
物価上昇率1.7%でも家賃は連動しない――2026年6月CPIと「家賃の粘着性」から見る投資の実像
物価は1.7%上昇、でも家賃は自動的には上がらない
総務省が2026年7月24日に公表した2026年6月分の消費者物価指数によると、生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)は前年同月比+1.6%、食料品やエネルギーを含む総合指数は+1.7%上昇しました(総務省統計局調べ)。「物価が上がるなら不動産はインフレに強い」と言われることがありますが、家賃は物価と同じペースで上がるとは限りません。この違いを理解しておくことが、サラリーマン投資家にとって大切です。
消費者物価指数(CPI)とは何か
消費者物価指数(CPI)とは、私たちが日常買っている食品や日用品、電気代などの値段が、全体としてどれくらい変わったかを示す指標です。総務省が毎月発表しており、2026年6月分は2020年を100とした場合の総合指数が113.6となり、1年前と比べて1.7%上昇しました。生鮮食品を除いた「コアCPI」も1.6%の上昇と、5か月連続で2%を下回る水準が続いています(総務省統計局調べ)。
図1:2026年6月 消費者物価指数(前年同月比)(出所:総務省統計局)
なぜ「家賃」は物価ほど上がらないのか
物価が上がっているからといって、賃貸マンションやアパートの家賃がすぐに同じだけ上がるわけではありません。賃貸借契約は一度結ぶと数年間そのままの家賃で続くことが多く、近隣の相場を見て見直すタイミングは物価の動きよりも遅れがちです。「物価が上がれば家賃収入も自動的に増える」と考えるのではなく、家賃はオーナー自身が意識して見直さない限り据え置かれたままになりやすい、という点を押さえておく必要があります。
デフレの時代も、家賃は大きく下がらなかった
実は、家賃が物価ほど動かないのは、上がる場面だけの話ではありません。日本では、物価全体が長期間下落・低迷した「デフレの時代」にも、家賃(民営家賃)は大きく値下がりすることはありませんでした。財務省の分析によると、消費者物価指数における民営家賃は、2023年に実に25年ぶりにプラスに転じるまで、ほぼ横ばいの状態が続いていたとされています(財務省「経済トレンド124 我が国における家賃の動向」2024年10月、日本経済新聞2024年4月9日付調べ)。
これは、契約を更新するたびに家賃を「上げにくい」商慣習が、同時に「下げにくい」商慣習でもあったためです。住宅の供給が世帯数を上回る緩やかな需給構造や、借主を保護する借地借家法(借りている人の立場を守るための法律です)、平均4年前後という入居期間の長さなどが重なり、日本の家賃は上にも下にも動きにくい状態が長く続いてきました。
図2:民営家賃(CPI)の推移イメージ(出所:財務省「経済トレンド124」、総務省統計局)
家賃は「振れ幅の小さい収入」
家賃収入は、好景気で物価が上がっても急に増えるわけではない代わりに、不景気で物価が下がっても急に減るわけでもない、という性格を持っています。株式のように値動きの大きい資産と比べると、契約が続いている間は収入が安定しやすい点は、不動産投資の魅力の一つといえるでしょう。ただし、これはあくまで家賃の「水準」が動きにくいという話です。空室が続いたり、家賃を滞納されたりすれば、収入そのものが途切れるリスクは別に存在します。安定性を過信せず、入居率や滞納対策とあわせて考えることが大切です。
初心者が陥りやすい失敗は「値上がり」だけに目を向けること
不動産投資が初めての方によくある失敗は、物価が上がる局面では何でも値上がりすると楽観的に考えてしまい、借入コスト(金利)が同時に上昇していることを見落とすことです。金利から物価上昇率を差し引いた「実質的な負担」で考えると、金利の上昇スピードが物価の上昇スピードを上回れば、借金の負担はむしろ重くなります。
- 家賃収入でローンを返す仕組みである以上、手元に残るお金(キャッシュフロー=家賃収入から経費とローン返済を差し引いて残るお金のことです)がどう変化するかを確認することが欠かせません。
- 物価と金利、両方の動きを合わせてチェックする習慣をつけましょう。
大阪は特に「実質的な収支」の確認が重要
大阪はマンションの賃料・価格の上昇率がともに主要都市の中でも高い水準にあるという調査結果もあります(日本不動産研究所調べ)。値上がり期待が強いエリアほど、物価上昇や金利上昇を織り込まずに「上がっているから大丈夫」と判断してしまいがちです。大阪で物件を検討する際は、家賃が今後どの程度見直せるか、借入金利が上がった場合に収支がどう変わるかを、具体的な数字でシミュレーションしておくことをおすすめします。
まとめ
| 指標 | 数値 | 対象期間 |
|---|---|---|
| 総合指数(生鮮食品・エネルギー含む) | 前年同月比+1.7% | 2026年6月分 |
| コアCPI(生鮮食品を除く総合指数) | 前年同月比+1.6% | 2026年6月分 |
| コアコアCPI(生鮮食品・エネルギーを除く総合指数) | 前年同月比+1.7% | 2026年6月分 |
| 民営家賃(CPI) | 2023年に25年ぶりのプラス転化まで、ほぼ横ばい | 過去約25年間 |
家賃は、物価が上がっても急に増えず、物価が下がっても急に減りにくい「振れ幅の小さい収入」です。値上がり期待だけに頼らず、家賃の見直しと借入コストの両方を具体的な数字で確認する視点が欠かせません。
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よくある質問
Q. 物価が上がれば家賃収入も自然に増えますか?
A. 自動的には増えません。賃貸借契約は据え置かれやすいため、オーナー自身が相場を見て家賃を見直す必要があります。
Q. 不動産投資は本当に安定した収入源と言えますか?
A. 家賃は上にも下にも動きにくい性質があり、契約が続く限り収入は安定しやすい面があります。ただし空室や滞納のリスクは別に存在するため、過信は禁物です。
Q. 物価上昇局面で不動産投資をする際に気をつけることは?
A. 値上がり期待だけで判断せず、借入金利の上昇による返済負担の変化もあわせてシミュレーションすることが大切です。
