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LPガスの給湯器、壊れたら家主負担に!補助は7万円

不動産管理

四谷 義仁

筆者 四谷 義仁

不動産キャリア20年

飲食店専門の不動産会社「株式会社不動産スペース」代表。不動産キャリア20年。大阪・京都・兵庫エリアを中心に、店舗仲介・管理・閉店サポートから収益物件の売買まで手がける。これまで数多くのカフェ・居酒屋・ラーメン店などの開業支援を行い、実際の経営数値や現場課題をもとに"リアルな店舗経営の見える化"を発信中。現場の泥臭さも、数字のシビアさも知る「現実派不動産屋」

LPガスを使っている賃貸物件では、給湯器が壊れたときの修理代・交換代の出どころが変わりました。以前は「ガス会社が無料で付けてくれる」のが当たり前でしたが、2025年4月2日の省令改正でその商慣行が成り立たなくなり、設備の所有権がガス会社からオーナーへ順次移っています。「ある日いきなり十数万円の請求が来るのは困る」と感じている家主さんは多いのではないでしょうか。先に「誰のものか」を確かめておくことが、今できる一番の備えです。

何が変わったのか

経済産業省は、LPガス(プロパンガス)の料金や営業のやり方について、法律の下のルール(施行規則)を改正しました。柱は3つで、施行日が分かれています。

改正の柱 内容 施行日
過大な営業行為の制限 設備の無償貸与、無償の配管工事、紹介料の支払いを禁止 2024年7月2日
LPガス料金等の情報提供 入居希望者へ料金表などを事前に示す 2024年7月2日
三部料金制の徹底 設備費用をガス料金に紛れ込ませない。基本料金・従量料金・設備料金に分けて表示 2025年4月2日

(いずれも国土交通省「LPガスの商慣行是正に向けた制度見直しについて」および経済産業省の公表資料による)

いちばん影響が大きいのは3つ目です。新しい契約では、賃貸住宅向けのガス器具など「消費設備」の費用をガス料金に計上できなくなりました。すでに結んである契約についても、設備費用を分けて表示することが求められています(国土交通省の周知資料による)。

なぜ、給湯器がオーナーのものになるのか

これまでガス会社は、給湯器やエアコンなどを無料で取り付け、その費用を毎月のガス料金に少しずつ乗せて回収していました。この仕組みが「無償貸与」です。

ところが、2024年7月から無償貸与そのものが禁止され、2025年4月からは設備費用をガス料金に乗せることもできなくなりました。つまり、ガス会社が設備を持ち続ける理由がなくなったのです。その結果、ガス給湯器や灯油ストーブなどの所有権が、ガス会社から物件オーナーへ順に移されています(全国賃貸住宅新聞2026年10月16日付の報道による)。

所有者が変わると、何が変わるのか

壊れたときに払う人が変わります。ガス会社のものなら無料で直してもらえましたが、オーナーのものになれば、修理も交換もオーナーの負担です。

現場では、設備ごとに誰が持ち主なのか分からなくなる混乱も起きています。同じ報道では、ガス元売り会社と連携して所有権の移転情報をまとめ、入居者からの夜間の連絡まで代わりに受けるサービスが登場し、料金は1室あたり月1,000円(税別)、2026年9月7日時点で14社・300戸に導入されたと紹介されています。それだけ、持ち主の把握が手間になっているということです。

「毎月のガス代から回収する」仕組みは、こうして表に出てきました

この話は、2025年に急に始まったわけではありません。新築で物件を建てるとき、ガス会社が配管やガス設備の工事費を負担し(施工協力)、その費用を入居者が毎月払うガス代に乗せて、長い年月をかけて回収する。これが「無償配管」と呼ばれてきた仕組みです。家主からすれば、建てるときの工事費が安くなる、ありがたい話でした。

ただ、払っているのは入居者です。自分のガス代に建物の設備費がいくら含まれているのか、入居者には分かりませんでした。そこで国は、段階を踏んでこれを表に出してきました。

①2017年6月1日
払う人に中身を見せる
→
②2024年7月2日
無償貸与そのものを禁止
→
③2025年4月2日
料金から外に出す

①開示の義務化。 2017年6月1日施行の通達改正で、賃貸型集合住宅などでガス会社が自己負担で設置した設備の費用をガス料金に含めて請求する場合、入居者に渡す書面(液石法第14条書面)に、どんな設備の費用か、月額でおよそいくらかを記載することが明確化されました(資源エネルギー庁2017年2月22日公表資料および同庁のQ&Aによる)。払う人に中身を見せるルールは、このときに入っています。

②無償貸与の禁止。 2024年7月2日施行で、設備の無償貸与や無償の配管工事そのものが禁止されました。

③料金からの切り離し。 2025年4月2日施行で、料金を基本料金・従量料金・設備料金の3つに分けて通知することが義務になり、賃貸住宅向けのガス器具などの費用は、新しい契約では計上そのものができなくなりました。

なお、全国LPガス協会の資料では、かつての無償配管の慣行はなくなり、現在は事業者が費用を負担して設置したうえで、書面に基づいて利用料金や中途解約時の買取費用を受け取る「貸付配管」の形になっていると説明されています。

料金の水準も変わりました

料金が見えるようになると、比べられるようになります。以前のLPガスは、都市ガスに比べて2倍以上、物件によってはそれ以上に高いという印象を持たれてきました。設備費が料金に紛れ込んでいた分も、そこに含まれていたわけです。最近は入居希望者も料金表を見比べられるようになり、都市ガスに近い水準を示す事業者も出てきています。参考として、全国平均のLPガス小売価格は10立方メートル使用時で9,856円です(石油情報センター調べ/2026年8月時点、基本料金・消費税込み)。

家主にとっての意味はひとつです

これまで入居者のガス代に紛れていた設備費が、表に出て、オーナーの負担として戻ってきました。給湯器の所有権が移るという話は、その流れの最後の仕上げにあたります。

大阪ではどうか

大阪府は都市ガスの普及率が高い地域で、LPガスの物件は多くありません。全国で見ると、LPガスを使う世帯が約36%、都市ガスが約44%です(経済産業省の審議会資料/2023年版LPガス資料年報より)。

ただし、府内でもガス管が引かれていない郊外の一戸建て賃貸や、古い木造アパートではLPガスが使われています。「自分の物件は都市ガスだから関係ない」と思っていた物件が、実はLPガスだったという取り違えは珍しくありません。複数棟をお持ちの方は、棟ごとに確認してください。設備の更新という点では、「エアコン2027年問題」とは?賃貸オーナーの設備更新術でお伝えしたエアコンの話と、考え方は同じです。

今週、確かめておきたい4つのこと

  • ☐ その棟はLPガスか都市ガスか(検針票かガス会社の名前で分かります)
  • ☐ 給湯器の所有者はガス会社か、自分か(ガス会社に書面で聞くのが確実です)
  • ☐ 所有権の移転について、ガス会社から通知や書面が届いていないか
  • ☐ 入居者への料金表の提示が、管理会社経由できちんと行われているか

今回の改正は、もともとガス会社と不動産業者に向けたルールです。それでもオーナーにとっては他人事ではありません。ご自分の管理会社が、こうした所有者の把握や入居者への説明をきちんと進めてくれているか、一度確認してみるとよいでしょう。

交換するなら、国の補助が出ます

古い給湯器をそのまま使い続けるより、計画的に省エネ型へ替えたほうが結果的に安く済むことがあります。国の「賃貸集合給湯省エネ2026事業」を使うと、1台あたりの補助額は次のとおりです。

①
対象かを確認
→
②
登録事業者と契約
→
③
工事(着工)
→
④
完了後に事業者が申請
交換後の給湯器 補助額(1台あたり)
追い焚き機能なし 5万円
追い焚き機能あり 7万円
(加算)共用廊下を横断するドレン排水ガイド敷設工事 3万円

(経済産業省「賃貸集合給湯省エネ2026事業」公式サイトより。1住戸1台まで)

対象は1棟に2戸以上ある既存の賃貸集合住宅で、従来型から小型の省エネ型(エコジョーズ・エコフィールなど)への交換が条件です。号数を下げる交換や、オーナーが自分で買った機器は対象外です。申請は登録事業者が行います。着工の期限は2025年11月28日から予算上限に達するまで(遅くとも2026年12月31日まで)とされており、予算の消化状況で早く締め切られる可能性があります。最新の受付状況は必ず公式サイトでご確認ください。 断熱の補助と組み合わせる手もあります(大阪家主向け「みらいエコ住宅2026」断熱改修最大100万円)。

なぜ、先に手を打つ価値があるのか

家主にとって一番こわいのは、修理代そのものではありません。お湯が出ない状態が続くことです。真冬に給湯器が止まれば、入居者は当日に連絡してきます。対応が遅れれば、退去につながります。家賃が止まる1か月の損は、給湯器1台の交換費用に近い金額になることもあります。

だからこそ、壊れてから慌てるのではなく、「誰のものか」「いつ替えるか」を先に決めておくことが、賃料収入を途切れさせない備えになります。修繕の計画そのものを見直す動きも国で進んでいます(賃貸の修繕費は月いくら?国が長期修繕計画を見直し)。

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よくある質問

Q. 給湯器が壊れたとき、結局どっちが払うんですか?
A. 所有者が払います。ガス会社の所有のままなら従来どおりガス会社、オーナーに移っていればオーナー負担です。まずガス会社に所有者を書面で確認してください。

Q. ガス会社から所有権移転の書類が届きました。断れますか?
A. 内容次第ですが、無償貸与が禁止されたため元の形には戻せません。移転の条件や今後の料金、故障時の対応を書面で確かめてから判断してください。

Q. 入居者のガス代に設備費が乗っているか、どうやったら分かりますか?
A. 入居者に交付される液石法第14条書面に、どんな設備の費用か、月額の概算額が記載されます。2025年4月以降は設備料金として分けて表示されます。

Q. 都市ガスの物件には関係ありませんか?
A. 今回の改正はLPガス(プロパンガス)向けのルールです。ただし棟ごとにガス種が違う場合があるため、思い込みで判断せず検針票で確認するのが安全です。

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