
食料品消費税「1%」で飲食店の原価は本当に安くなる?外食は最大7%割高にの落とし穴
「原価が7%安くなる」は本当か―仕入税額控除のワナ
2027年4月からの食料品消費税「1%」引き下げ、実は多くの飲食店にとって仕入れコストが7%分安くなるとは限りません。一方で、外食(お店で座って食べること)は、家で食べる・持ち帰るのに比べて、価格差の面で最大7%程度割高に感じられるようになる可能性があります(帝国データバンクの試算方法をもとに編集部で計算)。「減税なのに、なぜ?」という仕組みを整理します。
消費税を国に納めている飲食店の多くは、「お客様から預かった消費税」から「仕入れの際に自分が払った消費税」を差し引いた金額(仕入税額控除後の金額)を納税しています。ここで、仕入れの税率が8%から1%に下がると、差し引ける金額そのものが小さくなります。お客様から預かる分(外食は10%のまま)は変わらないため、差し引きで国に納める消費税の実額はむしろ増える構造になります。つまり「原価が7%安くなる」というのは目に見える仕入れ値の話であり、決算上の実質的な負担で見ると、必ずしもそのまま利益に残るわけではありません(飲食店向け業務システム会社ASPITの分析)。
売上高をもとに一定の割合で仕入税額を計算する「簡易課税」(実際の領収書を集計せず、業種ごとに決められた「みなし仕入率」で機械的に計算する簡便な仕組み)を選んでいる飲食店の場合は、事情が異なります。具体的な数字で比べてみます。
例:月商100万円(すべて外食、10%)、食材原価35万円(すべて軽減税率対象)の場合
| 課税方式 | 納税額の計算 | 消費税の納税額 |
|---|---|---|
| 原則課税(引き下げ前・仕入8%) | 売上税10万円−仕入税2万8,000円 | 7万2,000円 |
| 原則課税(引き下げ後・仕入1%) | 売上税10万円−仕入税3,500円 | 9万6,500円 |
| 簡易課税(みなし仕入率60%) | 売上税10万円×(1−60%) | 4万円(税率が変わっても一定) |
原則課税では、仕入の消費税率が8%から1%に下がると、差し引ける金額が2万8,000円から3,500円に減るため、納税額は7万2,000円から9万6,500円へ、2万4,500円増える計算になります。これは、仕入れ時に浮いた金額(35万円×7%=2万4,500円)が、そのまま納税額の増加分として跳ね返ってくるためです。
一方、飲食店業(第4種事業、みなし仕入率60%)で簡易課税を選んでいる場合、納税額は売上にかかる消費税だけで決まり、実際の仕入がいくらか、税率が何%かは計算に関係しません。この例では常に4万円で、仕入税率が8%でも1%でも変わりません。
なお、この例では食材の原価率が35%と、みなし仕入率の60%より低いため簡易課税の方が納税額が少なくなっていますが、これは家賃や光熱費など食材以外の課税仕入れを考慮していない簡易的な試算です。実際にどちらの課税方式が有利かは、店舗ごとの費用構成によって異なるため、顧問税理士に確認することをおすすめします。
外食は「相対的に」最大7%割高に
帝国データバンクの分析によると、外食(10%)はそのままで、食料品・テイクアウトの税率だけが下がると、外食は家で食べる・持ち帰ることに比べて相対的に割高になります。実際に決まった「1%」の税率で計算すると、税抜1,000円の商品の場合、外食の相対価格は以前より約7%割高になる計算です(帝国データバンクの試算方法をもとに編集部で計算)。
業態によって、客数・客単価への影響の出方は異なると分析されています。
| 業態 | 影響の傾向 |
|---|---|
| ファストフード・ランチ利用中心の店 | 日常使いほど内食・持ち帰りに置き換わりやすく、客数が減りやすい |
| 居酒屋・接待利用の店 | 「人と会う」目的は価格だけで代わりが効きにくく、影響は比較的小さい |
| 記念日利用の高級店 | 「ご褒美」需要としての性格が強く、影響は限定的になりやすい |
| カフェ | 飲食そのものは代替されやすいが、「場所・時間」の価値を訴求できれば影響は緩和されやすい |
| 持ち帰り・お弁当 | 税率次第で中食が有利になり、需要が押し上げられやすい |
(帝国データバンク「食料品の消費税率引き下げが外食産業に与える影響整理」をもとに編集部作成)
コロナ時のテイクアウトブームは再来するか
コロナ禍で増えたテイクアウト専門店の多くは、その後の外食再開とともに姿を消しました。ただ今回は、税率という制度上の理由でテイクアウトが優位になるため、再びテイクアウト強化に動く飲食店が出てきています。大阪でお弁当店を展開する企業を取材した関西テレビの報道でも、対策としてテイクアウト商品の拡充を検討する動きが紹介されています(関西テレビ取材)。ただし、コロナ時と違って「2年間の時限措置」であるため、店舗設計や設備投資をどこまでテイクアウト仕様に振り切るかは、慎重な判断が必要になりそうです。
Uber Eatsなど宅配の消費税はどうなるか
出前やUber Eatsなどの宅配は、料理代金の部分は「飲食料品の譲渡」として軽減税率の対象になるため、今回の引き下げで1%になる見通しです。一方、配送手数料やサービス料の部分は「配送というサービス」への対価とみなされ、標準税率10%のまま変わりません。同じ注文でも、内訳によって税率が分かれる点には注意が必要です。
飲食店が今からできること
政府も外食産業への影響は認識しており、資金繰り等の支援策を検討するとしています(首相官邸発表)。ただし支援の中身はまだ決まっていません。飲食店側でできる備えとしては、メニュー別の原価と利益を「数字」で見える化しておくこと、テイクアウト・宅配の比率や動線を点検しておくこと、そして「家では味わえない体験」を打ち出すメニューや接客に力を入れることが挙げられます。
経営の見直し・閉店のご相談はこちら
消費税の変更をきっかけに、経営の立て直しやテイクアウト対応の強化をご検討中の飲食店経営者様はもちろん、原状回復や居抜き売却など、閉店・退店をお考えの飲食店経営者様のご相談も承っております。テナント選びでご相談されたい家主様も、あわせて株式会社不動産スペースまでお気軽にお問い合わせください。
株式会社不動産スペース 電話:06-6195-8209
よくある質問
Q. 食料品の消費税が1%に下がれば、飲食店の利益は増えますか?
A. 仕入れ値は下がりますが、仕入税額控除の仕組みにより、国に納める消費税の実額は増える場合があり、必ずしも利益増には直結しません(原則課税の場合)。
Q. 簡易課税を選んでいる飲食店にも同じ影響がありますか?
A. 簡易課税は売上高をもとに一定の割合で税額を計算するため、仕入れの実際の税率変化の影響を受けにくくなります。
Q. Uber Eatsなどの宅配の消費税はどうなりますか?
A. 料理代金は軽減税率の対象で1%になる見通しですが、配送手数料やサービス料は標準税率10%のままです。
参考
- 食料品の消費税率引き下げが外食産業に与える影響整理|株式会社帝国データバンク
- 食料品消費税「1%」に落とし穴? 相次ぐ値上げに「減税のお得感は1カ月で相殺される」 外食産業への影響も懸念|関西テレビ放送 カンテレ
- 「飲食料品に係る消費税率の引下げ」及び「給付付き税額控除」についての会見|首相官邸
※本制度はまだ法律が成立しておらず、内容が変更される可能性があります。簡易課税・原則課税いずれを選んでいるかによって影響も異なるため、具体的な数字は顧問税理士にご確認ください。
