
孤独死発生時に家主がすべきこと「預託金不要」の備え
入居者の孤独死が起きたら、家主がまず確認すべき3つのこと
入居者の孤独死に直面したら、まず「誰が解約と残置物の処理をする権限を持っているか」を確認してください。契約時に「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を結んでいれば、管理会社が受任者としてすぐに動けます。結んでいない場合は相続人を探すところから始める必要があり、時間も費用もかかります。この仕組みは、入居者に100万円を超える預託金を求めなくても導入でき、1戸あたり年5,000円〜1万円程度の「孤独死保険(大家型)」と組み合わせて運用するのが実務上の主流です。
孤独死が起きてしまったら、まず何をすべきか
もし今まさに入居者の孤独死に直面している場合は、次の3点を順番に確認してください。
- 賃貸借契約は自動的には終わらない:入居者が亡くなっても契約は終了せず、相続人がそのまま賃借人の地位を引き継ぎます。まずは相続人がいるか、あるいは契約時に「解除関係事務委任契約」を結んでいた受任者がいるかを確認しましょう。
- 部屋の私物は勝手に処分できない:残置物の所有権も相続人に引き継がれるため、オーナーが独断で処分すると後からトラブルになりかねません。「残置物関係事務委託契約」の受任者がいれば、その受任者が整理・処分の手続きを進められます。
- 費用は孤独死保険の請求を確認する:原状回復費用・遺品整理費用・空室期間の家賃損失は、加入している孤独死保険(大家型)の対象になっていないか、管理会社や保険会社にすぐ確認しましょう。
相続人も受任者もいない、あるいは連絡が取れない場合は、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる必要があり、対応が長引きます。こうした事態を防ぐための備えが、以下で説明する「モデル契約条項」と「孤独死保険」の組み合わせです。次に孤独死が起きたときに慌てないための備え方として、参考にしてください。
「重い契約」と「軽い契約」がある
死後事務委任契約というと、専門家への報酬や預託金を含めて50万〜150万円程度かかる本格的な契約を思い浮かべる方が多いかもしれません。これは主に、身寄りのない方向けの身元保証・生前契約サービス業者が扱う仕組みです。
一方、賃貸住宅の現場で実際によく使われているのは、もっと軽い仕組みです。国土交通省と法務省が2021年に策定した「残置物の処理等に関するモデル契約条項」は、次の2つの委任契約に絞り込まれています。
- 解除関係事務委任契約:入居者が亡くなった後、賃貸借契約の解約手続きを代行する
- 残置物関係事務委託契約:部屋に残された家財(残置物)を整理・処分・送付する
この2つは、管理会社を受任者として契約書を交わすだけで足り、100万円単位の預託金を前提とした仕組みではありません。契約書式は国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」のページから、PDF・Word形式で無料でダウンロードできます(解除関係事務委任契約用、残置物関係事務委託契約用、両方を1通にまとめた書式などが用意されています)。
お金の出どころは「保険」で賄う
では、実際にかかる費用はどこから出すのでしょうか。ここで登場するのが孤独死保険(大家型)です。
孤独死保険(大家型)は、オーナーや管理会社が保険料を負担し、入居者が亡くなった際の原状回復費用・遺品整理費用・家賃損失をまとめて補償する保険です。保険料の目安は1戸あたり年5,000円〜1万円程度、補償額は1事故につき上限100万円〜300万円程度が一般的です。日本少額短期保険協会の集計(2015年4月〜2022年3月の累計データ)でも、賃貸物件内の孤独死1件あたりの保険対応額は平均87.6万円(残置物処理約23.5万円、原状回復約33.4万円、家賃保証約30.7万円)となっています。
なお、原状回復費用は物価高騰の影響で年々上昇しており、同協会の直近(2024年度単年データ)では平均61.1万円まで上がっています。原状回復費用の最新動向は「孤独死の原状回復費、1件平均61万円に上昇――大阪の家主が「高齢者お断り」をやめるためにできること」で詳しく解説しています。
つまり、次のような役割分担になります。
| 仕組み | 何を解決するか | 費用の目安 |
|---|---|---|
| モデル契約条項(解除・残置物の2委任契約) | 誰が手続きする権限を持つか | 契約書作成のみ、預託金は原則不要 |
| 孤独死保険(大家型) | 実際にかかった費用をどこから出すか | 年5,000円〜1万円/戸、事故時に上限100万〜300万円を補填 |
入居者にまとまった預託金を求める代わりに、管理会社・オーナー側が保険料という形で少しずつ備えておく。これが、一般的な賃貸住宅で無理なく単身高齢者を受け入れるための、現実的な組み合わせです。
保険でカバーしきれない部分の扱い
孤独死保険は「原状回復・遺品整理・家賃損失」という決まった項目を補償するものです。それ以外の細かい実務(残置物の仕分けや、指定された家財の送付など)にかかる費用は、モデル契約条項の枠組みの中で、敷金からの相殺や、残置物を売却(換価)した代金を充てる方法で対応します。相続人が見つかった場合は、原則として相続人へ費用を請求する形になります。
なお、モデル契約条項は入居時点で60歳以上の単身者で、かつ連帯保証人がいないなど一定の事情がある方を主な対象としています。連帯保証人や保証会社との契約がすでにある場合は、この仕組みにはあまり向いていません。
これは管理会社の実務に関するニュースですが、オーナーの皆様にとっても他人事ではありません。「うちの管理会社は、単身高齢者の受け入れにどんな仕組みを使っているか」「孤独死保険には加入しているか」を、一度確認してみるとよいでしょう。仕組みが整っている管理会社であれば、高齢の入居希望者を無理に断らずに済み、結果として空室期間の短縮にもつながります。
管理会社選び・見直しのご相談はこちら
孤独死対策や単身高齢者の受け入れ体制について、今の管理会社で十分か気になるオーナー様は、株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。
株式会社不動産スペース 06-6195-8209
よくある質問
Q. 入居者の孤独死が起きてしまいました。今すぐ何をすればいいですか?
A. まず相続人または契約上の受任者の有無を確認し、勝手に残置物を処分しないでください。そのうえで、孤独死保険(大家型)の請求ができないか管理会社・保険会社に確認しましょう。
Q. モデル契約条項を使えば、預託金は一切不要ですか?
A. モデル契約条項自体は預託金を前提とした仕組みではありませんが、実際にかかる費用は保険や敷金、相続財産の精算で賄う必要があります。
Q. 孤独死保険だけ入っていれば、モデル契約条項は不要ですか?
A. いいえ。保険は「お金の補填」、モデル契約条項は「手続きをする権限」を得るためのもので、役割が異なります。両方を組み合わせることで実務が回ります。
Q. どんな入居者にもこの仕組みを使えますか?
A. モデル契約条項は主に60歳以上で連帯保証人がいない単身者を想定しています。保証人や保証会社がいる場合は、通常の契約で十分なケースが多いです。
