
鍵を返す前に|飲食店の退去前チェックリスト
退去でもめる原因は、ほぼ「原状回復の範囲」と「保証金の精算」の2つに絞られます。そして防ぎ方は、動き出す順番を間違えないことです。具体的には、解約通知を出す前に店舗物件に詳しい人へ相談し、解約日の2〜3か月前に現地で貸主・管理会社とすり合わせておくことです。「もう店を閉めると決めた。でも何から確認すればいいのか分からない」――そんな方のために、鍵を返すまでにやることを順番に整理しました。
もめるポイントは、たいていこの2つだけ
ひとつ目は原状回復(げんじょうかいふく)の範囲です。原状回復とは、簡単に言えば「借りたときの状態に戻して返すこと」です。
法律(民法621条)では、ふつうに使っていてできた傷や、年月の経過による汚れ・色あせ(通常損耗・経年変化)までは、借りた側が戻す必要はないとされています。ただし、店舗や事務所の場合は、契約書の特約(とくやく=個別の取り決め)が優先されるのが実務です。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」も、あくまで民間賃貸住宅を想定したもので、店舗には直接は当てはまりません。つまり店舗は「契約書に何と書いてあるか」がほぼすべてです。工事の範囲そのものの考え方は、店舗の原状回復見積もり「スケルトン戻し」の落とし穴とはで詳しく解説しています。
ふたつ目は保証金(敷金)の精算です。保証金は「預けているお金」なので、未払いの家賃や原状回復費を差し引いた残りが返ってきます。逆に言えば、滞納や工事費がふくらむほど、返ってくるお金は減っていきます。
- 原状回復=どこまで元に戻して返すか(=工事費がいくらかかるか)
- 保証金の精算=預けたお金がいくら返ってくるか
退去までの流れ
解約通知の前に詳しい人へ相談
解約を書面で通知
現地で貸主・管理会社と状態を確認
原状回復の範囲を書面で合意
工事・残置物の撤去
退去立会い・鍵の返却
保証金の精算
大事なのは、④を⑤より先に終わらせることです。範囲を決めずに工事を始めると、「これも足りない」と追加されても断る根拠がありません。
いちばん大事なのは、実は①の「出す前の相談」です
解約通知は、いったん出すと原則として撤回できません。そして通知を出した瞬間に、退去日と「スケルトンに戻して返す」という前提が動き出してしまうことがあります。
知識がないまま進めて損をするのは、たいていこの段階です。たとえば居抜きで譲れる可能性が十分あった店なのに、先に通知を出してしまい、買い手を探す時間がなくなって工事費を全額かぶる――こういうケースは珍しくありません。
ですから、解約通知を出す前に、店舗物件に詳しい信用できる人に一度相談してください。不動産会社でも、同業の先輩でも構いません。契約書を見てもらうだけで、選べる道が増えることがあります。予告期間そのものの注意点は、飲食店の「解約予告期間」トラブルと対処法|閉店前に確認にまとめています。
解約日の2〜3か月前に、現地ですり合わせる
通知を出したら、できるだけ早く貸主(オーナー)と管理会社に話をしてください。確認するのは、この2つだけです。
- いつまでに 返すのか(工事期間は賃料が発生するのか、しないのか)
- どの状態にして 返すのか(どこまで撤去し、どこを残すのか)
この2つの認識のズレが、あとの追加請求や退去の遅れにそのまま変わります。おすすめのタイミングは、解約日の3か月前から2か月前。この時期に、できれば店の中で実際に立ち会ってもらい、「この厨房は残す」「この壁は撤去」と現物を指さしながら決めるのが一番確実です。
話した内容は、その日のうちにメールで要点を送り、返信をもらってください。これだけで立派な記録になります。
鍵を返す前のチェックリスト
- ☐ 解約通知を出す前に、店舗物件に詳しい人に契約書を見てもらった
- ☐ 契約書の原状回復の条項を読み返した(スケルトン戻しか、一部残しか)
- ☐ 解約通知を書面(控えが残る形)で出した
- ☐ 解約日の2〜3か月前に、現地で貸主・管理会社と返す状態を確認した
- ☐ 原状回復の範囲を、図面と写真つきで貸主と書面合意した
- ☐ 貸主の指定業者があるか確認し、なければ見積もりを2社以上で比べた
- ☐ 入居前の写真や図面を探した(元の状態を示す証拠になります)
- ☐ リース品・レンタル品(厨房機器、POS、おしぼり等)の引き取り日を押さえた
- ☐ 看板(袖看板・外壁・電柱広告)の撤去を手配した
- ☐ 電気・ガス・水道・電話・ネットの解約日と最終検針日を押さえた
- ☐ 残置物をゼロにした(置いていくなら、書面で貸主の承諾をもらった)
- ☐ 家賃・共益費の日割りと、滞納分の精算方法を文書で決めた
- ☐ 立会いに自分も同席し、署名した書面のコピーを必ずもらった
- ☐ 保証金の返還額と入金予定日を書面で確認した
とくに立会いは必ず自分が同席してください。その場で署名した確認書が、あとの請求の根拠になります。スマホで写真を撮っておくだけでも、「言った・言わない」の争いはかなり防げます。リース品の扱いは「厨房機器のリース解約」違約金交渉のコツと注意点もあわせてご確認ください。
家賃を滞納してしまっている場合
放置が一番高くつきます。遅延損害金が積み上がり、保証金から差し引かれ、足りなければ連帯保証人や家賃保証会社に請求が回ります。言いにくい話ですが、早めに自分から相談したほうが、分割などの相談に乗ってもらえる可能性は確実に高くなります。決まった内容は、必ず書面やメールで残してください。
返し方の3パターン
| スケルトン戻し | 一部残して返す | 居抜きで譲る | |
|---|---|---|---|
| 工事費の負担 | 全額自己負担 | 交渉次第で軽くなる | 買い手が引き継ぐ場合も |
| 必要な期間 | 長め | ふつう | 相手探しの時間が必要 |
| 手元のお金 | 出ていくだけ | やや軽くなる | 譲渡代金が入ることも |
同じ「閉店」でも、選び方で数百万円の差が出ます。工事を手配する前に、居抜きで譲れる可能性がないか一度検討する価値はあります。
テナント探し・戦略的な閉店のご相談はこちら
新しい出店先をお探しの飲食店様、計画的な移転・閉店・居抜き売却をお考えの飲食店様。株式会社不動産スペース(店舗市場)が、大阪エリアを中心にお手伝いします。とくに「解約通知を出す前」のご相談は、選べる道がいちばん多いタイミングです。契約書を拝見して、原状回復の範囲や居抜きで譲れる可能性を一緒に確認します。
お電話:06-6195-8209
よくある質問
Q. 保証金って、いつ返ってくるんですか?
A. 契約書の定め次第です。明け渡し後1〜3か月後と決めている契約が多く、法律上も「明け渡しを受けたとき」に未払い分を差し引いた残額を返すとされています。必ず契約書の条項をご確認ください。
Q. このまま滞納したまま出て行ったらどうなりますか?
A. 保証金から充当され、不足分は連帯保証人や家賃保証会社に請求が回ります。早めに相談し、分割などの取り決めを書面で残すのが現実的な対処です。
Q. 解約通知って、すぐに出してしまって大丈夫ですか?
A. いったん出すと原則撤回できません。居抜き譲渡など選べる道が消えることもあるため、出す前に店舗物件に詳しい人へ契約書を見てもらうことをおすすめします。
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