
飲食店の居抜き物件とスケルトン物件の違いとは?

■居抜き物件とスケルトン物件の基本的な違い

上の表のとおり、居抜き物件は前テナントの内装・設備を活用できるため初期費用を抑えやすく、準備期間も短縮できるのが魅力です。一方で自由なレイアウトやデザインが難しい面もあります。スケルトン物件は何もない状態から作るため費用や時間はかかりますが、一から理想のお店を作り上げられる自由度がメリットです。それでは、それぞれの特徴をもう少し詳しく見てみましょう。
■居抜き物件とは?

居抜き物件とは、前の店舗が使用していた内装や設備、什器備品などがそのまま残された状態で引き渡される物件のことです。飲食店でいえば、厨房設備や空調、水回り、カウンターやテーブル・椅子などが残っており、新しく借りる人(借主)はそれらを引き継いで使うことができます。契約後すぐに営業に使える状態になっているケースも多く、極端な例では「看板を付け替えるだけで開店できる」場合もあります。残されている設備の範囲は物件によって様々で、場合によっては皿やフォークに至る細かな備品まで残っていることもあります。
。こうした「居抜き」の状態で物件を借りることにより、開業準備のコストや時間を大幅に削減できる点が特徴です。
【居抜き物件のメリット】

こうした理由から、「できるだけ初期費用を抑えて早くお店を始めたい」という方には居抜き物件は魅力的な選択肢です。また、出店予定業態が前テナントと似ている場合(例:以前も飲食店だった物件で同じような業種を開業する)には、残された設備をそのまま流用しやすいため特におすすめできます。
【居抜き物件のデメリット】

物件オーナーの方針によっては居抜き契約でも退去時にスケルトン戻し(原状回復)を求められるケースもあります。そのため契約時に「退去時は原状回復が必要か」をオーナーに確認しておきましょう。居抜き入居だからと油断していると、退去時に設備撤去費用を請求され「かえって高くついた…」と驚くことにもなりかねません。
■スケルトン物件とは?

【スケルトン物件のメリット】
【スケルトン物件のデメリット】

スケルトン物件は入居時と同じく退去時も原則スケルトン状態に戻して明け渡す義務があります。内装や設備を全て解体撤去する原状回復費用は借主負担となるため、将来的には撤退コストもかかる点に留意しましょう。居抜きで内装譲渡できれば撤去費を節約できますが、スケルトン契約では契約上それができない場合がほとんどです。開店時だけでなく、閉店・退去時まで視野に入れてトータルコストを考える必要があります

費用面での比較(初期費用・改装費など)
居抜き物件とスケルトン物件では初期費用に大きな差があります。ここでは両者の費用面の比較ポイントを整理します。
【内装工事費の相場】
一般的に居抜き物件の内装改装費は1坪あたり約15万~30万円が目安とされていますが、これはあくまで内装工事単体の目安であり、厨房設備や空調設備などの機器類は含まれていないケースがほとんどです。そのため、実際の初期費用はもう少し高額になることが多く、厨房機器や備品類の調達費を含めると1坪あたり40万~50万円程度になることも珍しくありません。
一方、スケルトン物件では1坪あたり約30万~50万円以上とされますが、こちらも内装工事のみの費用です。スケルトンは文字通り何もない空間を一から作るため、厨房機器・電気・ガス・給排水などの設備導入費も含めると、1坪あたり60万~70万円以上かかる場合もあります。
【例えば10坪の店舗の場合】

居抜き:内装+設備含めて 400万~500万円前後
スケルトン:内装+設備含めて 最低600万~700万円以上 が現実的な初期費用の目安となります。
【設備・備品の調達費】
居抜き物件では前店舗の設備や什器を造作譲渡(買い取り)して利用するのが一般的です。その際に支払う造作譲渡料は相場で100万~200万円程度と言われています。物件や設備の状態によって金額は異なり、交渉次第では値下げや無償譲渡としてもらえるケースもあります。一方スケルトン物件では厨房機器からテーブル・椅子、照明、空調に至るまですべて新品購入またはリースで揃える必要があります。そのため設備投資費用が居抜きより大幅に増加します。備品調達費を含めてもなお、居抜き物件の方が初期費用を大きく抑えられる可能性が高いです。
【工事期間中の家賃負担】
スケルトン物件では契約開始から開業まで数ヶ月の工事期間が発生し、その間の賃料(空家賃)負担が生じます。例えば3ヶ月かかった場合、3ヶ月分の家賃を売上ゼロの状態で支払うことになります。居抜き物件であれば工事期間が短縮できるため空家賃を最小限に抑えられ、開業を早めて売上を発生させることで経済的負担を軽減できます。開業までのタイムラグによるコストも含め、居抜きの方が有利と言えるでしょう。
総合的な初期費用の比較が大切です。
居抜き物件はスケルトン物件に比べ初期費用が大幅に安く済む傾向があります。内装工事費だけ見てもおよそ半分程度の費用で済む計算であり、造作譲渡料を含めてもトータルで居抜きの方が出費を抑えられるケースが多いです。ただし注意したいのは、居抜き物件の条件次第ではこの差が小さくなる場合もあることです。立地が良く設備の状態が良い条件の良い居抜き物件は人気が高いため賃料や譲渡料が割高となり、結果的にスケルトン物件との差額が少なくなることもあります。逆に、居抜き物件でも残置設備が活用できず結局全面改装するようなケースでは、居抜きのメリットが活かせずスケルトン並みの費用がかかってしまうこともあります。要するに、「居抜きだから必ず安い」「スケルトンだから必ず高い」と決めつけず、物件ごとの条件を踏まえて試算することが大切です。
