
民泊の借主から解約通知|次は家具付きかマンスリーか
結論を先にお伝えします。民泊に貸していた部屋が返ってきたとき、次の選択肢は「家具付きの普通賃貸」「マンスリー」「家具を引き取って普通に貸す」の3つです。このうちマンスリーは、契約を1か月以上にするだけでは足りません。部屋の清掃と寝具を誰がやるかで、旅館業の許可が必要な側に戻ります(厚生労働省「旅館業法の適用判断について」)。「せっかく高い家賃で借りてもらっていたのに、また一から募集し直しか」——そう感じている家主さんに、今日は切り替えの順番をお伝えします。
なぜ、いま返ってくるのか
大阪市では、旅館業法の許可を取るときのルールが2026年10月30日から変わります。人が住んでいる部分がある建物での新規許可は原則としてRC造・SRC造に限られ、宿泊客がいる間は施設に従業員を常駐させることが求められます(大阪市、2026年10月2日公布)。特区民泊の新規受付も2026年5月29日で終わっています(大阪市報道発表)。入口が狭くなり、運営コストが上がる。撤退を決める事業者が出るのは、自然な流れです。くわしくは大阪市10月30日、住人のいる建物の旅館業許可はRC・SRC造をご覧ください。
3つの選択肢
| 選択肢 | 旅館業の許可 | 家主の手間 | 向いている物件 |
|---|---|---|---|
| 家具付きの普通賃貸 | 不要 | 中〜大(故障対応と最後の処分まで) | 短期の単身需要がある立地に限られる |
| マンスリー | 条件次第で必要 | 大(募集と精算の回数が多い) | 駅近・病院や大学の近く |
| 家具を処分して普通に貸す | 不要 | 小 | 多くの物件はこれが無難。長く住んでほしい部屋 |
マンスリーの落とし穴
旅館業に当たるかどうかは、①宿泊料を受け取っているか、②社会性があるか、③繰り返し行っているか、④その部屋が生活の本拠か、の4つで判断されます(厚生労働省)。問題は④です。
生活の本拠と考えられる例
使用期間が1か月以上で、使用者が自分の責任で部屋の清掃などを行う場合
生活の本拠でないと考えられる例
使用期間が1か月未満(ウィークリーマンションなど)/1か月以上であっても、部屋の清掃や寝具類の提供を施設の側が行う場合
つまり「清掃つき・リネン交換つき・2か月契約」は、期間が1か月以上でも旅館業の側に寄ります。しかも「宿泊料」は名前で決まりません。光熱水道費、室内清掃費、寝具のクリーニング代なども宿泊料とみなされます(厚生労働省)。許可を受けずに営業すれば罰則の対象です。マンスリーでいくなら、清掃と寝具は入居者の負担にするのが出発点になります。判断は個別の実態と自治体の運用によるため、所管の保健所に事前相談してください。
返ってきた瞬間、その部屋は「賃貸住宅」に戻ります
ここは見落とされがちな点です。民泊や旅館業に使われている間、その部屋は賃貸住宅管理業法でいう「賃貸住宅」から外れています。しかし、現に宿泊の予約や募集が行われていない状態になれば、その部屋は「賃貸住宅」に該当することになります(国土交通省「賃貸住宅管理業法 FAQ集」令和7年10月9日時点版)。
何が変わるか。次にどこかの会社へ一括で借り上げてもらう(サブリース)話が来たとき、相手には契約前の重要事項説明が義務づけられます。説明すべき項目は14あり、家賃の額とその変更、違約金、更新と解除などが並びます。そのなかに、こういう一項があります。
特定賃貸借契約が終了した場合における特定転貸事業者の権利義務の承継に関する事項(14項目のうち13番目)
やさしく言えば、契約が終わったとき、家具や備品、入居者を誰がどう引き継ぐのかを、契約前に書面で説明しなさい、という決まりです。今回まさに困っている「家具はどうするのか」「次の借主をどうするのか」は、本来ここで先に決まっているはずの話でした。民泊のサブリースでは、この保護が働いていなかった可能性があります。
なお「家賃保証」「空室保証」とうたう広告には、借地借家法第32条によって家賃が減額されることがある旨を隣接した箇所に明示する義務があります(国土交通省)。この一文がない資料を持ってくる会社は、そこで一度立ち止まってください。
家具は「使えるかどうか」で判断しないでください
借主が置いていく家具・家電は、原則として借主に撤去する義務があります(民法)。「置いていきます」と言われたら、それは無償で譲り受けるという話です。
ここは現場でいちばん判断を誤りやすいところなので、はっきり書きます。まだ使える家具家電でも、処分したほうが結果として得になることが多いです。 理由は3つあります。
- ① 部屋を決めるのは次の入居者です。一般の単身者は自分の家具を持ってきます。前の人の家具が残っていると、内見のときに部屋が狭く見え、生活感も残ります。家具付きを探しているのは、短期で住む方など一部に限られます。
- ② 所有権が移った後の費用は、全部家主持ちです。故障したときの修理も、入替えも、最後の処分費も家主の負担になります。エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機は家電リサイクル法の対象で、捨てるのにもお金がかかります。
- ③ 退去のたびに同じ判断が発生します。年式の古い家電ほど、次の退去のときには処分費だけが残ります。
宿泊事業のために揃えた家具が、賃貸の募集では一斉に行き場をなくす。これは2020年前後、宿泊の需要が止まったときにも起きました。このとき、まだ十分に使える家具家電が、まとめて処分されています。もらうかどうかは「いま使えるか」ではなく、「次に部屋を決めるときに邪魔にならないか」で考えてください。
そのうえで家具付きで貸すと決めたなら、「設備」として貸すのか「残置物」として貸すのかを契約書で分けてください。設備なら壊れたときに直す義務が家主にあります。残置物として「故障しても修理・交換はしない。不要なら入居者の負担で処分してよい」と取り決めておけば、負担はかなり軽くなります。
解約の連絡が来てからの順番
家具の帰属を
書面化
廃止届の
予定を確認
次の用途を
決める
原状と鍵の
引き渡し
募集開始
引き渡しの前に確かめること
- ☐ 置いていく家具・家電を、品目・台数・年式まで一覧にして、所有権を誰に移すのかを書面にする
- ☐ 旅館業をやめる届出を保健所に出す予定を、借主に確認する
- ☐ 消防設備や誘導灯など、宿泊用に付けた設備を残すのか撤去するのかを決める
- ☐ 鍵(スマートロック含む)の設定が借主の管理画面に残っていないかを確認する
- ☐ 保証金・敷金の精算と、原状回復の範囲をすり合わせる
家賃は、落ちないかもしれません
民泊の賃料が高かった分、普通賃貸に戻すと下がるように見えます。ただ、大阪市の家賃はいま上がっています。もっとも狭いシングルタイプで前年同期比8.4%の上昇でした(アットホーム・三井住友トラスト基礎研究所「マンション賃料インデックス」2026年9月24日公表)。広さ帯ごとの考え方は25㎡のワンルームは、まだ戦えますでまとめています。家具は、残せばそのまま武器になるとは限りません。先ほどの判断を済ませたうえで、設備のととのった空室として出すほうが、決まりは早いことが多いです。
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よくある質問
Q. マンスリーって、結局うちでもできるんですか。
A. 契約を1か月以上にしたうえで、清掃と寝具を入居者の負担にすれば、貸室業として扱われる方向になります。ただし判断は実態次第なので、保健所への事前相談をおすすめします。
Q. 置いていく家具をもらっておけば得ですよね。
A. まだ使えても、処分したほうが得になることが多いです。一般の単身者は自分の家具を持ってきますし、故障時の修理と最後の処分費は家主の負担になります。年式と台数を一覧にしてから決めてください。
Q. また別の民泊会社から借り上げの話が来ています。
A. 契約前の重要事項説明を書面で受けてください。特に、契約が終わったときに家具と入居者をどう引き継ぐかの条項を確認することをおすすめします。
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参考
- 改正後の大阪市旅館業法の施行等に関する条例が令和8年10月30日から施行されます|大阪市
- 特区民泊の新規受付終了について(報道発表)|大阪市
- 旅館業法について(適用判断・Q&A)|厚生労働省
- 賃貸住宅管理業法 FAQ集|国土交通省
- 賃貸住宅管理業法ポータルサイト|国土交通省
※旅館業に当たるかどうかの判断は、契約期間だけでなく清掃・寝具の提供を誰が行うかなど個別の実態によります。最新の取り扱いは、所管の保健所と大阪市の公式ページでご確認ください。
