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「撤退ライン」の決め方|閉店は3つの数字で判断

閉店

四谷 義仁

筆者 四谷 義仁

不動産キャリア20年

飲食店専門の不動産会社「株式会社不動産スペース」代表。不動産キャリア20年。大阪・京都・兵庫エリアを中心に、店舗仲介・管理・閉店サポートから収益物件の売買まで手がける。これまで数多くのカフェ・居酒屋・ラーメン店などの開業支援を行い、実際の経営数値や現場課題をもとに"リアルな店舗経営の見える化"を発信中。現場の泥臭さも、数字のシビアさも知る「現実派不動産屋」

閉店するかどうかは、気持ちではなく①損益分岐点売上 ②手元に残す現金の下限 ③我慢する月数という3つの数字で、調子のいいうちに決めておきます。「このまま続けていいのか分からない」と毎晩考えてしまう方へ。線を先に引いておくと、迷う時間そのものが減ります。

なぜ「先に」決める必要があるのか

閉店にもお金がかかります。退去までの家賃、原状回復工事、スタッフへの精算。現金が尽きてから動こうとすると、この費用が払えません。

払えないと、選べる道が一気に減ります。居抜きで譲る相手を探す時間もなくなり、ただ閉めるだけになります。つまり撤退ラインは、現金が尽きる地点よりだいぶ手前に引かないと意味がないのです。

撤退ラインは3つの数字で決める

決める数字 内容 決め方の例
①損益分岐点売上 赤字と黒字の境目になる月の売上 下の式で計算する
②現金の下限 ここを割ったら動くという残高 閉店にかかる見込額+固定費1か月分
③我慢する月数 ①を下回り続けたら手を打つ期間 3か月連続など

3つのうちどれか1つに触れたら相談を始める、と決めておくのがコツです。「売上が悪い月」は誰にでもあります。だから月数とセットにします。

①損益分岐点売上の出し方

独立行政法人中小企業基盤整備機構は、次の式を示しています。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率

言葉を1つずつかみ砕きます。

  • 固定費:売上に関係なく毎月出ていくお金。家賃、正社員の給与、リース料など。
  • 変動費:売上に比例して増えるお金。食材の仕入れなどです。
  • 限界利益率:売上から変動費を引いた残りが、売上の何割かという数字。原価率35%の店なら65%です。

たとえば固定費が月110万円(家賃30万+人件費60万+その他20万)、原価率35%の店なら、110万円 ÷ 0.65 = 約169万円が境目です。月の売上が169万円を下回った月は、赤字だったということになります。

まずは直近3か月の数字で、自分の店の境目を出してみてください。

②閉店にかかるお金を見積もる

②の「現金の下限」を決めるには、閉める側の費用を先に知る必要があります。

  • ☐ 契約書の解約予告期間を確認する(例:6か月前通知なら家賃6か月分)
  • ☐ 原状回復工事の見積もりを1社でも取ってみる
  • ☐ スタッフの解雇予告手当・未払い給与・社会保険の精算見込み
  • ☐ リース契約の残債と中途解約の違約金
  • ☐ 仕入れ業者への未払い残高
  • ☐ 保証金(敷金)がいくら戻る契約になっているか

この合計が、閉店に必要な現金のおおよその額です。保証金が戻る分は差し引けます。なお居抜きで譲れた場合は原状回復が不要になり、造作の代金が入るため、この数字が大きく変わります。詳しくは居抜き「造作譲渡契約書」で損しない7つの確認項目や店舗の原状回復見積もり「スケルトン戻し」の落とし穴とはをご覧ください。

決めるまでの手順

①
固定費を書き出す
→
②
損益分岐点売上を計算
→
③
閉店費用を見積もる
→
④
3つの数字を紙に書く
→
⑤
毎月チェックする

大事なのは④です。頭の中だけに置くと、「来月は忙しくなるから」と線が動いてしまいます。紙かスマホのメモに、決めた日付と一緒に残してください。

線に触れたら、まず公的窓口へ

撤退ラインに触れても、すぐ閉店と決める必要はありません。国の無料窓口が2つあります。

  • 中小企業活性化協議会:47都道府県に設置。収益力改善・事業再生・再チャレンジの3段階で支援し、金融機関への返済条件の見直しも相談できます。最初の相談(1次対応)は無料です。
  • 事業承継・引継ぎ支援センター:47都道府県に48カ所。後継者がいない場合の第三者への引き継ぎを、秘密厳守で支援します。

「潰れる前に」動けば、借入の返し方を変える、譲る、という道が残ります。

テナント探し・戦略的な閉店のご相談はこちら

株式会社不動産スペース(店舗市場)は、大阪で飲食店の物件探しと、居抜き譲渡・計画的な閉店のご相談を両方お受けしています。撤退ラインを決める段階で「この立地なら、いくらで譲れそうか」を知っておきたい方も、お気軽にご相談ください。

お電話:06-6195-8209

お問い合わせフォームはこちら

よくある質問

Q. もう限界かもしれないのですが、何から手をつければいいですか?
A. まず解約予告期間の確認と原状回復の見積もりです。閉店にいくら必要かが分かると、残り時間が見えます。

Q. 撤退ラインは何か月の赤字で引くのが一般的ですか?
A. 一律の正解はありません。手元現金と固定費から「あと何か月もつか」を計算し、それより短い月数で設定するのが安全です。

Q. 赤字でも家賃が安ければ続けたほうが得ですか?
A. 損益分岐点売上との差額が毎月の持ち出し額です。その金額を何か月払えるかで判断してください。

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