
管理会社49.2%が断る 単身高齢者を受け入れる3手順
結論から申し上げます。単身の高齢者を「孤独死が怖いから」という理由で断り続けると、これから先、空室が埋まらなくなります。2026年10月2日、国土交通省は家主の不安を減らすための取り組みを25件選んだと発表しました(国土交通省報道発表、2026年10月2日)。「もし部屋で亡くなられたら、事故物件になるんじゃないか。正直、それがこわい」——そう感じている家主さんは多いのではないでしょうか。その不安は、いまは制度と民間サービスでかなり小さくできます。
何が発表されたのか
国土交通省が公募していた「みんなが安心して住まいを提供できる環境整備モデル事業(多主体連携型)」で、46件の応募のうち25件が採択されました(国土交通省報道発表、2026年10月2日)。公募期間は2026年6月15日から7月13日まででした。
今回のモデル事業で支援される取り組み
- 居住支援法人・家賃債務保証会社・保険会社・家主が手を組む
- 見守り付きの賃貸住宅を供給する
- 国のねらいは、はっきりと「家主の不安を軽減すること」と書かれている
つまりこれは、入居を断られる側の支援策というだけでなく、貸す側の損を減らすための制度でもあります。
管理会社の本音は、数字に出ています
アットホーム株式会社が全国の賃貸住宅管理会社632社に聞いた調査(2026年2月実施、2026年6月18日発表)では、次のような結果が出ています。
| 管理会社への質問 | 回答の割合 |
|---|---|
| 直近1年で、高齢を理由に入居を断ったことがある | 49.2% |
| 単身高齢者の入居で最も課題だと感じるのは「孤独死」 | 84.0% |
| 「見守りサービス」の存在を知っている | 90.1% |
| その見守りサービスを実際に物件へ導入している | 19.5% |
| 条件が合えば導入したい | 49.1% |
(いずれもアットホーム調べ)
注目していただきたいのは、下の2行です。9割が知っているのに、入れているのは2割。けれど「条件が合えば入れたい」が約半数います。言いかえると、オーナーのほうから「うちは見守りを入れたい」と言えば動く余地が大きいということです。
断り続けると、賃料収入のほうが先に痛みます
家主にとって一番大事なのは、毎月の賃料が途切れずに入ってくることです。ここで冷静に見ていただきたいのは、入居者の層を狭めるほど、空室の期間が長くなるという単純な事実です。
同じアットホームの調査では、60歳以上で子どもと同居していない入居者288人のうち、48.6%が「住み替えたくない」と答えています。裏を返せば、いったん入居していただければ長く住んでいただける可能性が高い層でもあるということです。退去と募集を繰り返すたびに原状回復費と広告料がかかることを思えば、この点は軽くありません。
松原市「家賃補助」で転入超過4年、大阪家主の空室対策でもお伝えしたとおり、空室対策は「家賃を下げる」以外の手を持っているかどうかで差がつきます。入居者層を広げることも、その一手です。
家主の不安を小さくする3つの手順
残置物の契約条項を入れる
見守りと家賃保証を手配する
地域の居住支援法人に相談する
①残置物の処理についての取り決めを、契約書に入れる
入居者が亡くなると、賃貸借契約を解約する権利と、部屋に残った家財(これを「残置物」といいます)の所有権は、相続人に移ります。相続人が見つからないと、オーナーは部屋を片づけることも、次の募集を始めることもできません。これが「貸したくない」の最大の原因です。
ここに手当てがあります。国土交通省と法務省は2021年6月、「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を公表しました。60歳以上の単身の方が入居するときに使うことを想定したひな形で、中身は大きく2つです。
- ☐ 亡くなった後に賃貸借契約を解約する代理権を、あらかじめ受任者に渡しておく
- ☐ 残った家財を廃棄する、または指定先へ送る事務を、あらかじめ委任しておく
難しそうに見えますが、ひな形は公開されています。管理会社に「このモデル契約条項を使えますか」と聞くだけで話が進みます。
②見守りサービスと家賃債務保証をセットで手配する
2025年10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法で、2つの仕組みができました。
- 居住サポート住宅……安否確認や見守りを行い、体調が崩れたときに福祉サービスにつなぐ住宅として、認定を受ける制度です。
- 認定家賃債務保証業者……家賃の滞納を肩代わりしてくれる保証会社のうち、国土交通大臣が認定したものを指します。
家賃の取りはぐれは保証会社に、安否の確認は見守りサービスに。不安を分けて外に預ける、という考え方です。
③大阪なら、まず居住支援法人を当たってみる
大阪府には206の居住支援法人があり、全国約1,100法人のうち最も多いとされています(福祉新聞Web、2025年10月31日時点)。大阪府の案内によれば、居住支援法人の業務には家賃債務保証、入居相談、見守りなどの生活支援、そして家主への情報提供や入居者が亡くなった後の契約解除・残置物処理まで含まれています(大阪府ホームページ)。
つまり、家主が一番こわいと感じる部分を、仕事として引き受けてくれる法人が大阪にはたくさんあるということです。「誰に相談すればいいか分からない」という段階でも、府のホームページから最新の法人一覧を見ることができます。
受け入れる前に確認したいチェックリスト
- ☐ 残置物の処理等に関するモデル契約条項を使えるか、管理会社に確認したか
- ☐ 家賃債務保証会社をどこにするか、保証の範囲(滞納・原状回復・残置物)を確認したか
- ☐ 見守りサービスの費用を、誰が負担するか決めたか
- ☐ 緊急時に連絡が取れる親族・支援者の連絡先が、契約書に書かれているか
- ☐ 室内の段差・浴室の手すりなど、最低限の安全対策ができているか
管理会社に任せている方こそ、ここを見てください
今回の国の発表は、形としては居住支援法人や保証会社に向けたニュースです。ただ、家主の皆様にとっても他人事ではありません。入居申込を断る判断は、実務では管理会社が先に行っていることが多いからです。
一度、管理会社にこう聞いてみてください。「うちの物件で、年齢を理由にお断りした申込は過去1年で何件ありましたか」。答えがすぐ出てくるか、根拠を説明できるかで、その会社がどこまでオーナーの収益を考えて動いているかが見えてきます。
なお、親御さんから物件を引き継いだばかりで、「そもそも誰が入居しているのかも把握できていない」という方もいらっしゃると思います。それは珍しいことではありません。一人で抱え込まず、地域の事情に詳しい不動産会社に早めにご相談ください。賃貸住宅管理業の登録更新2026、大阪オーナーの点検法で触れたとおり、管理会社がきちんと登録されているかを確かめるだけでも、見えてくることがあります。
管理会社選び・相続した物件のご相談はこちら
入居者の年齢層をどこまで広げるべきか、見守りサービスや家賃債務保証をどう組むか、管理会社との契約内容の確認や管理会社選び・見直しでお悩みのオーナー様はもちろん、ご実家や親族の物件を相続したものの何から手をつければよいか分からないという方も、株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。大阪の地域事情を踏まえてご相談に応じます。
TEL:06-6195-8209
よくある質問
Q. 部屋で亡くなられたら、やっぱり事故物件になってしまうんですか。
A. 国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(2021年公表)では、自然死や日常生活の中での不慮の死は、原則として告げなくてよいとされています。一方、長期間放置されて特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合は、おおむね3年間は告げる必要があるとされています。つまり見守りで早く気づける仕組みが、そのまま資産を守る対策になります。
Q. 見守りサービスの費用は、オーナーが払うのですか。
A. 物件側で導入する場合はオーナー負担、入居者が個別に契約する場合は入居者負担が一般的です。管理会社や居住支援法人によって組み方が異なるため、見積りを取って比べてください。
Q. 残置物のモデル契約条項は、誰に頼めば作ってもらえますか。
A. 国土交通省と法務省がひな形を公表しているので、管理会社や仲介会社に相談すれば対応できる場合が多いです。受任者を誰にするかがポイントになるため、居住支援法人に相談するのも有効です。
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