
死後事務委任契約とは?費用相場は50万円から
死後事務委任契約は、費用相場50万〜100万円、公正証書の手数料は「6,500円」から
死後事務委任契約は、亡くなった後の葬儀や部屋の解約などの手続きを、元気なうちに信頼できる相手へ託しておく契約です。専門家に依頼する場合の報酬はおおむね20万〜50万円、預託金まで含めると100万円前後になることも珍しくありません。一方、契約を公正証書にする場合の手数料は、2025年10月の制度改正後、受任者への報酬を定めなければ6,500円で済みます(日本公証人連合会の案内、公証人手数料令にもとづく)。
死後事務委任契約で頼めること
死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後に必要になる手続きを、生きているうちに親族や友人、あるいは弁護士・司法書士などの専門家に依頼しておく契約です。
内閣官房と関係府省庁がまとめた「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(2024年6月公表)では、頼める事務の例として次のようなものが挙げられています。
- 葬儀・火葬・埋葬、法要などの葬送に関する事務
- 年金・医療保険・税金など行政機関への届出
- 賃貸住宅の解約・明け渡し
- 電気・ガス・水道など公共料金の解約
- 携帯電話の解約
賃貸住宅にひとり暮らしをしている方であれば、「部屋の解約は誰がする?」「電気やガスの解約は?」と順番に考えていくと、頼んでおきたい範囲がイメージしやすくなります。
死後事務委任契約はあくまで手続きを託すものであり、財産を誰にどう分けるかは決められません。財産の分け方を決めたい場合は、別途、遺言書を用意する必要があります。
費用の内訳と目安
費用は大きく分けて、「公正証書にする場合の手数料(公的に決まっている)」と、「専門家・事業者へのサービス料や預託金(公的な定価はない)」の2種類があります。
| 費用の項目 | 目安 |
|---|---|
| 公正証書の手数料(受任者への報酬を定めない場合) | 6,500円 |
| 契約書の正本・謄本の交付手数料 | 1枚につき300円 |
| 契約書作成費用(専門家への依頼) | 3万円〜30万円程度 |
| 受任者への報酬(基本報酬) | 20万円〜50万円程度 |
| 預託金(葬儀費用などを事前に預ける場合) | 70万円〜150万円程度 |
公正証書の手数料は日本公証人連合会の案内による。そのほかの費用は複数の専門家事務所・メディアが示す相場を参考にした目安であり、公的な定価ではない。
公正証書の手数料は、2025年10月に公証人手数料令が改正され、死後事務委任契約のように「亡くなった後に事務が行われる委任」専用の規定が新設されたことで決まったものです。受任者への報酬を契約で定めている場合は、報酬額の2倍を目安に手数料が計算される仕組みになっています。
一方、専門家への報酬や預託金には全国一律の基準がありません。同じような内容でも依頼先によって数十万円単位の差が出ることがあるため、契約前に複数の事務所から見積もりを取り、「何にいくらかかるのか」の内訳を必ず確認することが大切です。特に預託金は、まとまった金額を先に預ける仕組みのため、事業者自身のお金と分けて管理されているか、定期的に使用状況の報告を受けられるかを確認しておくと安心です。
遺言・成年後見制度との違い
似たような制度が多く、混同しやすいところです。時系列で整理すると分かりやすくなります。
死後事務委任契約が受け持つのは「亡くなった後の手続き」です。これに対して、遺言書は「亡くなった後の財産の分け方」を決めるもの、成年後見制度は「生きている間に判断能力が低下したときの財産管理」を支える制度です。目的に応じて、これらを組み合わせて準備することになります。
契約前に確認しておきたいこと
前述のガイドラインでは、契約書に「委任者が亡くなっても契約は終了せず、相続人が権利義務を引き継ぐ」旨を明記しておくことが望ましいとされています。民法では、委任契約は本人の死亡によって終了するのが原則だからです(民法653条1号)。この一文がないと、いざというときに契約の効力が争われるおそれがあります。
また、疎遠であっても親族が「自分たちで葬儀を行うつもりだった」というすれ違いが起きることもあります。契約する範囲について、あらかじめ推定相続人に説明し、了解を得ておくことも勧められています。
賃貸の入居条件にするのは難しい?
賃貸住宅を管理する立場からすると、「単身の高齢者に入居してもらうときは、死後事務委任契約を条件にできないか」と考える方もいるでしょう。結論から言うと、対象を絞れば現実的ですが、「全員一律で義務化」するのは法的リスクがあります。
東京弁護士会の解説によると、もともと保証人がついているなど、リスクが小さい入居者にまで一律に死後事務委任契約を求めると、「民法90条(公序良俗)や消費者契約法10条に違反して無効となる可能性がある」とされています。「必要な人に案内する」のは問題なくても、「全入居希望者に一律で義務付ける」のは、契約自体が無効と判断されるおそれがあります。
もう一つ注意したいのが、受任者になれる人の範囲です。物件のオーナー自身は、入居者(の相続人)と利害が対立する立場にあるため、原則として受任者にはなれません。管理会社が受任者になる場合も、オーナーの利益ではなく、入居者や相続人の利益のために誠実に事務を行う必要があるとされています。
実務では、重い死後事務委任契約をいきなり全員に求めるより、保証人のいない単身高齢者に対象を絞って、費用負担の軽い仕組みを案内するのが現実的です。国土交通省・法務省が2021年に策定した「残置物の処理等に関するモデル契約条項」がその代表例です。管理会社がこの仕組みを実際にどう運用し、預託金なしで費用を賄っているかは「入居者の孤独死が起きたら、家主がまず確認すべき3つのこと」で詳しく解説しています。また、孤独死が起きた場合の原状回復費用の最新相場は「孤独死の原状回復費、1件平均61万円に上昇――大阪の家主が「高齢者お断り」をやめるためにできること」でご確認いただけます。
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ご自身やご家族の死後事務委任契約についてのご相談はもちろん、親族の相続に伴う空き家・老朽物件の管理・活用でお悩みの方も、株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。
株式会社不動産スペース 06-6195-8209
よくある質問
Q. 死後事務委任契約は必ず公正証書にする必要がありますか?
A. 必須ではありませんが、契約内容を明確にし、後のトラブルを防ぐために公正証書で作成するケースが一般的です。
Q. 死後事務委任契約があれば、遺言書は不要ですか?
A. いいえ。死後事務委任契約は手続きを託すものであり、財産の分け方は決められません。財産を分けたい場合は別途、遺言書が必要です。
Q. 費用を安く抑える方法はありますか?
A. 預託金が不要な「精算型」を選ぶ、複数の事務所から見積もりを取って比較するなどの方法があります。
Q. 管理会社は入居者全員に死後事務委任契約を義務付けられますか?
A. 全員一律の義務付けは、リスクの小さい入居者に対しては無効と判断されるおそれがあります。保証人のいない単身高齢者など、対象を絞って案内するのが現実的です。
