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賃貸の修繕費は月いくら?国が長期修繕計画を見直し

不動産管理

四谷 義仁

筆者 四谷 義仁

不動産キャリア20年

飲食店専門の不動産会社「株式会社不動産スペース」代表。不動産キャリア20年。大阪・京都・兵庫エリアを中心に、店舗仲介・管理・閉店サポートから収益物件の売買まで手がける。これまで数多くのカフェ・居酒屋・ラーメン店などの開業支援を行い、実際の経営数値や現場課題をもとに"リアルな店舗経営の見える化"を発信中。現場の泥臭さも、数字のシビアさも知る「現実派不動産屋」

結論から申し上げます。2026年10月9日、国土交通省が「長期修繕計画作成ガイドラインの見直し等に関する検討会」の第1回会合を開きました(国土交通省報道発表、2026年10月7日)。分譲マンション向けの物差しを見直す会議ですが、賃貸のオーナーにとっては「修繕費を月いくら積んでおけばいいのか」を考える、ほぼ唯一の公的な手がかりがここにあります。「お金を貯めていないわけじゃない。でも、いくら貯めれば足りるのか誰も教えてくれない」——そう感じている家主さんは多いのではないでしょうか。

何が始まったのか

  • 発表日:2026年10月7日(国土交通省報道発表)
  • 会議の名称:長期修繕計画作成ガイドラインの見直し等に関する検討会
  • 第1回の開催:2026年10月9日(金)15時〜17時、中央合同庁舎第2号館
  • きっかけ:2026年7月に「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」が改正されたこと

「長期修繕計画」とは、建物のどこを・いつ・いくらで直すのかを、30年ほど先まで書き出した修繕の時間割です。国はこの時間割の作り方の見本(標準様式とガイドライン)を公開しており、それを今回あらためて見直すことになりました。

賃貸には「積立金」という制度がありません

分譲マンションには修繕積立金があります。住んでいる人から毎月強制的に集まるので、放っておいてもお金は貯まっていきます。

一棟の賃貸はここが決定的に違います。家賃はいったん全額オーナーの口座に入ります。つまり、自分で意識して分けておかないと、修繕費は1円も貯まりません。そして10年後、15年後に、外壁と屋上防水と給湯器が一度に来ます。

では月いくらでしょうか。国が示している目安が一つだけあります。

建物の規模 平均値 事例の3分の2が入る幅
20階未満・延床5,000㎡未満 335円 235〜430円
20階未満・延床5,000〜10,000㎡未満 252円 170〜320円
20階未満・延床10,000〜20,000㎡未満 271円 200〜330円
20階未満・延床20,000㎡以上 255円 190〜325円
20階以上 338円 240〜410円

※部屋の面積(専有床面積)1㎡あたりの月額。機械式駐車場の分は除きます。国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)より。

これは分譲マンションの数字です。賃貸にそのまま当てはめるものではありません。ただ、小ぶりなアパート・マンションに近い「延床5,000㎡未満」が月335円/㎡ですから、お部屋の面積の合計が500㎡の物件なら、月16万7,500円。年に約200万円という計算になります。「そんなに貯めていない」と思われたなら、その差額が将来の不足額になりかねません。

国の構えは「30年先まで、大きな工事2回分」

国のマンション管理計画認定制度では、長期修繕計画について次の点が認定の基準になっています(国土交通省)。

  • 計画期間が30年以上で、残りの期間に大規模修繕工事が2回以上含まれていること
  • 計画期間全体の修繕積立金の平均額が、著しく低額でないこと

かみ砕くと「15年に1回くらいの大きな工事を、2回分まとめて30年先まで見ておきなさい」ということです。この考え方は、賃貸でもそのまま使えます。なお、この認定基準は2026年7月の制度改正を受けて見直され、2027年4月1日以降の申請分から新しい基準が適用されます(国土交通省)。

国は賃貸オーナー向けの冊子も用意しています

意外に知られていませんが、国土交通省は賃貸住宅のオーナー向けに「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」という冊子を公開しています。屋根・外壁・階段や廊下・給排水管といった建物の部位から、給湯器や浴室などの室内設備まで、点検と修繕の時期、費用の見通しの立て方が載っています。築年数や構造を答えていくと部位ごとの状況が分かる「賃貸住宅の修繕・点検時期のセルフチェックシート」も、同じく公開されています。

そしてもう一つ。国は管理会社向けにも「賃貸住宅管理業者向け計画修繕ガイドブック」を作っています。その冊子には、オーナーへ適切な計画修繕を提案することを支援するために整理したものだと書かれています(国土交通省住宅局)。

今回の検討会も、ニュースとしては管理業界向けの話です。ですがオーナーの皆様にとっても他人事ではありません。ご自分の管理会社から、10年先・20年先の修繕の見通しについて説明を受けたことがあるか、一度思い返してみてください。国が「オーナーに提案するのは管理会社の役割」と位置づけている仕事ですから、聞いても遠慮する必要はまったくありません。

明日からできる3ステップ

①
計画書があるか確認
→
②
部位ごとの前回工事年を並べる
→
③
月いくら分けるか決める

やることは、この順番だけです。①で「ありません」と言われたら、それが出発点です。②は管理会社に聞くより、ご自分の手元の工事請求書を古い順に並べるほうが早いことがあります。③は専用の口座を作ってしまうのが確実です。

  • ☐ 管理会社に「この物件の長期修繕計画はありますか」と聞いた
  • ☐ 屋根・外壁・屋上防水の、前回の工事年を控えてある
  • ☐ 給湯器とエアコンの設置年を、部屋ごとに把握している
  • ☐ 給排水管の更新時期を、一度でも見積もってもらった
  • ☐ 修繕用の口座を、家賃の入金口座と分けてある
  • ☐ 大阪府・大阪市の改修補助金など、使えるものを調べた

大阪では断熱改修などに対する補助があり、修繕の計画に組み込める場合があります。以前書いた大阪家主向け「みらいエコ住宅2026」断熱改修最大100万円も合わせてご覧ください。補助の要件や締切は年度ごとに変わりますので、最新情報は必ずご確認ください。

また、設備の更新時期については「エアコン2027年問題」とは?賃貸オーナーの設備更新術で詳しく書いています。

相続でご実家のアパートを急に引き継いだ方の場合、そもそも計画書がどこにあるのか、前回いつ塗り替えたのかも分からない、ということは珍しくありません。何から手をつければよいか分からないのは当然です。一人で抱え込まず、地域の事情に詳しい不動産会社に早めに相談していただくほうが、結局は早く片付きます。

修繕計画・管理会社選びのご相談はこちら

長期修繕計画が手元にない、管理会社から修繕の説明を受けたことがない、というオーナー様はもちろん、ご実家や親族のアパートを相続したものの何から手をつければよいか分からないという方も、株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。大阪の建物事情を踏まえて、修繕の優先順位からご一緒に整理いたします。

TEL:06-6195-8209

お問い合わせフォームはこちら

よくある質問

Q. 修繕のお金は、月いくら貯めれば足りますか?
A. 分譲マンションの目安は部屋の面積1㎡あたり月335円(延床5,000㎡未満)です。賃貸はこれを出発点に、建物診断の結果で調整します。

Q. 正直、外壁を見ても素人には分かりません。何か分かるものですか?
A. 手で触って白い粉が付く、ひび割れがある、鉄部にさびが出ている、の3点は専門知識がなくても確認できます。

Q. 管理会社が長期修繕計画を作ってくれません。
A. 国は計画修繕の提案を管理会社の役割と位置づけています。まず依頼し、応じない場合は見直しの検討材料になります。

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