
家賃値上げ通知が17%に、大阪家主の正しい進め方
家賃値上げ通知、入居者の6人に1人が経験
「家賃を上げたら入居者が逃げるんじゃないか」と不安に思っているオーナー様は多いのではないでしょうか。結論から言うと、値上げの通知を受け取ったことがある入居者はすでに全国で17.2%にのぼり、家賃の見直しはもはや特別なことではなくなっています。ただし、通知を出すだけでは値上げは成立しません。大阪でも家賃相場が実際に上昇している今だからこそ、正しい進め方を押さえておきましょう。
住宅情報サイト「SUUMO」が2026年5月に実施した賃貸入居者調査によると、家主から家賃の値上げ要請(通知)を受けたことがある入居者の割合は17.2%で、2025年の調査から4.6ポイント上昇しました(全国賃貸住宅新聞2026年9月12日号、SUUMO調べ)。直近半年以内に契約を更新した入居者に限ると、その割合は25.2%まで高まります。更新していない入居者でも約1割が値上げ通知を経験しており、更新のタイミングを問わず値上げの動きが全国に広がっていることがうかがえます(同調査)。
大阪市の家賃も、実際に上昇している
「そうはいっても、うちのエリアはそんなに上がっていないのでは」と思われるかもしれません。不動産情報サービス「アットホーム」の調査を基にした旭化成ホームズのレポート(2026年5月21日発表)によると、2026年3月の大阪市の平均募集家賃は、ファミリー向き(50~70平米)が16万7,450円で前年同月比13.5%(1万9,892円)の上昇、シングル向き(30平米以下)は7万3,179円で同9.0%(6,026円)の上昇となりました。シングル向きは20カ月連続、カップル向きは6カ月連続で過去最高値を更新しています(アットホーム調べ)。
| 大阪市の平均募集家賃(2026年3月) | 金額 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| シングル向き(30平米以下) | 73,179円 | +9.0% |
| ファミリー向き(50~70平米) | 167,450円 | +13.5% |
「通知」だけでは値上げは成立しない
ここで見落とされがちなのが、家賃の値上げは家主が一方的に通知するだけでは成立しないというルールです。借地借家法という法律の32条では、周辺の家賃相場と比べて今の家賃が「不相当」になった場合、家主は入居者に家賃の増額を求めることができるとされています。ただし、これはあくまで「請求できる」というだけで、実際に値上げが決まるのは、入居者との合意ができた場合か、話がまとまらなければ調停・裁判所の手続きを経た場合に限られます。一方的な通知書だけを送りつけて終わりにしてしまうと、後々のトラブルにつながりかねません。
周辺相場・築年数の近い物件と比較
値上げの根拠を整理
入居者へ事前に説明・交渉
合意書を取り交わす
値上げ前の点検チェックリスト
- ☐ 周辺の同条件物件の家賃相場を最新のデータで確認したか
- ☐ 値上げの根拠(相場変動・修繕・設備更新など)を説明できる形で整理したか
- ☐ 通知だけでなく、入居者への説明や交渉の機会を設けているか
- ☐ 合意内容を書面(覚書・合意書)で残しているか
実は「値上げしたい家賃」ほど、値上げが難しい
ここまでは値上げの手順をご紹介しましたが、現場ではもう一つ厄介な現実があります。家賃が周辺相場より低いまま据え置かれている入居者ほど、実は入居期間が長く、「今の家賃が当たり前」という意識が強いため、値上げの提案に応じてもらいにくい傾向があります。さらに、家賃の滞納や近隣トラブルなど何かしら問題を抱えている入居者ほど、家主側も「揉めて長期化するくらいなら、今のままでもいいから穏便に」と考えがちで、結果として本来いちばん見直したい家賃ほど手を付けられないという構造が生まれがちです。
こうしたケースでは、いきなり値上げを持ちかけるのではなく、まずは滞納や契約違反など個別の問題を整理し、入居者との関係を落ち着かせてから相場の話をする、という順番が現実的です。合意が得られにくい相手ほど調停に持ち込む手間も大きくなるため、こうした入居者への対応は、管理会社ともよく相談しながら慎重に進めることをおすすめします。
上げすぎても、上げなさすぎても損をする
家賃の見直しは、上げすぎれば入居者が離れるきっかけになりますし、相場より低いままにしていれば、その差額分の家賃収入をずっと取りこぼし続けることになります。以前の記事(修繕費14年連続上昇、初の2.5万円台で大阪オーナーの備え)でも触れたとおり、修繕費や管理コストが上がり続ける中では、適正な水準への見直しは資産を守るための前向きな取り組みです。ご自身の管理会社が、こうした相場や進め方についてきちんと説明してくれているか、一度確認してみるとよいでしょう。
なお、親や祖父母から物件を相続したばかりで、今の家賃が適正なのかどうかも分からないという方も少なくありません。そうした方こそ、一人で抱え込まず、地域の事情に詳しい不動産会社に早めに相談することをおすすめします。
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よくある質問
Q1. 値上げの通知を送れば、それだけで家賃は上がりますか?
A1. いいえ。通知はあくまで請求であり、実際に値上げが成立するには入居者との合意、または調停・裁判所の手続きが必要です。
Q2. 正直、値上げして入居者に出ていかれたら元も子もないんですが?
A2. そのご不安はもっともです。だからこそ、根拠のない一方的な通知ではなく、相場データを示しながら丁寧に説明することが重要です。
Q3. 大阪はどのエリアでも家賃が上がっているのですか?
A3. 大阪市全体では平均募集家賃が上昇していますが、エリアや間取りによって上昇幅は異なるため、個別の物件ごとに周辺相場を確認することが大切です。
Q4. 長年住んでいる入居者ほど家賃が安いままなのですが、値上げは難しいですか?
A4. はい、その傾向はあります。入居期間が長い方ほど心理的な抵抗が大きく、特に滞納やトラブルを抱えている場合は交渉が難航しやすいため、個別の状況整理から始めることをおすすめします。
