • ☐ 「一式」の行を項目に分けてもらった
  • ☐ 「含まれないもの」を書き出し、誰がいくらで行うか確認した
  • ☐ 排気ダクト・消防設備・グリストラップが見積に入っているか確認した
  • ☐ 3社の見積を、同じ条件にそろえて比べた
  • ☐ 支払いの時期と、追加工事のルールを書面で確認した
  • ☐ 貸主・管理会社に、工事の業者の決まりを確認した
  • ☐ 見積書の提出が必要かどうか、公庫の窓口で確認した

次回予告

次回は、営業許可の取り方です。保健所に申請する時期と、大阪市での流れを、創業計画書の「取扱商品・サービス」の欄とつなげて見ていきます。

ここまでで書けるようになった項目

項目状況
全体の見取り図第1回でわかった
売上高(月)第2回で掛け算で作れるようになった
売上原価・経費・利益(月)第3回で引き算で出せるようになった
家賃の上限と、物件探しの3条件第4回で決められるようになった
必要な資金(設備・運転)と調達方法の考え方第5回で足し算で組み立てられるようになった
契約のときに動くお金第6回で5種類に分けて数えられるようになった
内装費の見積書の読み方今回、項目に分けて比べられるようになった
動機、略歴、お借入の状況などこれから順に学ぶ

内装・物件探しのご相談はこちら

大阪で飲食店の開業をご検討中の方、居抜き・スケルトンの貸店舗をお探しの方は、株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。「この物件の内装には、いくらくらいかかるのか知りたい」「見積書の見方が分からない」「数字を持って物件の相談をしたい」といったご相談にも対応します。物件を探す前の資金計画やエリア選びの段階からのご相談も承っております。

TEL:06-6195-8209

お問い合わせフォームはこちら

よくある質問

Q. 見積書の「一式」って、そのままにしていいんですか。
A. 中身を聞いて、項目と金額に分けてもらいましょう。比べるときにも、追加費用の線引きにも役立ちます。聞くだけなら無料です。

Q. 見積は何社に頼めばいいですか。
A. 3社が目安です。同じ図面・同じ条件で依頼し、「含まれないもの」を足して、条件をそろえて比べます。

Q. 一番安い会社に頼めば間違いないですか。
A. 安い見積は、ダクトや消防設備などが入っていないことがあります。条件をそろえた金額と、追加工事のルールで判断しましょう。

Q. 見積書は公庫に出さないといけませんか。
A. 公庫のページに添付の記載は見当たりませんでした。求められるかは時期や内容で変わるため、窓口や面談で確認してください。

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参考

※Aさんの数字は説明用の架空の例です。建設業の許可の基準や公庫の様式・条件は変更されることがあります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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